核心解説
この問題は、
脱水症 (Dehydration) の中でも特に
高張性脱水 (Hypertonic Dehydration) の病態生理を理解しているかを問うています。血清ナトリウム値が
152mEq/L (高値) であることから、水分喪失に対してナトリウム喪失が相対的に少ない状態、すなわち
高ナトリウム血症 (Hypernatremia) を伴う脱水であることが診断の鍵です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 脱水症は、喪失する水分と電解質(主にナトリウム)のバランスによって3つに分類されます。
最重要! ①高張性脱水:水分喪失 > ナトリウム喪失 → 血清Na > 145mEq/L。②等張性脱水:水分喪失 = ナトリウム喪失 → 血清Na 正常(135-145mEq/L)。③低張性脱水:水分喪失 < ナトリウム喪失 → 血清Na < 135mEq/L。本症例はNa 152mEq/Lであるため、高張性脱水です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 高張性脱水では、細胞外液の浸透圧が上昇します。すると、浸透圧の高い細胞外へ、細胞内から水分が移動します(浸透圧の原理)。その結果、
細胞内液 (Intracellular Fluid, ICF) の減少が主体となります。細胞内脱水により、脳細胞が委縮し、口渇感や意識障害(重症例)が出現します。症例の口渇や皮膚乾燥もこの病態と合致します。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①番(ナトリウム喪失が水分喪失より多い)は、低張性脱水の説明です。この場合、血清Naは低下します。
混同注意! ③番(カリウム喪失が水分喪失より少ない)は、問題の本質である脱水の型分類とは直接関係ありません。血清K
3.2mEq/L (低値) は、利尿薬によるカリウム喪失を示唆する随伴所見です。
混同注意! ④番(水分とナトリウムが等しく喪失)は、等張性脱水の説明です。
混同注意! ⑤番(細胞外液の減少が主体)は、等張性脱水および低張性脱水で主体となる病態です。高張性脱水では、細胞外液量はある程度保たれるか、やや減少する程度で、主体となるのは細胞内液の減少です。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 脱水の3分類(高張性・等張性・低張性)と、それに伴う血清Na値の変化、そして臨床症状(口渇は高張性、浮腫は低張性でみられやすいなど)は、看護師国家試験で頻出の組み合わせです。また、原因となる状況(本例では暑熱環境と利尿薬)と合わせて覚えると、事例問題にも対応できます。
概念整理:
脱水症の3分類と血清Na値
| 分類 | 血清Na値 | 水分とNaの喪失関係 | 減少の主体となる体液区画 |
|---|
| 高張性脱水 | 145mEq/L以上 | 水分喪失 > Na喪失 | 細胞内液 |
| 等張性脱水 | 135-145mEq/L | 水分喪失 = Na喪失 | 細胞外液 |
| 低張性脱水 | 135mEq/L未満 | 水分喪失 < Na喪失 | 細胞外液 |
一目で比較!:
混同注意! 「脱水=細胞外液(血管内)が減る」というイメージを持ちがちですが、高張性脱水では細胞内液が主に減少します。口渇感が強いのも、細胞内脱水による視床下部の口渇中枢刺激が原因です。
看護過程ポイント:
アセスメント:血清Na値、尿量・尿比重、皮膚ツルゴール、口渇の有無、バイタルサイン(特に血圧)。
看護診断:
体液量不足 (Deficient Fluid Volume)。
計画・実施:経口摂取が可能であれば水分摂取を促す。重症の高張性脱水では、
急激なNa補正による脳浮腫に注意しながら、低張性輸液(5%ブドウ糖液など)を投与します。電解質(特にK)のモニタリングも必須です。
暗記のコツ: 「高Na血症 = 高張性脱水 = 細胞
内液が減る」と覚えましょう。Naが高い(外が濃い)ので、中(細胞内)の水が外に出ていくイメージです。
国試頻出ポイント: 脱水の3分類と輸液療法の選択は、必修問題および成人看護学で繰り返し出題されます。特に「高齢者では口渇感が鈍麻しているため、高張性脱水に陥りやすい」という点も合わせて覚えておきましょう。
出題パターン注意!: 単純な「高張性脱水の説明はどれか」という知識問題から、本例のように検査値(Na値)と症状を組み合わせた事例問題、さらには「輸液の選択(何を選ぶか)」へと発展します。