核心解説
この問題は、
高齢者の脱水症 (Dehydration in the Elderly) における診断的検査の優先順位を問うています。
最重要! 高齢者では、加齢に伴う生理的変化(筋肉量減少による血清クレアチニン (Creatinine) の低値傾向、腎機能予備能の低下)があるため、単純な血清電解質やCr値だけでは脱水の重症度を過小評価しがちです。病態生理の理解として、脱水により循環血液量が減少すると、腎血流が低下し(腎前性腎障害 (Pre-renal Azotemia))、
尿素窒素 (Blood Urea Nitrogen, BUN) の再吸収が促進されます。一方、クレアチニンは糸球体濾過に依存するため、BUNに比べて上昇が緩やかです。この差が
BUN/Cr比 (BUN/Creatinine Ratio) の上昇として現れ、高齢者脱水の早期発見と腎前性因子の評価に極めて有用です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 高齢者の脱水は、細胞外液減少による循環不全(低血圧、頻脈)を早期に引き起こします。腎前性腎障害の指標としてBUN/Cr比が20:1以上(通常10~15:1)となることが診断の鍵です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は①血中尿素窒素/クレアチニン比の上昇です。脱水により腎血流が低下すると、BUNは尿細管での再吸収が亢進するためCrよりも相対的に上昇し、比が高値を示します。これは腎前性因子を反映する鋭敏な指標です。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ②番:
混同注意! 血清アルブミン値は脱水時に一時的に濃縮されて上昇することがありますが、高齢者では低栄養による低アルブミン血症がベースにあることが多く、診断的価値は低いです。むしろ、脱水補正後に低値が判明することが多いです。
- ③番:血清クレアチニン値は脱水により上昇します(腎前性腎障害)。「低下」は誤りで、むしろ筋肉量が少ない高齢者の基準値が低いことを理解すべきです。
- ④番:血清カリウム値は脱水のタイプにより変動します(高張性脱水では正常~軽度高値、低張性脱水では低下)。脱水診断の特異的マーカーではありません。
- ⑤番:血清ナトリウム値は高張性脱水(高Na血症)では上昇しますが、低張性脱水(低Na血症)では低下します。この症例では発熱・食欲低下のみでNaの動向は不明であり、BUN/Cr比の方が脱水そのものの診断に特異的です。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 高齢者の脱水は、
混同注意! 「高張性脱水(水分喪失主体)」と「低張性脱水(電解質喪失主体)」を鑑別する必要があります。BUN/Cr比は両タイプに共通して上昇する腎前性因子の指標であり、まず脱水の存在を確認した上で、Na値でタイプ分類します。
概念整理: 高齢者脱水の病態:細胞外液減少 → 腎血流低下 → BUN再吸収亢進 → BUN/Cr比上昇(20以上)。これが腎前性腎障害のサインであり、脱水の早期診断に必須。
一目で比較!:
| 指標 | 脱水時の変化 | 高齢者の注意点 |
|---|
| BUN/Cr比 | 上昇(20以上) | 腎前性因子の特異的指標 |
| 血清Na | 高張性:上昇 / 低張性:低下 | タイプ分類に使用 |
| 血清Cr | 上昇 | 筋肉量減少で基準値低め。過小評価注意 |
| 血清Alb | 濃縮で一過性上昇 | 低栄養で低値ベース。診断には不適 |
看護過程ポイント: アセスメント:バイタルサイン(低血圧、頻脈、起立性低血圧)、皮膚ツルゴール低下、口腔粘膜乾燥、尿量減少(