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高齢者に特有な症候・疾患・障害と看護
問題

85歳の女性。施設入居中。本日、発熱と食欲低下を認めた。バイタルサインは体温38.2℃、脈拍98回/分、血圧98/62mmHg、呼吸数22回/分。皮膚のツルゴール低下と口腔粘膜の乾燥を認める。高齢者の脱水症の診断で最も参考になる検査所見はどれか。

解説
高齢者では脱水により腎前性腎障害をきたしやすく、血中尿素窒素(BUN)がクレアチニン(Cr)に比べてより上昇するため、BUN/Cr比が上昇する(通常10~15に対し20以上)。血清Naは高張性脱水では上昇するが、低張性脱水では低下するため、脱水の診断にはBUN/Cr比がより特異的である。
同じテーマの次の問題78歳の男性。認知症で介護施設に入所中。食事摂取量が減少し、下痢が続いている。意識レベルが低下し、呼びかけに反応が鈍くなった。高齢者の脱水症における意識障害の原因として最も適切なも…

詳細解説

核心解説 この問題は、高齢者の脱水症 (Dehydration in the Elderly) における診断的検査の優先順位を問うています。最重要! 高齢者では、加齢に伴う生理的変化(筋肉量減少による血清クレアチニン (Creatinine) の低値傾向、腎機能予備能の低下)があるため、単純な血清電解質やCr値だけでは脱水の重症度を過小評価しがちです。病態生理の理解として、脱水により循環血液量が減少すると、腎血流が低下し(腎前性腎障害 (Pre-renal Azotemia))、尿素窒素 (Blood Urea Nitrogen, BUN) の再吸収が促進されます。一方、クレアチニンは糸球体濾過に依存するため、BUNに比べて上昇が緩やかです。この差が BUN/Cr比 (BUN/Creatinine Ratio) の上昇として現れ、高齢者脱水の早期発見と腎前性因子の評価に極めて有用です。 1. 核心概念の分析 (Key Concept): 高齢者の脱水は、細胞外液減少による循環不全(低血圧、頻脈)を早期に引き起こします。腎前性腎障害の指標としてBUN/Cr比が20:1以上(通常10~15:1)となることが診断の鍵です。 2. 正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は①血中尿素窒素/クレアチニン比の上昇です。脱水により腎血流が低下すると、BUNは尿細管での再吸収が亢進するためCrよりも相対的に上昇し、比が高値を示します。これは腎前性因子を反映する鋭敏な指標です。 3. 誤答の分析 (Distractor Analysis): - ②番:混同注意! 血清アルブミン値は脱水時に一時的に濃縮されて上昇することがありますが、高齢者では低栄養による低アルブミン血症がベースにあることが多く、診断的価値は低いです。むしろ、脱水補正後に低値が判明することが多いです。 - ③番:血清クレアチニン値は脱水により上昇します(腎前性腎障害)。「低下」は誤りで、むしろ筋肉量が少ない高齢者の基準値が低いことを理解すべきです。 - ④番:血清カリウム値は脱水のタイプにより変動します(高張性脱水では正常~軽度高値、低張性脱水では低下)。脱水診断の特異的マーカーではありません。 - ⑤番:血清ナトリウム値は高張性脱水(高Na血症)では上昇しますが、低張性脱水(低Na血症)では低下します。この症例では発熱・食欲低下のみでNaの動向は不明であり、BUN/Cr比の方が脱水そのものの診断に特異的です。 4. 関連概念の整理 (Related Concepts): 高齢者の脱水は、混同注意! 「高張性脱水(水分喪失主体)」と「低張性脱水(電解質喪失主体)」を鑑別する必要があります。BUN/Cr比は両タイプに共通して上昇する腎前性因子の指標であり、まず脱水の存在を確認した上で、Na値でタイプ分類します。 概念整理: 高齢者脱水の病態:細胞外液減少 → 腎血流低下 → BUN再吸収亢進 → BUN/Cr比上昇(20以上)。これが腎前性腎障害のサインであり、脱水の早期診断に必須。 一目で比較!:
指標脱水時の変化高齢者の注意点
BUN/Cr比上昇(20以上)腎前性因子の特異的指標
血清Na高張性:上昇 / 低張性:低下タイプ分類に使用
血清Cr上昇筋肉量減少で基準値低め。過小評価注意
血清Alb濃縮で一過性上昇低栄養で低値ベース。診断には不適
看護過程ポイント: アセスメント:バイタルサイン(低血圧、頻脈、起立性低血圧)、皮膚ツルゴール低下、口腔粘膜乾燥、尿量減少(

臨床シナリオ

臨床実践ガイド - 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 85歳女性、特別養護老人ホーム入居中。今朝から38.2℃の発熱と「食欲がない」と訴え。介護職員が「お茶もほとんど飲めていない」と報告。バイタルサイン:血圧98/62mmHg(座位)、脈拍98回/分、呼吸数22回/分、SpO2 97%(室内気)。皮膚を摘むと戻りが遅い(ツルゴール低下)。口腔内はネバネバして乾燥。尿量は朝からほとんどなし。看護師としてどのようにアセスメントし、医師に報告すべきでしょうか? - 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 最重要! まず観察:バイタルサイン(特に起立性低血圧の有無)、皮膚・粘膜の乾燥サイン、尿量、意識レベル(せん妄のスクリーニング:CAM-ICUなど)。アセスメント:発熱による不感蒸泄増加+経口摂取低下→細胞外液減少→腎前性腎障害。医師への報告(SBAR):S「発熱・食欲低下あり」B「体温38.2℃、BP98/62、HR98、皮膚ツルゴール低下」A「脱水による腎前性腎障害を疑う。BUN/Cr比の評価と輸液療法が必要」R「至急の血液検査と補液指示をお願いします」。介入:指示に基づき、静脈路確保(20G留置針で前腕)、乳酸リンゲル液500mLを4時間かけて投与開始。誤嚥リスクを評価し、覚醒していれば経口補水も併用。バイタルサインと尿量を30分ごとにモニター。 - 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 高齢者への急速輸液は心不全(肺水腫)のリスクがあるため、投与速度は慎重に(目安:500mLを4~6時間以上)。また、低Na血症や低K血症の合併に注意し、輸液開始後は電解質を再評価。転倒・転落予防:低血圧によるふらつきリスクがあるため、ベッド柵を上げ、コールを手元に置く。感染対策:発熱の原因検索(尿路感染症が多い)のため、尿培養・血液培養を医師に提案。 看護プロトコル: 観察項目:バイタルサイン(15~30分ごと)、意識レベル(JCS/GCS)、尿量(1時間ごと、目標0.5mL/kg/h以上)、皮膚ツルゴール、口腔粘膜、体重変動(毎日測定)。報告基準:収縮期血圧80mmHg未満、尿量0.3mL/kg/h未満、意識レベルの低下(JCSでI桁以上)。記録:SBAR形式で経過を時系列に。家族への説明:「点滴で水分を補っています。高齢のためゆっくりと補いますが、脱水が改善すればお食事も再開できる見込みです。」 先輩看護師の一言: 「高齢者の脱水は『静かな脱水』と言われます。症状が非特異的で、若い人のようにのどが渇いたと明確に訴えないことも多いんです。だからこそ、バイタルサインのわずかな変化や『いつもより元気がない』という感覚を大事にしてください。BUN/Cr比はその『静かな脱水』を見つけるための頼りになる道具です。国試でも現場でも、必ず押さえておきましょう!」

重要概念

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