核心解説
この問題は、
脱水症 (Dehydration) の病態生理と分類を問うています。脱水は、水分と電解質(特にナトリウム)の喪失バランスによって、
高張性・等張性・低張性の3つに分類されます。高齢の術後患者で発熱と経口摂取不良がある場合、水分とナトリウムがほぼ等しく失われるため、
等張性脱水 (Isotonic Dehydration) が最も典型的です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 等張性脱水は、水分とナトリウムが等しい割合で失われる状態です。本例では、発熱による不感蒸泄の増加と経口摂取不足により、細胞外液(血管内液+間質液)が減少します。しかし、ナトリウム濃度は正常範囲に保たれるため、血清Na値は
135~145mEq/Lの範囲内にとどまります。臨床所見として、尿量減少(
400mL/日)、皮膚ツルゴール低下、血圧低下(
88/56mmHg)、頻脈(
104回/分)が認められます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①高張性脱水は、水分喪失がナトリウム喪失より多い状態(例:発熱のみで水分摂取がない、糖尿病性高血糖)で、血清Na >145mEq/L、細胞内脱水(口渇・意識障害)が特徴です。本例では発熱と摂取不足はあるが、輸液が行われている可能性も考慮し、等張性が優先されます。
②③「細胞外脱水」「細胞内脱水」は、脱水の分類として不適切です。これらは脱水時の体液分布の状態を表す概念であり、脱水のタイプ分類(高張・等張・低張)とは異なります。
⑤低張性脱水は、ナトリウム喪失が水分喪失より多い状態(例:利尿薬の過剰使用、副腎不全)で、血清Na 145mEq/L
発熱・水分摂取不足・糖尿病性高血糖 | 細胞内脱水(細胞から水分が出ていく) | | 等張性脱水 | 135~145mEq/L | 下痢・嘔吐・出血・術後経口摂取不足 | 細胞外液減少(細胞内はほぼ正常) |
| 低張性脱水 | 30mL/時、血圧回復、皮膚ツルゴール改善を確認。
暗記のコツ: 「等しい=等張」=「水分とNaが等しい割合で失われる」。「高張=Na高め=細胞内脱水で口渇」。
国試頻出ポイント: 高齢者の術後管理と脱水の組み合わせは頻出。発熱・経口摂取不足・尿量減少の3つの情報から等張性脱水を導き出す問題は、看護師国家試験でよく見られます。
出題パターン注意!: 単純な分類問題から、事例問題へ発展。「術後3日目、発熱、尿量400mL/日、血圧低下」の情報から、輸液製剤の選択(乳酸リンゲル液 vs 5%ブドウ糖液)や、輸液速度の計算を問う問題に発展することがあります。
臨床シナリオ臨床実践ガイド
この概念が実際の病院・在宅・施設の臨床現場でどのように適用されるかを説明します。
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
80代女性、大腿骨頸部骨折術後2日目。経口摂取が不十分で、発熱38.2℃。夜勤帯の看護師がラウンド中に、患者から「めまいがする」と訴えあり。バイタルサイン:血圧82/50mmHg、脈拍110回/分、尿量は過去6時間で80mL(13mL/時)。皮膚ツルゴール低下あり。あなたが看護師として最初にとるべき行動は?
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察: まず バイタルサイン(血圧・脈拍・呼吸・SpO2) と 尿量・尿色 を確認。血清Na値が不明でも、臨床所見(発熱+摂取不足+血圧低下)から等張性脱水を強く疑います。
2. アセスメント: 最重要! 術後高齢者の脱水は、循環血液量減少性ショック (Hypovolemic Shock) への移行リスクが高いため、血圧80mmHg台・頻脈・乏尿の3徴は危険シグナルです。
3. 報告: SBAR (Situation-Background-Assessment-Recommendation) で医師に報告。S:血圧低下・乏尿あり。B:術後3日目、発熱と摂取不足。A:等張性脱水の可能性。R:乳酸リンゲル液500mLの急速投与を提案。
4. 介入: 医師の指示に基づき、乳酸リンゲル液または生理食塩液を投与。投与中は肺音の聴取(ラ音の有無)と頸静脈怒張を観察し、輸液過多による肺水腫を予防。
5. 評価: 目標は尿量>30mL/時、血圧>100mmHg、脈拍
重要概念
- 等張性脱水 — 水分とナトリウムが等しく喪失する脱水で、細胞外液量が減少する。血清Na値は正常範囲。高齢者の術後や発熱時に多い。
- 高張性脱水 — 水分喪失がNa喪失より多い状態。血清Na >145mEq/Lで、細胞内脱水による口渇・意識障害が特徴。
- 低張性脱水 — Na喪失が水分喪失より多い状態。血清Na
- 不感蒸泄 — 皮膚や呼吸から気づかないうちに失われる水分。発熱時には増加し、脱水のリスク因子となる。
- 循環血液量減少性ショック — 大量の体液喪失により循環血液量が減少し、臓器灌流が低下するショック状態。脱水の重症化で発症する。
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