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高齢者に特有な症候・疾患・障害と看護
問題
90歳の男性。在宅療養中。家族から「昨夜から水分を全く摂らず、ぐったりしている」と訪問看護師に連絡があった。訪問すると体温37.8℃、脈拍92回/分、血圧86/54mmHg、呼吸数24回/分。口腔内は乾燥し、舌に縦じわがみられる。高齢者の脱水症の初期対応として最も優先すべき看護介入はどれか。
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1
医師に連絡し、静脈内輸液の指示を仰ぐ
✓ 正解
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2
経鼻胃管による水分補給を開始する
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3
意識レベルを評価するために痛み刺激を与える
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4
経口補水液をスプーンで少量ずつ与える
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5
冷却タオルで全身を冷やす
解説
高齢者で血圧低下(86/54mmHg)と意識障害(ぐったり)を認める場合、重症脱水による循環不全が疑われる。経口摂取が不可能であり、緊急に静脈内輸液による補正が必要である。まず医師に連絡し、静脈路確保と輸液の指示を仰ぐことが最優先である。経口補水は意識障害がある場合は誤嚥のリスクがある。
同じテーマの次の問題85歳の女性。施設入居中。本日、発熱と食欲低下を認めた。バイタルサインは体温38.2℃、脈拍98回/分、血圧98/62mmHg、呼吸数22回/分。皮膚のツルゴール低下と口腔粘膜の乾…
詳細解説
核心解説
この問題は、高齢者の脱水症 (Dehydration) における初期対応の優先順位を問うています。特に、重症度評価と経路選択が鍵となります。患者は90歳高齢者で、血圧86/54mmHgと明らかな低血圧、意識レベル低下(ぐったり)を認め、口腔内乾燥と舌の縦じわも見られます。これらの所見は、循環血液量減少性ショック (Hypovolemic Shock) に至る可能性がある重症脱水を示しています。経口摂取が不可能で循環動態が不安定な場合、最重要! 静脈路確保による迅速な輸液療法 (Fluid Therapy) が最優先となります。
1. 核心概念の分析 (Key Concept): この問題は、高齢者の脱水症における 蘇生と水分補給の経路選択 です。高齢者は腎機能低下や口渇感の鈍化により脱水に陥りやすく、一旦脱水が進行すると重篤化しやすいという特徴があります。特に、血圧低下や意識障害を伴う場合は、循環不全 (Circulatory Failure) を疑い、速やかに血管内への直接補給(静脈内輸液)が必要です。
2. 正解の根拠 (Answer Rationale): ①「医師に連絡し、静脈内輸液の指示を仰ぐ」が正解です。患者は血圧86/54mmHgと低血圧を示し、意識レベルも低下しているため、経口補水が不可能かつ不適切です。このような循環不全状態では、経静脈的な輸液 (Intravenous Fluid Resuscitation) が唯一確実な水分補給経路であり、看護師はまず医師に状況を報告し、静脈路確保と輸液の指示を仰ぐことが優先されます。看護師の裁量で実施可能な範囲を超えた処置(輸液指示)が必要です。
3. 誤答の分析 (Distractor Analysis):
②経鼻胃管による水分補給:意識障害のある患者への経鼻胃管挿入は誤嚥リスクが高く、また胃管から投与された水分が循環血液量として有効に利用されるまで時間がかかります。急変時の蘇生には不適切です。
③意識レベル評価のための痛み刺激:意識レベルは「ぐったりしている」という漠然とした情報ですが、痛み刺激で反応を見るよりも、まずは循環動態の安定化(輸液)が優先されます。痛み刺激は診断的価値はありますが、緊急処置ではありません。
④経口補水液の少量投与:意識障害がある患者への経口摂取は誤嚥のリスク (Aspiration Risk) が高く、禁忌です。意識が清明でかつ軽度脱水の場合に限り有効な方法です。
⑤冷却タオルで全身を冷やす:体温37.8℃は微熱程度であり、冷却の適応ではありません。むしろ、低血圧状態での冷却は末梢循環をさらに悪化させ、ショックを増悪させる可能性があります。
4. 関連概念の整理 (Related Concepts): 高齢者の脱水は、混同注意! ①経口摂取可能な軽度脱水(意識清明)→ 経口補水液 (ORS) の経口投与、②経口摂取不可能または中等度脱水(意識障害なし、血圧維持)→ 皮下輸液または静脈内輸液(医師指示)、③重症脱水(血圧低下・意識障害あり)→ 静脈内輸液(迅速なルート確保と輸液蘇生)という段階的な対応を理解しましょう。
概念整理: 高齢者脱水症の重症度評価(日本静脈経腸栄養学会ガイドライン等に基づく)。
軽度:口渇、口腔内乾燥のみ、意識清明。
中等度:皮膚ツルゴール低下、尿量減少、頻脈。
重症(本症例):血圧低下(収縮期血圧
臨床シナリオ
臨床実践ガイド
この事例は、在宅療養中の超高齢者が重症脱水に陥ったケースです。訪問看護師としての臨床判断が問われています。
- 臨床シナリオ (Clinical Scenario): あなたは訪問看護師。90歳男性の独居(実際は家族が同居・介護)宅を訪問。家族から「昨夜から水分も食事も全く摂らず、呼びかけにも反応が悪くなってきた」と連絡あり。訪問時の所見:体温37.8℃(微熱)、脈拍92回/分(頻脈傾向)、血圧86/54mmHg(ショック域)、呼吸数24回/分(頻呼吸)。口腔内は著明に乾燥し、舌に縦じわ。皮膚ツルゴール低下あり。意識レベルはJCS II-10程度(呼びかけに開眼するがすぐ閉眼、痛み刺激にはかろうじて反応)。この状況で、あなたはまず何をすべきでしょうか?
- 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
1. 観察:バイタルサイン再確認、意識レベル(JCS/GCS)、皮膚・口腔の脱水徴候、尿量(家族に確認)、血液検査可能か(往診医の判断)。
2. アセスメント:重症脱水による循環血液量減少性ショック (Hypovolemic Shock) の疑い。高齢者であるため心腎予備能が低く、急激な悪化リスクあり。
3. 報告:医師へSBARで報告。
S (Situation): 「90歳男性、在宅療養中。昨夜から経口摂取不能、意識レベル低下あり。」
B (Background): 「高血圧・糖尿病の既往。内服薬あり(詳細不明)。」
A (Assessment): 「血圧86/54mmHg、脈拍92回/分、意識JCS II-10。重症脱水による循環不全とアセスメント。経口補水は不可能と判断。」
R (Recommendation): 「緊急に静脈路確保と輸液開始が必要と考えます。医師の往診または救急搬送の判断をお願いします。」
4. 介入:医師指示が出たら、末梢静脈路確保 を試み、乳酸リンゲル液または生理食塩液の投与を開始。投与速度は医師指示に従う(通常は500mL~1000mLを1~2時間で投与)。同時に、酸素投与(SpO2低下あれば)。
5. 評価:血圧が徐々に上昇し(目標収縮期血圧90mmHg以上)、意識レベルが改善するか経過観察。尿量も重要な指標。
- 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):
最重要! 意識障害患者への経口補水は絶対禁忌!誤嚥性肺炎 (Aspiration Pneumonia) のリスクが高い。
高齢者は心臓に負担をかけないよう、輸液速度は慎重に設定する(急速輸液は心不全リスク)。
転倒・転落予防:意識障害・低血圧のため、ベッド上安静を徹底し、柵を上げる。家族に付き添いを依頼。
アレルギー確認:輸液製剤に対するアレルギー歴の確認(特に造影剤や薬剤との関連)。
看護プロトコル:
観察項目:バイタルサイン(15~30分毎)、意識レベル、尿量、末梢冷感の有無、肺うっ血の徴候(輸液過多による呼吸音異常)。
報告基準:血圧が改善しない(
重要概念
- 循環血液量減少性ショック (Hypovolemic Shock) — 有効循環血液量が急激に減少することで、組織灌流が低下し、細胞機能障害をきたす病態。出血、脱水、やけどなどが原因。本症例では重症脱水が原因。
- 静脈内輸液 (Intravenous Fluid Therapy) — 血管内に直接水分・電解質・栄養を補給する方法。経口摂取不能な患者や緊急時の蘇生に用いられる。本症例では乳酸リンゲル液や生理食塩液が第一選択。
- 経口補水液 (Oral Rehydration Solution: ORS) — 軽度~中等度の脱水に対して経口的に水分・電解質を補給するための溶液。意識清明で経口摂取可能な患者に使用する。重症脱水や意識障害では禁忌。
- 誤嚥性肺炎 (Aspiration Pneumonia) — 口腔内や胃内容物が気道内に誤って吸入されることで発症する肺炎。意識障害や嚥下機能低下のある高齢者でリスクが高く、経口補水時には特に注意が必要。
- SBAR (Situation-Background-Assessment-Recommendation) — 医療従事者間の情報伝達を効率的かつ確実に行うためのフレームワーク。状況・背景・アセスメント・提案の順に報告することで、コミュニケーションエラーを防ぐ。
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