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運動機能障害のある患者の看護
パーキンソン病患者の運動機能障害に対する看護で、すくみ足による転倒を予防するための対応として適切なのはどれか。
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1
歩行時は両手で歩行器を強く握らせる
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2
床にテープで直線の目印を貼る
✓ 正解
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3
車椅子での移動を勧める
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4
歩行中は声をかけずに見守る
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5
患者の歩行速度に合わせてゆっくり歩く
解説
パーキンソン病患者のすくみ足は、視覚的な手がかり(床のラインや模様)を与えることで改善することが多い。床にテープで目印を貼ることは有効な転倒予防策である。
同じテーマの次の問題運動機能障害のある患者の看護において、筋萎縮の進行を予防するために最も重要な看護介入はどれか。この問題が収録された問題集成人看護学KRW 12,900
核心解説
この問題は、パーキンソン病 (Parkinson’s Disease)の代表的な運動症状であるすくみ足 (Freezing of Gait)に対する看護介入の知識を問うています。すくみ足は、歩行開始時や方向転換時、狭い場所などを通過する際に、突然足が動かなくなる現象で、転倒のリスクが非常に高まります。この症状の病態生理として、大脳基底核 (Basal Ganglia) のドパミン (Dopamine) 不足により、運動の開始と継続が困難になることが関与しています。看護介入では、患者が自身で運動を開始しやすいように環境を調整することが重要です。
正解の根拠 (Answer Rationale): 最重要! パーキンソン病患者のすくみ足には、視覚的・聴覚的手がかり (External Cue)が有効です。②の「床にテープで直線の目印を貼る」は視覚的手がかりとなり、患者はそのラインをまたぐように意識して歩くことで歩行が促進され、転倒予防につながります。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
① 歩行器を強く握らせる:強く握ることで姿勢が前傾しやすくなり、かえってバランスを崩すリスクがあります。歩行器は軽く添える程度が適切です。
③ 車椅子での移動を勧める:車椅子への移行は廃用症候群 (Disuse Syndrome) を促進し、残存機能の低下を招くため、患者の希望やADLレベルを評価した上で最終手段とすべきです。
④ 声をかけずに見守る:歩行時は、患者の注意を歩行に集中させるため声かけは控えることもありますが、すくみ足が生じた際には「右、左」などのリズムの合図や「大きな歩幅で」などの具体的な声かけが有効な場合があります。「見守る」だけでは転倒リスクへの対応として不十分です。
⑤ 患者の歩行速度に合わせる:これは歩行介助の基本ですが、すくみ足への直接的な転倒予防策ではありません。
概念整理: パーキンソン病の三大症状は、振戦 (Tremor)、固縮 (Rigidity)、無動・寡動 (Akinesia / Bradykinesia)です。すくみ足は無動・寡動の一つです。看護ではこれらの症状に加え、姿勢保持障害 (Postural Instability) による転倒予防が極めて重要です。
一目で比較!: 混同注意! パーキンソン病の歩行障害 vs 脳血管障害の片麻痺歩行
| 特徴 | パーキンソン病 (すくみ足) | 脳血管障害 (片麻痺) |
|---|
| 姿勢 | 前傾姿勢、上肢の振りが減少 | 患側へ傾く、骨盤の挙上 |
| 歩行パターン | 小刻み歩行、すくみ足、加速歩行 | 円を描くように歩く (分回し歩行) |
| 有効な介入 | 視覚的・聴覚的手がかり | 患側への体重移動の促し、装具療法 |
看護過程ポイント:
アセスメント: すくみ足が出現する場面(歩行開始時、方向転換時、ドアの通過時など)、歩行速度、歩幅、転倒リスク(Timed Up and Go Testなど)。
看護診断: 転倒リスク状態 (Risk for Falls)、身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)。
計画・実施: ①環境調整(床のテープ目印、通路の障害物除去、十分な照明)、②適切な歩行補助具の選択と使用方法の指導、③服薬管理(L-Dopaの効果時間と症状の変動を把握)、④安全な転倒時の対応の指導(転び方の練習、クッションの活用)。
暗記のコツ: 「パーキンソン病の歩行は“線”で攻略!」すくみ足には「床のテープ(視覚的線)」、加速歩行には「メトロノーム(聴覚的線)」をイメージすると覚えやすいです。
国試頻出ポイント: パーキンソン病の薬物療法(L-Dopa)、術後療法(DBS:脳深部刺激療法)、症状の日内変動(Wearing-off現象)、非運動症状(便秘、自律神経障害、うつ)と併せて、運動症状(特にすくみ足)への看護介入は頻出テーマです。
出題パターン注意!: 単純な知識問題に加え、「事例:80代男性、パーキンソン病。歩行時に足が動かなくなり転倒しそうになる。看護師の対応として適切なのはどれか。」のような状況設定問題で、実践的な判断力を問われます。
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario): 70代女性、パーキンソン病歴10年。自宅でADLはほぼ自立していましたが、最近すくみ足が頻回に出現し、トイレまでの歩行中に2回転倒しました。訪問看護師が初回訪問で評価を行います。看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):1. 観察: 自宅の環境(廊下の幅、段差、照明、手すりの有無)、歩行状態(歩行器使用の有無、歩幅、すくみ足の出現パターン)、薬の内服状況(L-Dopaの服用時間と効果の関係)。2. アセスメント: 「トイレまでの廊下に目印がなく、照明が暗い」→ 視覚的手がかり不足がすくみ足を誘発している可能性が高い。服薬時間とすくみ足の出現時間に相関がないか確認。3. 報告と介入: 医師に状態を報告し、必要に応じて薬剤調整を提案。訪問看護師の判断で、最重要! 廊下の床に目印となるテープを貼ることを提案。歩行器の高さ調整も合わせて実施。4. 評価: テープ貼付後、患者が「線をまたごうとしたら歩けた」と喜び、転倒が減少したかを確認。患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):- テープはつまずきの原因にならないよう、床にしっかりと密着させ、端がめくれないようにする。- 視覚的手がかりに頼りすぎると、環境が変わった時に対応できない可能性があるため、患者自身の身体感覚を活用した歩行練習も併せて行う。- パーキンソン病の患者は起立性低血圧 (Orthostatic Hypotension)を併発していることが多く、立ち上がり時のふらつきにも注意する。
看護プロトコル: 観察項目:症状の日内変動、薬効のタイミング、転倒リスク、ADL評価(Barthel Index)、うつ状態(Geriatric Depression Scale)。報告基準 (SBAR):S (状況): 「○○様、最近すくみ足が増えてトイレで転倒しました。」B (背景): 「パーキンソン病でL-Dopa内服中です。服薬から2時間後にすくみ足が出現しやすい傾向があります。」A (アセスメント): 「視覚的手がかり不足と薬効の変動が転倒の原因と考えます。」R (提案): 「廊下に目印を設置し、薬の調整についてもご検討いただけますか?」
先輩看護師の一言: 「すくみ足は、患者さん自身も『足が地面に張り付いて動かない』と表現するほど恐怖を感じる症状です。『ゆっくりでいいですよ』『私の声に合わせて歩いてみましょう』と声をかけ、小さな成功体験を積み重ねられるように支援することが、患者さんのQOL向上に直結します。国試でも、ただ知識を覚えるだけでなく、『この患者さんは今どんな気持ちだろう』と想像しながら問題を解いてみてくださいね。」
- すくみ足 (Freezing of Gait) — パーキンソン病の無動・寡動の症状で、歩行開始や方向転換時に突然足が動かなくなる現象。
- 外部手がかり (External Cue) — 視覚的(床のライン)や聴覚的(メトロノーム)な刺激で、運動の開始を補助する方法。
- 廃用症候群 (Disuse Syndrome) — 安静や活動低下により生じる筋萎縮、関節拘縮、骨粗鬆症、心肺機能低下などの二次的障害。
- 転倒リスク状態 (Risk for Falls) — NANDA-I看護診断の一つで、身体的可動性障害や環境因子により転倒しやすい状態。
- 大脳基底核 (Basal Ganglia) — 運動の調節・開始に関与する脳の領域。パーキンソン病ではこの部位のドパミン神経細胞が変性する。
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