脳血管障害による片麻痺患者のベッド上での体位変換において、肩関節の亜脱臼を予防するための看護技術として正しいのはどれか。 | MyMerci
運動機能障害のある患者の看護
問題

脳血管障害による片麻痺患者のベッド上での体位変換において、肩関節の亜脱臼を予防するための看護技術として正しいのはどれか。

解説
片麻痺患者では、麻痺側肩関節周囲筋の弛緩により亜脱臼が生じやすい。枕などで上肢を支持し、軽度外転位を保つことで関節窩と上腕骨頭の位置関係を維持できる。

詳細解説

核心解説 この問題は、脳血管障害 (Cerebrovascular Disease) による片麻痺患者における肩関節の 亜脱臼 (Subluxation) 予防のための正しい体位変換およびポジショニング技術を問うています。亜脱臼は、麻痺側上肢の筋緊張低下により、肩関節を支える回旋筋腱板(ローテーターカフ)や三角筋が弛緩し、重力の影響で上腕骨頭が関節窩から下方に落ち込むことで発生します。予防の基本は、最重要! 重力に逆らう支持関節窩と上腕骨頭の正常な位置関係の維持 です。 1. 核心概念の分析 (Key Concept): 片麻痺患者の肩関節亜脱臼は、特に弛緩性麻痺の時期に生じやすい合併症です。これを予防するためには、関節を解剖学的に正しい位置(軽度外転位)で保持し、かつ重力による下方への牽引を防ぐために枕やクッションで上肢全体を支持する必要があります。単なる固定や挙上ではなく、関節のアライメントを考慮した支持が鍵となります。 2. 正解の根拠 (Answer Rationale): ③ 麻痺側上肢を枕で支持し、軽度外転位を保つ が正解です。枕による支持は、上肢の重量を預けることで肩関節にかかる下方への牽引力を軽減します。同時に、軽度外転位(約20~30度) を保つことで、関節窩内で上腕骨頭が中心に位置しやすくなり、関節包や靭帯の過度な伸張を防ぎます。これは、エビデンスに基づくポジショニング の基本です。 3. 誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ① 混同注意! 麻痺側上肢を下垂させることは、重力による牽引を増強させ、亜脱臼を悪化させるため禁忌です。 - ② 上肢を頭上に挙上して保持することは、関節包や神経血管束に不自然なストレスを与え、むしろ損傷リスクを高めます。また、持続的な挙上は患者の不快感も強いです。 - ④ 体側に密着させて固定することは、拘縮予防の観点からは必要な場合もありますが、亜脱臼予防にはなりません。むしろ、固定により上肢の重量が直接肩関節にかかり続け、下方脱臼を促進する可能性があります。 - ⑤ 混同注意! 内旋位は肩関節の前方組織を緊張させ、関節包の不安定性を助長する可能性があります。亜脱臼予防には、軽度外転位もしくは中間位が推奨されます。 4. 関連概念の整理 (Related Concepts): 片麻痺患者の肩関節問題には亜脱臼の他に、肩手症候群 (Shoulder-Hand Syndrome)複合性局所疼痛症候群 (Complex Regional Pain Syndrome, CRPS) があります。これらは亜脱臼とは病態が異なりますが、不適切なポジショニングや過剰な他動運動が誘因となるため、共通した予防的ケア(関節保護、適切な可動域訓練)が重要です。

概念整理: 片麻痺患者の肩関節ケアの核心は、筋弛緩による関節不安定性を補うための重力対策です。枕やクッションによる支持、軽度外転位の保持、そして過度な牽引や挙上の回避が三大原則です。正常な関節解剖(関節窩と上腕骨頭の関係)をイメージしながらケアを行うことが、亜脱臼とそれに伴う疼痛の予防につながります。

一目で比較!:
状態病態看護介入
肩関節亜脱臼筋緊張低下 + 重力による上腕骨頭の下方偏位枕支持 + 軽度外転位
肩手症候群交感神経反射性ジストロフィー(疼痛・腫脹・皮膚変化)挙上・安静・ステロイド治療
拘縮予防関節可動域制限他動的関節可動域訓練(適切な範囲で)


看護過程ポイント:
- アセスメント (Assessment): 麻痺側肩関節の可動域、筋緊張(弛緩性か痙性か)、疼痛の有無、皮膚の状態(発赤・腫脹)、亜脱臼の触診(肩峰と上腕骨頭の間の陥凹)。
- 看護診断 (Nursing Diagnosis): 「関節脱臼のリスク状態 (Risk for Joint Dislocation)」関連因子:片麻痺による筋弛緩、不適切なポジショニング。
- 計画・実施 (Plan & Implementation): 臥床中は枕で上肢全体を支持し、座位・車椅子では肘掛けや机上に上肢を置く、スリングの適応を検討(医師指示)。
- 評価 (Evaluation): 亜脱臼の有無、肩関節痛の出現、関節可動域の維持。

暗記のコツ: 「亜脱臼予防は『吊るす』のではなく『乗せる』イメージ!」重力で下に落ちる上腕骨頭を、枕の上に「そっと乗せる」ことで支えます。また、軽度外転位は「脇の下にタオルを挟む程度」と覚えると、実際のケアで役立ちます。

国試頻出ポイント: 片麻痺患者のポジショニングは、必須項目です。特に「なぜ枕で支持するのか」「なぜ下垂や固定はダメなのか」を病態生理(筋緊張低下と重力)と結びつけて説明できるようにしておきましょう。選択肢の「牽引」「挙上」「固定」という言葉に惑わされないように注意してください。

出題パターン注意!: この問題は単純知識問題ですが、発展型として「麻痺側上肢の管理で正しいのはどれか」という状況設定問題や、「ベッド上で肩関節痛を訴える患者への対応」という看護過程問題に変化します。また、他の関節(股関節の脱臼予防など)と比較した問題も出題され得ます。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 70代女性、左片麻痺(弛緩性麻痺)の患者様が病棟で臥床中です。夜間の体位変換時に、介助者が麻痺側の右上肢を無造作にベッドサイドに垂らしたまま背抜きをしようとしています。このままでは、肩関節に強い牽引力がかかり、亜脱臼を誘発するリスクがあります。看護師として、どのような具体的な声かけと技術介入を行うべきでしょうか? 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
1. 観察 (Observation): まず、現在の患者様の麻痺側上肢の位置と肩関節の状態を確認します。肩峰と上腕骨頭の間に指が入るほどの隙間(亜脱臼のサイン)がないか触診します。
2. アセスメント (Assessment): 「このまま体位変換を続けると、重力によって上腕骨頭が下方に偏位し、関節包や靭帯が過度に伸張され、亜脱臼が生じるリスクが高い」と判断します。
3. 報告・指示 (Report): 必要に応じて、担当看護師やリハビリテーションスタッフと情報共有します。
4. 介入 (Intervention): 介助者に「患者さんの右腕を支えましょう。枕を使って、腕全体を軽く外に開いた形で乗せると、肩が安定しますよ」と声をかけます。具体的には、最重要! 麻痺側上肢を一旦安全に支え、肘から手首までを枕でしっかりと受け、肩関節を軽度外転位(約30度)に調整します。背抜きは、上肢を支えた状態で行います。
5. 評価 (Evaluation): 体位変換後、肩関節の位置が適切か再確認し、患者様に痛みがないか尋ねます。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):
- 禁忌行為! 麻痺側上肢を引っ張ったり、腋窩部に手を入れて持ち上げる行為は、肩関節損傷のリスクが極めて高いため絶対に行わないでください。
- 体位変換時は、必ず2人以上で行うか、補助具(スライディングボードやリフト)を使用し、患者様の上肢を確実に支持する体制をとることが安全です。
- ベッド柵やサイドレールに麻痺側上肢がぶつかったり、挟まれたりしないよう、クッションやタオルで保護することも重要です。

看護プロトコル:
- 観察項目: 肩関節のアライメント、疼痛の有無(Visual Analog Scale, VASで評価)、皮膚の損傷の有無、関節可動域。
- 報告基準 (SBAR): 「Situation: 左片麻痺の患者様、体位変換後に肩関節痛を訴えています。Background: 麻痺側上肢のポジショニングが不十分でした。Assessment: 亜脱臼のリスクが高い状態です。Recommendation: 医師の診察と、リハビリスタッフによるポジショニング指導をお願いします。」
- 記録のポイント: 体位変換の実施時刻、方法、使用した補助具、患者様の反応(疼痛の有無)、麻痺側肩関節の状態。

先輩看護師の一言: 「片麻痺患者さんの肩は、まるで柔らかい粘土のようなもの。ちょっとした力の加え方で、簡単に形(位置)が変わってしまいます。患者さんが『痛い』と訴える前に、私たち看護師が先回りして、『この動きで肩に負担がかからないかな?』と想像力を働かせることが大切です。国試では『枕で支持する』という正解を覚えるだけでなく、『なぜ枕で支えるのか』を患者さんの体の内側で起きていること(筋弛緩と重力)と一緒にイメージできるようになると、現場で本当に役立つ看護師になれますよ!」

重要概念

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