65歳女性。大腸癌術後、ストーマ造設中。下痢が続き、倦怠感と口渇を訴えている。血液検査でNa 148mEq/L、K 3.… | MyMerci
内部環境(体温、血糖、体液量、電解質、酸塩基平衡)調節機能障害のある患者の看護
問題

65歳女性。大腸癌術後、ストーマ造設中。下痢が続き、倦怠感と口渇を訴えている。血液検査でNa 148mEq/L、K 3.2mEq/L、Cl 110mEq/L。この患者の状態として正しいのはどれか。

解説
Na 148mEq/Lは高ナトリウム血症であり、高張性脱水を示す。下痢による水分喪失がナトリウム喪失を上回ったためと考えられる。K 3.2mEq/Lは低カリウム血症であり、下痢によるカリウム喪失が原因である。

詳細解説

核心解説 この問題は、脱水 (Dehydration) の分類と、電解質異常 (Electrolyte Imbalance) を同時に評価する、病態生理の統合的理解を問うています。ポイントは、血清ナトリウム値から脱水の種類を判断し、血清カリウム値から電解質異常を判断することです。

正解の根拠 (Answer Rationale):
患者のデータは以下の通りです。
- 血清Na値: 148mEq/L高ナトリウム血症 (Hypernatremia)(正常値: 136-145mEq/L)。これは、水分喪失がナトリウム喪失を上回った状態、すなわち 高張性脱水 (Hypertonic Dehydration) を示します。
- 血清K値: 3.2mEq/L低カリウム血症 (Hypokalemia)(正常値: 3.5-5.0mEq/L)。
- 臨床症状:下痢による消化管からの水分・電解質喪失、倦怠感(低Kの症状)、口渇(高張性脱水の症状)が合致します。
したがって、「高張性脱水と低カリウム血症」が正解です。

誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ① 混同注意! Na値148は高ナトリウム血症なので、高張性脱水は正しいですが、K値3.2は低カリウム血症です。高カリウム血症ではありません。下痢ではKが失われるため、むしろ低Kになりやすいです。
- ③ Na値148は高張性脱水であり、等張性脱水(Na正常)ではありません。また、K値は低値です。
- ④ Na値148は高張性脱水であり、低張性脱水(Na低値)ではありません。低カリウム血症の部分は正しいです。
- ⑤ Na値148は高ナトリウム血症であり、低ナトリウム血症ではありません。また、脱水の種類も誤りです。

関連概念の整理 (Related Concepts):
脱水の分類は、血清Na濃度で以下の3つに分かれます。
分類血清Na原因(例)
高張性脱水上昇発熱、糖尿病性ケトアシドーシス (DKA)、尿崩症、水分摂取不足
等張性脱水正常出血、嘔吐・下痢(電解質と水分が等しく喪失した場合)
低張性脱水低下利尿薬の過剰使用、副腎不全、発汗後の水分のみの補給
また、下痢ではKの喪失に加え、重炭酸イオン (HCO3-) も失われるため、混同注意! 代謝性アシドーシス (Metabolic Acidosis) を合併することも多いです。

概念整理: 血清Na値は細胞外液の浸透圧を反映し、脱水の種類を分類する鍵。血清K値は細胞内外のバランスと消化管喪失の影響を受ける。下痢はNaとKの両方を失うが、水分喪失の程度によってNa値が上昇することがある。
一目で比較!: 高張性脱水 vs 低張性脱水:高張性は細胞内脱水(口渇が強く、細胞が縮む)、低張性は細胞内浮腫(脳浮腫による意識障害リスク)。症状と治療(輸液の種類)が全く異なる。
看護過程ポイント: アセスメント:バイタルサイン(血圧低下、脈拍増加)、皮膚ツルゴール、体重変化、口渇の有無、尿量・尿比重。 看護診断:「体液量不足リスク状態 (Risk for Deficient Fluid Volume)」または「体液量不足 (Deficient Fluid Volume)」。 介入:経口摂取が可能なら経口補水液 (ORS) の勧め。静脈内輸液は医師の指示に基づき、高張性脱水には 5%ブドウ糖液 や低張性輸液が選択される。
暗記のコツ: 「Na高けりゃ高張性!Na低けりゃ低張性!正常なら等張性!」と覚えましょう。そして「下痢のKは下がる(Down)!」と語呂合わせで覚えると、Kの動きを間違えにくいです。
国試頻出ポイント: 血清Na値と脱水の分類の組み合わせは超頻出。検査値の数値と症状(口渇、倦怠感、意識レベルなど)を結びつけて、正しい病態を選ばせる問題がよく出ます。
出題パターン注意!: 単純な知識問題だけでなく、「この患者に最初に投与すべき輸液はどれか」という状況設定問題に発展します。高張性脱水には低張性輸液(例:5%ブドウ糖液+維持液)、低張性脱水には生理食塩液を選択する、という治療の優先順位も合わせて学習しましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario):
消化器外科病棟で、大腸癌術後でストーマ(人工肛門)を造設した65歳女性を受け持ちます。術後経過は順調でしたが、昨日からストーマからの排泄が水様性の下痢に変わり、今日の日勤帯で「体がだるくて、喉がとても渇く」と訴えました。バイタルサインは血圧96/60mmHg、脈拍102回/分、体温37.2℃。あなたは 口渇頻脈・低血圧 から脱水を疑い、血液検査をオーダーしました。

看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
1. 観察・アセスメント: 最重要! 結果が返ってくる前に、以下の項目を確認します。バイタルサイン(ショックの有無)、意識レベル(GCS)、ストーマの排泄量と性状(24時間で何ml?)、皮膚ツルゴール(上腕内側を軽くつまみ、戻りを確認)、口腔粘膜の乾燥、尿量(乏尿の有無)、体重変化(術前からの比較)。
2. 報告 (SBAR): 医師への報告例です。「S:65歳女性、大腸癌術後、ストーマ造設中。今日から水様性下痢が続き、倦怠感と口渇あり。B:バイタルサインは血圧96/60、脈拍102、体温37.2℃。意識清明。A:脱水と電解質異常を疑い、採血をオーダー済み。結果待ちです。R:輸液開始の指示と、ストーマケアの見直しをお願いします。」
3. 介入: 医師の指示が出るまでは、経口摂取が可能であれば、経口補水液 (OS-1など) を少量ずつ勧めます。ストーマ周囲のスキンケア(下痢便によるびらん予防のため、皮膚保護剤の使用)も同時に行います。医師の指示で、乳酸リンゲル液5%ブドウ糖液+維持液 などの静脈内輸液が開始されるでしょう。

患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):
- 転倒転落リスク:低血圧と倦怠感により、歩行時のふらつきが生じやすいです。ベッド柵を上げ、ナースコールを手元に置き、トイレやストーマケア時の付き添いを徹底します。
- ストーマ関連合併症:下痢便は皮膚を強く刺激します。ストーマ周囲の皮膚を清潔に保ち、適切なサイズの装具を選択し、漏れがないかこまめに観察します。
- 電解質補正のリスク:低カリウム血症 に対する補正(K補正)は、急速に行うと 不整脈 を誘発するリスクがあります。必ず 心電図モニター を装着し、補正速度を守りましょう(通常、成人で最大20mEq/時間以下)。

看護プロトコル: 観察項目は「バイタルサイン」「意識レベル」「尿量(1時間あたり30ml以上を目標)」「体重」「皮膚ツルゴール」「口渇の有無」「ストーマ排泄量(ml/hr)」。記録は「下痢開始時間・量・性状」「実施したケア内容」「患者の反応」を詳細に。報告はSBARで。
先輩看護師の一言: 「ストーマからの下痢って、教科書通りに電解質異常が起きやすいんです。でも、患者さんは『ただの下痢だから』と軽く考えてしまうことも。『いつもと違う』という小さなサインを見逃さず、採血をオーダーして確認する勇気が大切です。口渇と倦怠感は、体からの重要なSOSですよ!」

重要概念

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