術後の患者で、尿量が25mL/時間と減少し、血圧が低下している。バイタルサインは体温37.2℃、脈拍112/分、血圧82… | MyMerci
内部環境(体温、血糖、体液量、電解質、酸塩基平衡)調節機能障害のある患者の看護
問題

術後の患者で、尿量が25mL/時間と減少し、血圧が低下している。バイタルサインは体温37.2℃、脈拍112/分、血圧82/54mmHg、呼吸数24/分である。この患者の状態として最も考えられるのはどれか。

解説
術後は出血や不感蒸泄、食事摂取不足などにより循環血液量が減少しやすい。血圧低下、頻脈、尿量減少は循環血液量減少の典型的な徴候である。まずは輸液による循環血液量の補正が優先される。

詳細解説

核心解説 この問題は、術後患者のバイタルサインと尿量の変化から、全身の循環状態をアセスメントする能力を問うています。核心は、血圧低下・頻脈・尿量減少という3つの徴候を「循環血液量減少 (Hypovolemia)」の一連の症状として捉えられるかどうかです。

核心概念の分析 (Key Concept)
この問題の中心はショック (Shock)の早期発見です。特に低血液量性ショック (Hypovolemic Shock)の病態を理解することが鍵です。
手術後は、術中・術後の出血 (Hemorrhage)不感蒸泄 (Insensible Water Loss)、食事摂取不足などにより、体内の循環血液量が減少しやすくなります。循環血液量が減少すると、心拍出量 (Cardiac Output, CO) が低下し、血圧が下がります。身体はこれを代償しようと交感神経系を活性化し、心拍数 (Heart Rate) を増加させます(頻脈)。また、腎臓への血流も低下するため、尿量 (Urine Output) が減少します。これらはすべて、生体が循環血液量を維持しようとする代償反応です。

正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は⑤番の循環血液量減少 (Hypovolemia)です。
術後で最も注意すべき合併症の一つが出血による循環血液量減少です。問題文にある「血圧低下 (82/54mmHg)」「頻脈 (112/分)」「尿量減少 (25mL/時間)」は、循環血液量減少の三徴 (Triad of Hypovolemia)とも言える典型的な症状です。正常な尿量は30mL/時間以上(または1mL/kg/時間)であり、25mL/時間は明らかな減少です。この状態では、まず輸液療法 (Fluid Therapy) による循環血液量の補正が最優先の看護介入となります。

誤答の分析 (Distractor Analysis)
急性腎障害 (AKI) による溢水: 混同注意! AKIは腎機能低下により尿量が減少しますが、溢水(体内水分過剰)をきたす場合は、血圧はむしろ上昇傾向になることが多く、頻脈も必発ではありません。この患者の血圧低下と頻脈は、溢水よりも循環血液量減少を示唆します。
尿崩症 (Diabetes Insipidus, DI): DIは抗利尿ホルモン (ADH) の分泌低下または腎臓のADH抵抗性により、大量の低張尿(多尿)をきたす疾患です。尿量減少ではなく、多尿が特徴であるため、本症例とは逆の病態です。
甲状腺クリーゼ (Thyroid Storm): 甲状腺ホルモンが過剰に放出される緊急症で、高熱、頻脈、意識障害などが特徴です。頻脈は認めますが、血圧は上昇することが多く(収縮期血圧高値)、尿量減少は必発ではありません。発熱や意識レベルの変化の記載がないため、可能性は低いです。
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群 (SIADH): SIADHはADHが過剰に分泌されることで、体内に水分が貯留し、希釈性低ナトリウム血症 (Dilutional Hyponatremia)をきたします。尿量は減少しますが、体内水分量は増加しているため、血圧は正常または上昇傾向であることが多く、頻脈も特徴的ではありません。また、術後早期に急激に発症することは稀です。

関連概念の整理 (Related Concepts)
- ショックの分類: ①低血液量性 (Hypovolemic)、②心原性 (Cardiogenic)、③分布異常性 (Distributive: 敗血症性・アナフィラキシー性など)、④閉塞性 (Obstructive)。各ショックの特徴的な血行動態を比較して覚えましょう。
- 尿量のアセスメント: 尿量は腎灌流圧の指標であり、間接的に全身の循環状態を反映します。術後は30分~1時間ごとの尿量測定が標準的な観察項目です。
- バイタルサインのショックインデックス (Shock Index): 心拍数 ÷ 収縮期血圧。正常は0.5~0.7程度。本症例では112÷82 ≒ 1.37と高値であり、循環血液量減少が強く疑われます。

概念整理: 循環血液量減少 (Hypovolemia) の病態連鎖
出血/脱水 → 循環血液量減少 → 静脈還流量減少 → 一回拍出量 (SV) 減少 → 心拍出量 (CO) 減少 → 血圧低下 → 圧受容体制御 → 交感神経活性化 → 頻脈、末梢血管収縮 → 腎血流低下 → 尿量減少、BUN/Cr比上昇

一目で比較!: 尿量減少をきたす主な病態比較
病態尿量血圧主な原因
循環血液量減少減少低下出血・脱水
急性腎障害 (AKI)減少/無尿正常~上昇腎前性・腎性・腎後性
SIADH減少(濃縮尿)正常~上昇ADH過剰分泌
尿崩症 (DI)増加(多尿)正常~低下ADH分泌低下/抵抗性


看護過程ポイント
- アセスメント: バイタルサイン(特に血圧・脈拍・呼吸数の推移)、尿量(1時間値)、皮膚の色調・体温、末梢冷感の有無、意識レベル(脳血流低下の徴候)、創部からの出血の有無
- 看護診断: 「体液量不足 (Deficient Fluid Volume)」または「組織灌流低下 (Ineffective Tissue Perfusion)」
- 計画・実施: 医師への報告(SBAR形式)、輸液ラインの確保・増量(指示の範囲内)、酸素投与、体位管理(トレンデレンブルグ体位は禁忌のこともあるので指示に従う)、出血源の確認
- 評価: 尿量が30mL/時間以上に改善、血圧上昇、脈拍数減少、意識レベルの改善

暗記のコツ
血圧低下+頻脈+尿量減少=循環血液量減少」とセットで覚えましょう。特に「術後」というキーワードを見たら、まず「出血」を疑うクセをつけてください。ショックのサインは「Pale(顔面蒼白)、Pulse(頻脈)、Pressure(低血圧)、Pee(尿量減少)」の4つのPで覚えると便利です。

国試頻出ポイント
術後患者のバイタルサインの変化尿量測定を組み合わせたアセスメント問題は、看護師国家試験で非常に頻出です。特に「術後何時間以内の出血」「ドレーン排液量と尿量のバランス」「輸液速度の調整」など、実際の臨床判断を問う状況設定問題(事例問題)に発展することが多いです。単なる知識暗記ではなく、「なぜこの数値が異常なのか、次に何をすべきか」を考えられるようにしておきましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
あなたは外科病棟で受け持ちの患者さん(70代男性、胃がん術後2日目)の夜間ラウンドを行っています。患者さんは「なんとなく気分が悪い」と訴えています。バイタルサインを測定すると、血圧82/54mmHg、脈拍112/分、呼吸数24/分、SpO2 97%(酸素2L/分投与中)。尿量はこの1時間でわずか20mLしか出ていません。ドレーン排液量は徐々に増加傾向にあります。

看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
あなたはこの状況をどうアセスメントし、どう動くべきでしょうか?

1. 観察 (Observation): まずは客観的データの収集です。バイタルサイン(特に血圧低下・頻脈)と尿量減少(20mL/時間)は、循環血液量減少の可能性を強く示唆します。同時に、ドレーン排液量の増加は活動性出血の可能性を示しています。患者の意識レベル(JCS)、皮膚の冷感・湿潤、顔色も確認します。
2. アセスメント (Assessment): 「最重要! この患者さんは術後出血による低血液量性ショックの初期状態にある」とアセスメントします。ショックインデックスを計算すると 112/82 ≒ 1.37 で、正常(0.5~0.7)を大きく超えており、ショック状態を示しています。
3. 報告 (Report - SBAR): 直ちに医師へSBARで報告します。
- S (Situation): 「胃がん術後2日目の〇〇様です。夜間ラウンドでバイタルサインの異常を認めました。」
- B (Background): 「手術は4時間で終了、出血量は500mL、現在ドレーンからは1時間で30mLの排液があります。」
- A (Assessment): 「血圧82/54、脈拍112、尿量20mL/時間です。術後出血による循環血液量減少と判断します。」
- R (Recommendation): 「輸液の増量と緊急の採血(血算・凝固系)、輸血の準備を提案します。至急の確認をお願いします。」
4. 介入 (Intervention): 医師の指示を仰ぎながら、輸液の急速投与(指示の範囲内)を開始します。酸素投与量を調整し、患者をベッド上安静に保ちます。必要に応じて、濃厚赤血球 (RCC)の輸血準備も行います。
5. 評価 (Evaluation): 輸液後、血圧が上昇し、脈拍が減少、尿量が30mL/時間以上に回復すれば、循環動態の改善が認められたと評価します。改善が見られない場合は、さらなる出血の可能性や他因子(心原性など)を考慮します。

患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 禁忌: 昇圧薬の単独投与 は、循環血液量が補正されていない状態では効果が乏しく、組織虚血を悪化させる可能性があるため、まずは輸液による容量補充が原則です。
- 高齢者は心予備能が低下しているため、急速輸液による心不全(溢水)に注意する。輸液速度とバイタルサイン、呼吸音(ラ音の有無)を慎重にモニタリングします。
- 術後は転倒・転落リスクが高い。患者がふらつきや意識変容を示した場合、ベッド柵の上げとコールの使用を徹底します。

看護プロトコル
- 観察項目: 1時間ごとのバイタルサイン、尿量(可能であれば30分ごと)、ドレーン排液量・性状、意識レベル、末梢循環(爪圧迫テスト、皮膚温)
- 報告基準 (SBAR): 上記シナリオを参考に、S(何が起きたか)→B(背景情報)→A(あなたの判断)→R(何をしてほしいか)の順で簡潔に報告
- 記録のポイント: 患者の訴え(症状)、観察した客観的データ(数値)、実施した看護介入、医師への報告内容と指示内容、その後の患者の反応を時系列で正確に記載

先輩看護師の一言
「術後の患者さんで『なんとなく様子がおかしい』『気分が悪い』と訴えられたら、まずバイタルサインと尿量とドレーン排液量を必ずチェックしてください!『単なる不調』と流さないことが、患者さんの命を守る第一歩です。国試でも『術後』『尿量減少』『血圧低下』の3つのキーワードが揃ったら、答えはほぼ『循環血液量減少』か『出血』です。現場では、このサインを見逃さずに『急変の前触れ』として行動できる看護師になりましょう!」

重要概念

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