心不全患者で、体重が1週間で3kg増加し、下腿に浮腫が認められる。この患者の状態として最も考えられるのはどれか。 | MyMerci
内部環境(体温、血糖、体液量、電解質、酸塩基平衡)調節機能障害のある患者の看護
問題

心不全患者で、体重が1週間で3kg増加し、下腿に浮腫が認められる。この患者の状態として最も考えられるのはどれか。

解説
心不全では心拍出量低下により腎血流が減少し、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が亢進する。これによりナトリウムと水の再吸収が促進され、細胞外液量が増加する。体重増加と浮腫は細胞外液量増加の臨床的徴候である。

詳細解説

核心解説 この問題は、心不全 (Heart Failure) における体液量異常の病態生理を問うています。体重増加と下腿浮腫という典型的な所見から、体内の水分バランスがどのような状態にあるかをアセスメントする能力が求められています。心不全では、心拍出量 (Cardiac Output) の低下が引き金となり、代償機構としてレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系 (RAAS) が亢進します。これにより腎臓でのナトリウムと水分の再吸収が促進され、結果として細胞外液量が増加します。この過剰な細胞外液が組織間隙に貯留することで浮腫が生じ、体重増加として現れます。 正解の根拠 (Answer Rationale) 最重要! ①番の「細胞外液量の増加」が正解です。心不全による静脈圧上昇とRAAS活性化により、水分とナトリウムが体内に貯留し、血管内と間質の両方を含む細胞外液量 (Extracellular Fluid Volume)が増加します。体重増加はこの変化を鋭敏に反映する重要な指標であり、1週間で3kgの増加は臨床的に有意な体液貯留を示します。下腿浮腫は、重力の影響で過剰な細胞外液が下肢の間質に貯留した結果です。 誤答の分析 (Distractor Analysis) ②番の「細胞内脱水」は誤りです。細胞内脱水は主に高ナトリウム血症や発熱、下痢などで生じ、浮腫とは逆に皮膚ツルゴール低下などの所見が見られます。心不全では細胞内液量は保たれるか、むしろ全身の水分過剰状態に伴い軽度に増加することがあります。
③番の「高浸透圧血症」は誤りです。高浸透圧血症は血漿ナトリウム濃度が上昇した状態で、口渇、粘膜乾燥、意識障害などを引き起こします。心不全による体液貯留は通常、等張性または低張性であり、高浸透圧とはなりません。
④番の「低ナトリウム血症」は誤りです。心不全では時に混同注意! 希釈性低ナトリウム血症が合併することもありますが、これはあくまで結果であり、問題文の体重増加と浮腫の原因を直接説明するものではありません。体液量自体は増加しているため、「低ナトリウム血症」という選択肢は原因として不適切です。
⑤番の「循環血液量減少」は誤りです。これは出血や脱水などで見られる状態であり、浮腫とは正反対の病態です。心不全では循環血液量は増加しているため、誤答となります。 関連概念の整理 (Related Concepts) 心不全の体液量評価では、体重測定 (Daily Weight)が最も重要です。また、浮腫の程度(圧痕性か非圧痕性か)、頸静脈怒張 (Jugular Venous Distention, JVD)、肺ラ音の有無、尿量減少も合わせて観察します。治療としては、利尿薬 (Diuretics)(フロセミドなど)やRAAS阻害薬 (ACE阻害薬/ARB)が用いられ、ナトリウムと水分の排泄を促し、細胞外液量を減少させます。 概念整理: 心不全における体液貯留のメカニズムは、心拍出量低下 → RAAS亢進 → ナトリウム・水分再吸収増加 → 細胞外液量増加 → 体重増加・浮腫という一連の流れを理解することが核心です。体重は「体内の水分貯留のバロメーター」であり、1日1回、朝食前・排尿後の同一条件で測定します。 一目で比較!:
病態体液量主な原因臨床徴候
心不全 (体液貯留)細胞外液量増加心拍出量低下によるRAAS亢進浮腫、体重増加、頸静脈怒張、肺ラ音
脱水 (体液喪失)細胞外液量減少下痢、嘔吐、発熱、出血皮膚ツルゴール低下、口渇、粘膜乾燥、体重減少
腎不全 (体液貯留)細胞外液量増加糸球体濾過量低下浮腫、高血圧、乏尿
看護過程ポイント: アセスメント:体重増加と浮腫の程度を毎日評価し、バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、SpO2)と尿量をモニタリングする。看護診断:「体液過剰 (Excess Fluid Volume)」が優先される。計画・実施:医師の指示に基づき、利尿薬の確実な投与と効果の評価(尿量、体重減少、浮腫の改善)を行う。水分・ナトリウム制限の必要性を患者と共有し、食事指導を実施する。評価:体重が減少傾向にあるか、浮腫が改善しているか、呼吸状態が安定しているかを確認する。 暗記のコツ: 「心不全=水が漏れるポンプ」とイメージしましょう。心臓がうまく血液を送り出せない(心拍出量低下)と、腎臓が「もっと血液が必要だ!」と勘違いして(RAAS亢進)、水と塩をたくさんため込もうとします。その結果、体全体が水浸しになり、体重が増え、足がむくむのです。 国試頻出ポイント: 心不全の体液量評価は毎年必ずと言っていいほど出題されます。特に「体重増加」と「浮腫」は最も基本的なサインです。また、RAASの名称や、利尿薬・ACE阻害薬の作用機序も併せて問われることが多いため、合わせて学習しておきましょう。 出題パターン注意!: 単純な知識問題として「心不全で見られるのはどれか」と聞かれるだけでなく、「事例問題(Aさん、心不全増悪で入院、体重が3kg増加、下腿浮腫あり。看護師のアセスメントで適切なのはどれか)」という形で、看護過程のアセスメント段階を問われることが多いです。患者の状態を正しく評価できるようにしておきましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario) あなたは一般病棟で勤務する看護師です。80代女性の心不全患者さんが、1週間前と比較して体重が3kg増加し、両下腿に著明な圧痕性浮腫(+3)を認めています。患者さんは「最近、横になると息苦しい」と訴えており、バイタルサインは血圧 158/92 mmHg、脈拍 98回/分(整)、呼吸数 22回/分、SpO2 94%(室内気)でした。心音ではIII音(奔馬調律)が聴取されます。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment) 最重要! まず、患者さんの呼吸状態を最優先に評価します。呼吸困難 (Dyspnea) の増強は肺水腫 (Pulmonary Edema)の前兆であり、緊急対応が必要です。 1. 観察・アセスメント: バイタルサイン(特に呼吸数、SpO2、血圧)と体重を確認。呼吸音(ラ音の有無)、浮腫の程度(圧痕の深さ、範囲)、尿量(1日500ml以下で乏尿の可能性)をチェック。頸静脈怒張の有無も確認する。 2. 報告 (SBAR): 医師に「S(状況): 心不全増悪の兆候あり、B(背景): 80代女性、心不全、C(評価): 体重+3kg、下腿浮腫増強、起坐呼吸、SpO2低下傾向、A(提案): 酸素投与、利尿薬増量、心エコーのオーダーを提案」と報告する。 3. 看護介入: 医師の指示を受けて、酸素投与(2L/分、経鼻カニューレなど)を開始。フロセミドなどの静脈内投与を準備し、投与後の尿量と電解質(特にカリウム)をモニタリング。安静を保ち、ベッドアップ(ファウラー位またはセミファウラー位)で呼吸を楽にする。食事は塩分制限(1日6g未満)を徹底し、水分管理(1日1000ml程度の制限が一般的)を行う。 4. 評価: 2時間後、呼吸困難が改善し、SpO2が98%(酸素2L/分)に上昇。尿量が増加し(1時間に200ml以上)、血圧が140/82 mmHgに低下。これらの改善を確認し、経過を記録する。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions) - 警告! フロセミド投与後は急激な利尿に伴う循環血液量減少(脱水)や、低カリウム血症による不整脈(特に心室性期外収縮)に注意する。定期的な電解質(Na, K, Cl)と腎機能(BUN, Cr)の確認が必要。 - 転倒・転落予防:夜間頻尿や利尿薬によるトイレ歩行が多くなるため、ナースコールの手元確認、ベッド周囲の整理、夜間はポータブルトイレの設置も検討する。 - 感染対策:浮腫のある下肢の皮膚は脆弱で感染しやすい。皮膚の清潔を保ち、保湿剤でスキンケアを行う。 看護プロトコル: 観察項目:毎日の体重、浮腫スケール(0~+4)、バイタルサイン(特に呼吸数とSpO2)、尿量(24時間蓄尿または入出量バランス)、呼吸音、頸静脈怒張。 報告基準 (SBAR): SpO2 90%未満、呼吸数 25回/分以上、体重が1日1kg以上増加、血圧が収縮期90mmHg未満または160mmHg以上、尿量が4時間で100ml未満。 記録のポイント: 介入前後の呼吸状態、体重、浮腫の変化、尿量、患者の訴えを具体的に記載する。 先輩看護師の一言: 「心不全の患者さんを診る時は、『体重』と『息苦しさ』の変化に常にアンテナを張っていてください。『ちょっと体重が増えたけど、まだ大丈夫かな』ではなく、『あれ?いつもと違う』と思ったらすぐに報告することが、急変を未然に防ぐ鉄則です。国試でも、体重増加は『体液過剰』の最も早期で重要なサインだと覚えておいてくださいね!」

重要概念

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