診療に伴う技術
問題
体温測定において、腋窩温を測定する際の注意点として正しいのはどれか。
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1
腋窩が汗で湿っていると測定値は高くなる。
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2
測定前にアルコール綿で腋窩を清拭する。
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3
測定時間は1分間で十分である。
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4
反対側の腕は体幹から離して測定する。
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5
検温計の先端は腋窩の最も深い部分に密着させる。
✓ 正解
解説
腋窩温測定では、検温計の先端(感温部)を腋窩の最も深い部分(腋窩動脈の走行部位)に密着させることが正確な測定のために重要である。測定前にアルコール清拭は行わない(蒸散による冷却のため)。測定時間は機種にもよるが、通常は5~10分程度必要である。汗で湿っていると蒸散により低くなる。腕は体幹に密着させて測定する。
詳細解説
核心解説
この問題は、看護技術の基本である体温測定 (Temperature Measurement)、特に腋窩温 (Axillary Temperature)測定の正しい手技と注意点を問うています。体温はバイタルサイン (Vital Signs)の一つであり、正確な測定は患者の状態把握の基本となります。測定値に影響を与える因子を理解し、正しい手順を身につけることが重要です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
⑤「検温計の先端は腋窩の最も深い部分に密着させる」が正解です。
腋窩温は、腋窩動脈 (Axillary Artery)の走行に沿った最も深い部分(腋窩窩)で測定します。ここは体内の深部体温を反映するため、検温計の感温部を皮膚にしっかりと密着させ、周囲の外気の影響を遮断することが、正確な測定のために不可欠です。
最重要! 測定中は、患者さんの腕を体幹に密着させて検温計を固定し、空気の流入を防ぎます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
① 腋窩が汗で湿っていると測定値は高くなる:誤りです。汗の蒸発による気化熱で皮膚表面が冷却されるため、測定値は低くなります。測定前には清潔なタオルなどで軽く拭き取ります。
② 測定前にアルコール綿で腋窩を清拭する:誤りです。アルコールは揮発性が高く、蒸発時に皮膚を冷却するため、測定値が低くなる原因となります。また、皮膚刺激にもなります。測定前の清拭は、必要に応じて乾いたタオルやぬるま湯で湿らせたタオルで行います。
③ 測定時間は1分間で十分である:誤りです。機種にもよりますが、一般的な水銀体温計や電子体温計(予測式を除く)では、腋窩温の測定には通常5~10分程度が必要です。予測式電子体温計の場合は、本体のブザーが鳴るまで測定します。
④ 反対側の腕は体幹から離して測定する:誤りです。検温計を固定している側の腕は体幹に密着させ、反対側の腕は自然に置くか、軽く支えます。両腕とも体幹から離すと、検温部に外気が入りやすくなり正確に測定できません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
体温測定の部位には、腋窩の他に口腔温 (Oral Temperature)、直腸温 (Rectal Temperature)、鼓膜温 (Tympanic Temperature)などがあります。それぞれ基準値と測定上の注意点が異なります。
- 口腔温:食事や飲水の影響を受けやすい。測定前15分程度の安静が必要。
- 直腸温:深部体温に最も近いが、侵襲的で患者の負担が大きい。排便の影響を受ける。
- 鼓膜温:外耳道の形状や耳垢の影響を受ける。
腋窩温は最も安全で簡便な方法ですが、外気温の影響を受けやすいという欠点があります。
概念整理
体温測定の正確性に影響する主な因子は、測定部位の状態(発汗、清拭の有無)、測定時間、検温計の固定方法(密着の程度、外気の遮断)です。
看護過程ポイント
- アセスメント (Assessment):測定前に、患者の状態(安静か活動後か、発汗の有無、測定部位の皮膚状態)を観察します。測定値が異常な場合、測定手技の誤りを疑い再測定を検討します。
- 計画・実施 (Plan & Implementation):患者の状態に合わせた測定部位と方法を選択し、正しい手順で実施します。測定中の患者の安全(転落防止など)に配慮します。
- 評価 (Evaluation):測定値の基準範囲からの逸脱の程度を評価し、医師への報告や看護介入の必要性を判断します。
暗記のコツ
「腋窩温測定のポイントは、「深く・密着・遮断」」と覚えましょう。
- 深く:腋窩の最も深い部分に。
- 密着:検温計の先端を皮膚にしっかり密着させる。
- 遮断:腕を体幹につけて外気を遮断する。
国試頻出ポイント
バイタルサイン測定の基本手技は、毎年必ず出題される頻出テーマです。測定部位ごとの特徴と注意点、正常値、異常値の解釈、測定時の患者への配慮など、総合的に問われます。特に「測定値が高くなる/低くなる」要因は、事例問題でもよく出題されます。
臨床シナリオ
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
あなたは外科病棟の看護師です。術後3日目の70代の女性患者さん(大腸がん術後)のバイタルサイン測定を担当しました。患者さんは「ちょっと暑くて汗をかいた」と話し、寝衣の腋窩部分が湿っていました。
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察 (Observation):発汗の程度、皮膚の色・湿潤、全身状態(顔色、呼吸状態、意識レベル)を観察します。
2. アセスメント (Assessment):発汗により腋窩温が実際より低く測定される可能性を考慮します。術後の創部感染や全身状態の変化による発熱の可能性も念頭に置きます。
3. 介入 (Intervention):患者さんに清潔なタオルで腋窩の汗を軽く拭き取るようお願いするか、介助します。最重要!アルコール綿は使用しません。
4. 測定と報告 (Measurement & Report):正しい手順で腋窩温を測定します。測定値が36.5℃と基準範囲内であっても、発汗の影響を考慮し、必要に応じて15~30分後に再測定します。もし37.5℃以上であれば、発熱の原因をアセスメントし、医師へ報告します。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 高齢者や低体温が疑われる患者では、直腸温や鼓膜温の測定も検討します。腋窩温は外気温の影響を受けやすく、実際の深部体温より低く出ることがあります。
- 測定中は患者さんが不自然な姿勢にならないよう配慮し、転倒リスクを回避します。
- 検温計は患者さんごとに清潔に保ち、感染対策を徹底します。
先輩看護師の一言
「バイタルサイン測定は、ただ数値を取るだけの作業じゃありません。測定中に患者さんとコミュニケーションを取りながら、全身状態を観察する大切な機会です。『いつもと違う』変化に気づくためにも、正しい手技を身につけて、測定値の意味を考えながら臨床に出ましょう!」
重要概念
- 腋窩温 — 腋窩(わきの下)で測定する体温。安全かつ簡便だが、外気温や発汗の影響を受けやすい。
- バイタルサイン — 生命徴候。体温、脈拍、呼吸、血圧の4つを基本とし、意識レベルやSpO2を含めることもある。
- 深部体温 — 体内の深部の温度。直腸温、食道温、鼓膜温などがこれに近いとされる。腋窩温はこれより低めに出ることがある。
- 感温部 — 検温計の先端にある温度を感知する部分。これを皮膚に密着させることが重要。
- 気化熱 — 液体が気体に変化する際に周囲から奪う熱。汗の蒸発により皮膚表面が冷却される原理。
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