核心解説
この問題は
中心静脈圧 (Central Venous Pressure, CVP) の測定値の解釈を問うています。CVPは、
右心房内圧 (Right Atrial Pressure) を反映し、正常値は
約5~10 cmH2O です。CVPが2 cmH2Oと低値(基準値以下)であることから、右心房への静脈還流量が減少している状態を推測します。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 正解は③
循環血液量減少 (Hypovolemia) です。CVPは
前負荷 (Preload) の指標であり、循環血液量が減少すると静脈還流量が低下し、右心房圧が低下します。術後患者では、術中出血や術後の不顕性脱水(発汗、第3スペースへの水分移行)により循環血液量が減少しやすく、CVP低値はその重要なサインとなります。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①
心タンポナーデ (Cardiac Tamponade):
混同注意! 心タンポナーデでは、心膜腔内の液体貯留により心臓が圧迫され、拡張期の充満が阻害されます。その結果、右房圧・CVPは上昇(正常値以上)します。CVPが低値になることはありません。
②
右心不全 (Right Heart Failure): 右心不全では、右心室のポンプ機能低下により血液が右房にうっ滞し、右房圧・CVPは上昇します。低値になることはありません。
④
肺高血圧症 (Pulmonary Hypertension): 肺高血圧症は右心室の後負荷を増大させ、右心不全を引き起こすことで間接的にCVPを上昇させることがあります。直接的にCVPを低下させる病態ではありません。
⑤
三尖弁狭窄症 (Tricuspid Valve Stenosis): 三尖弁が狭窄すると、右心房から右心室への血液流入が障害され、右心房圧が上昇します。その結果、CVPは上昇します。低値になることはありません。
関連概念の整理 (Related Concepts):
CVPは右心系の前負荷評価に用いますが、左心系の前負荷評価には
肺動脈楔入圧 (Pulmonary Artery Wedge Pressure, PAWP) を使用します。また、CVPの上昇は右心不全、心タンポナーデ、過剰輸液、肺塞栓症など、低値は循環血液量減少や血管拡張(敗血症など)を疑います。CVP単独ではなく、
バイタルサイン(血圧、心拍数、尿量) や
血液検査(Hb、Ht、BUN/Cr比) と併せて総合的に評価することが重要です。
概念整理:
| 病態 | CVP値の変化 | 機序 |
|---|
| 循環血液量減少 | 低下 | 静脈還流量減少 → 右房圧低下 |
| 右心不全 | 上昇 | 右心ポンプ機能低下 → 血液うっ滞 → 右房圧上昇 |
| 心タンポナーデ | 上昇 | 心膜圧迫 → 拡張障害 → 右房圧上昇 |
一目で比較!:
CVP低下(循環血液量減少)vs CVP上昇(右心不全・心タンポナーデ)。CVP低下時は輸液負荷(輸液療法)の適応となり、CVP上昇時は利尿薬や心機能改善薬の適応となります。鑑別の鍵は、
頸静脈怒張 (Jugular Venous Distension) の有無と
心音(奔馬調律・減弱) の聴取です。
看護過程ポイント:
アセスメント:CVP低値に加え、
血圧低下、頻脈、尿量減少(