核心解説
この問題は、
肺動脈楔入圧 (PCWP: Pulmonary Capillary Wedge Pressure) の測定値が高値を示した場合の病態解釈を問うものです。
PCWPは左心房圧(Left Atrial Pressure)を間接的に反映し、正常範囲は約6~12mmHgです。20mmHgという高値は、左心系の圧負荷が増大していることを示しており、典型的には
最重要!左心不全 (Left-Sided Heart Failure) による左室拡張末期圧(LVEDP)上昇を疑う所見です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は⑤番の「左心不全」です。PCWPの上昇は、左心室が十分に血液を拍出できず、左心房や肺静脈に血液がうっ滞している状態を示します。これは左心不全の病態そのものです。左心不全では肺うっ血・肺水腫を引き起こすため、PCWPが上昇します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番の循環血液量減少はPCWP低下(低値を示す)が典型的であり、高値は矛盾します。
②番の右心不全は中心静脈圧(CVP)や右房圧が上昇しますが、PCWPは正常または正常下限を示すことが多く、直接の上昇原因とはなりません。
③番の肺塞栓症は急性右心負荷によりCVPが上昇しますが、PCWPは通常正常または低下します。
混同注意!肺塞栓症ではPCWP上昇は典型的ではありません。
④番の大動脈弁狭窄症は左室後負荷増大による求心性肥大をきたしますが、PCWPは狭窄が重症化し左室拡張能が低下するまで上昇しないことが多く、直接の関連は弱いです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
PCWPの測定は、
スワンガンツカテーテル (Swan-Ganz Catheter) を用いた肺動脈カテーテル検査で行われます。正常値6~12mmHgに対して、18mmHg以上は肺うっ血、25mmHg以上は肺水腫リスクが高まるとされます。一方、
中心静脈圧 (CVP) は右心系の圧を反映するため、右心不全評価に有用です。このように、PCWPとCVPを対比して覚えることが重要です。
概念整理: PCWP高値=左心不全(左房圧↑、肺うっ血)、PCWP低値=循環血液量減少(脱水・出血)。CVP高値=右心不全(体静脈うっ血)、CVP低値=循環血液量減少。
一目で比較!:
| 測定項目 | 正常値 | 上昇時の代表的病態 | 低下時の代表的病態 |
|---|
| PCWP | 6~12mmHg | 左心不全、僧帽弁狭窄症 | 循環血液量減少 |
| CVP | 4~8cmH₂O(約3~6mmHg) | 右心不全、心タンポナーデ | 循環血液量減少 |
看護過程ポイント: アセスメント段階で、PCWP高値の患者に対しては肺うっ血の徴候(呼吸困難、起坐呼吸、湿性ラ音、SpO₂低下)を重点的に観察します。看護診断としては「
非効果的呼吸パターン (Ineffective Breathing Pattern)」や「
心拍出量減少 (Decreased Cardiac Output)」が優先されます。計画では、安静の保持、酸素投与、利尿薬や血管拡張薬の投与とモニタリングが含まれます。
暗記のコツ: 「PCWPは左心房にWedge(楔)を打ち込むようにして測る」→「左心系の圧」と覚えましょう。数値は「6-12が正常、18越えたら肺うっ血注意」とゴロで暗記すると便利です。
国試頻出ポイント: 本テーマは「検査値の解釈」として頻出です。特にPCWP高値=左心不全、CVP高値=右心不全という対比は、事例問題で「バイタルサインとともにPCWPやCVPの数値を提示し、病態を問う」形式でよく出題されます。
出題パターン注意!: 単純知識問題(「PCWP高値の病態は?」)から発展して、事例問題(「急性心筋梗塞後、呼吸困難とPCWP上昇を認めた患者への看護介入は?」)への応用が可能です。病態生理と看護介入を結びつけて学習しましょう。