診療に伴う技術
問題
呼吸モニタリングにおいて、パルスオキシメータで測定される SpO2 が 92% であった。この値が示す病態として最も適切なのはどれか。
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1
軽度の低酸素血症である
✓ 正解
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2
正常範囲である
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3
高二酸化炭素血症である
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4
中等度の低酸素血症である
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5
高度の低酸素血症である
解説
動脈血酸素飽和度 (SaO2) の正常値は 95~100% である。SpO2 92% は軽度の低酸素血症に相当する。中等度は 85~90%、高度は 85% 未満とされる。SpO2 のみでは二酸化炭素の状態は評価できない。
詳細解説
核心解説
この問題は、パルスオキシメータ (Pulse Oximeter) で測定される 経皮的動脈血酸素飽和度 (SpO2) の値の解釈と、それが示す病態を問うています。SpO2は、血液中のヘモグロビンがどれだけ酸素と結合しているかの割合(酸素飽和度)を非侵襲的に測定するもので、呼吸機能と酸素化状態の評価に不可欠なモニタリング項目です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 動脈血酸素飽和度 (SaO2) の正常値は 95~100% です。SpO2 92% はこの正常範囲を下回っており、軽度の低酸素血症(酸素不足の状態)に該当します。低酸素血症の重症度分類では、一般的に SpO2 90~94% が軽度、85~90% が中等度、85%未満 が高度とされています。したがって、SpO2 92%は「軽度の低酸素血症」と判断するのが最も適切です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ②番の「正常範囲である」は誤りです。正常値は95%以上であるため、92%は正常範囲を逸脱しています。③番の「高二酸化炭素血症である」は、SpO2の値だけでは評価できません。高二酸化炭素血症(PaCO2上昇)は、動脈血ガス分析 (Arterial Blood Gas Analysis, ABG) のPaCO2値で判断する項目です。④番の「中等度の低酸素血症」は、基準値(85~90%)と混同した誤りです。⑤番の「高度の低酸素血症」は、より重症度の高い状態(85%未満)と誤認したものです。
関連概念の整理 (Related Concepts):
低酸素血症の評価には、SpO2の他に 動脈血酸素分圧 (PaO2) があります。SpO2 92%はおおよそ PaO2 60~65mmHg に相当し(酸素解離曲線の関係)、この領域は 酸素療法の開始基準 となる重要な閾値です。また、パルスオキシメータの測定値は、末梢循環不全、メトヘモグロビン血症、塗ったマニキュアなどで誤差が生じる可能性があることも押さえておきましょう。
概念整理: 低酸素血症 (Hypoxemia) の重症度分類(SpO2基準): 正常 (≧95%) → 軽度 (90-94%) → 中等度 (85-89%) → 高度 (
臨床シナリオ
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario):
あなたは一般病棟で働く看護師です。70代男性、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんが、肺炎で入院中です。夜間のラウンドで、患者さんが「息苦しい」と訴えました。バイタルサインを測定すると、呼吸数24回/分、心拍数98回/分、血圧140/80mmHg、SpO2 92%(酸素2L/分 鼻カニューレ投与中)でした。
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
最重要! まず患者さんを落ち着かせ、上半身を起こす(セミファーラー位またはファーラー位)よう促します。これにより横隔膜が下がり、呼吸補助筋が使いやすくなります。次に、呼吸パターン(努力呼吸の有無、陥没呼吸、呼気延長の有無)、意識レベル(JCS)、痰の性状と量、チアノーゼの有無を観察します。SpO2 92%は軽度低酸素血症ですが、COPD患者では二酸化炭素ナルコーシスのリスクがあるため、酸素流量をむやみに上げず、医師への報告と指示を仰ぎます。必要に応じて、動脈血ガス分析 (ABG) の準備をします。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):
混同注意! COPD患者への高濃度酸素投与は、低酸素換気応答の消失により呼吸抑制をきたす危険性があります。酸素投与は医師の指示に従い、目標SpO2(通常88~92%と低めに設定されることが多い)を確認しながら慎重に行います。また、パルスオキシメータのプローブは、患者の体動や末梢循環不良で測定エラーが生じることがあるため、波形(プレチスモグラフ)が安定していることを確認しましょう。
看護プロトコル: 観察項目: SpO2、呼吸数、呼吸パターン、意識レベル(JCS)、血圧・心拍数、体温、痰の性状・量、皮膚色(口唇・爪床のチアノーゼ)、胸部聴診(ラ音や wheezes の有無)。 報告基準(SBAR): S(状況)「A病棟のCOPD患者、Bさんが呼吸困難を訴えています」、B(背景)「肺炎で入院中、酸素2L投与中」、A(アセスメント)「SpO2 92%で軽度低酸素血症、呼吸数24回/分と頻呼吸、呼気延長あり」、R(推奨)「酸素流量の調整やABGのオーダーが必要と考えます」。 記録のポイント: 観察時間、バイタルサイン(SpO2含む)、実施したケア(体位変換、酸素流量調整など)、患者の反応、医師への報告内容と指示、経時的な変化。
先輩看護師の一言: 「国試ではSpO2の正常値や重症度分類がよく出ますが、現場では『この数値の背景にどんな病態があるのか』を常に考えましょう。COPD患者さんは『ちょっと息苦しい』という訴えが命に関わる急変のサインかもしれません。数値だけに惑わされず、『いつもと違う』を感じ取る観察眼を養ってくださいね!」
重要概念
- パルスオキシメータ — 動脈血酸素飽和度 (SpO2) を非侵襲的かつ連続的に測定する装置。プローブから発する2波長の光を用いて酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの比率を算出する。
- 低酸素血症 — 動脈血中の酸素分圧 (PaO2) または酸素飽和度 (SaO2/SpO2) が低下した状態。原因として、肺胞低換気、拡散障害、換気血流比不均等、右左シャントなどがある。
- 経皮的動脈血酸素飽和度 — パルスオキシメータで測定される酸素飽和度の推定値。動脈血ガス分析で測定されるSaO2と高い相関があるが、誤差要因(末梢循環不全、メトヘモグロビン、体動など)に注意が必要。
- 動脈血ガス分析 — 動脈血を採取し、pH、PaO2、PaCO2、HCO3-などを測定する検査。酸塩基平衡(アシドーシス/アルカローシス)と呼吸機能(酸素化能、換気能)を総合的に評価できるゴールドスタンダード。
- 酸素解離曲線 — 酸素分圧 (PaO2) と酸素飽和度 (SaO2) の関係を示すS字状の曲線。pH低下、PaCO2上昇、体温上昇、2,3-DPG増加により曲線は右方へシフトし(酸素が放出されやすい)、逆の条件で左方へシフトする(酸素がヘモグロビンに結合しやすい)。
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