核心解説
この問題は、
カルシウム (Calcium) の恒常性(ホメオスタシス)を調節する主要なホルモンの作用を問うています。カルシウム濃度は神経伝達、筋収縮、血液凝固など生体にとって極めて重要なため、厳密に調節されています。調節の中心となるのは、
副甲状腺ホルモン (Parathyroid Hormone: PTH)、
活性型ビタミンD (Active Vitamin D)、
カルシトニン (Calcitonin) の3つです。この3つの作用を整理して覚えることが、類似問題での失点を防ぐ鍵となります。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! ⑤「活性型ビタミンD - 腸管からのカルシウム吸収促進」が正解です。活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール)は、小腸粘膜細胞に作用し、カルシウム結合タンパク (Calbindin) の合成を促進することで、
腸管からのカルシウム吸収を促進し、血中カルシウム濃度を上昇させます。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①
混同注意! カルシトニンは、
甲状腺 (Thyroid Gland) の傍濾胞細胞 (C細胞) から分泌され、
腎臓でのカルシウム再吸収を抑制し、尿中へのカルシウム排泄を促進します。また、骨吸収も抑制するため、「再吸収促進」は誤りです。
② 副甲状腺ホルモン (PTH) は、血中カルシウム低下時に分泌され、作用として骨吸収促進、腎臓でのカルシウム再吸収促進、そして活性型ビタミンDの産生促進(→腸管吸収促進)の3つの作用で血中カルシウムを上昇させます。「腸管からの吸収抑制」は逆の作用です。
③ PTHは上記の通り、腎臓でのカルシウム再吸収を促進します。「再吸収抑制」は逆の作用です。
④ カルシトニンは、
骨からのカルシウム放出(骨吸収)を抑制することで血中カルシウムを低下させるホルモンです。「放出促進」は逆の作用です。
関連概念の整理 (Related Concepts):
| ホルモン | 分泌臓器 | 主な作用 | 血中Caへの影響 |
|---|
| 副甲状腺ホルモン (PTH) | 副甲状腺 | 骨吸収↑ 腎Ca再吸収↑ 活性型VD産生↑ | 上昇 |
| 活性型ビタミンD | 腎臓で活性化 | 腸管Ca吸収↑ 骨吸収↑ 腎Ca再吸収↑ | 上昇 |
| カルシトニン | 甲状腺(傍濾胞細胞) | 骨吸収↓ 腎Ca再吸収↓ | 低下 |
概念整理:
カルシウム代謝 (Calcium Metabolism) は、PTH・活性型ビタミンD(血中Ca上昇)とカルシトニン(血中Ca低下)の拮抗的調節によって恒常性が保たれます。PTHと活性型ビタミンDの作用は類似していますが、PTHは主に骨と腎臓、活性型ビタミンDは主に腸管に作用する点を押さえましょう。
一目で比較!: PTHの3つの作用(骨吸収促進・腎Ca再吸収促進・活性型VD産生促進)は「骨・腎・VD」と覚えましょう。カルシトニンの作用は「骨吸収抑制・腎Ca再吸収抑制」と、PTHと正反対です。
看護過程ポイント: 高カルシウム血症(例:悪性腫瘍の骨転移、副甲状腺機能亢進症)の患者では、倦怠感、筋力低下、便秘、不整脈などが生じます。低カルシウム血症(例:副甲状腺機能低下症、急性膵炎)では、テタニー(Chvostek徴候、Trousseau徴候)、しびれ、痙攣に注意します。
暗記のコツ: PTHの作用は「
ブタ(Ca↑)の3つの仕事」:
① 骨(骨を溶かしてCaを血中へ)
② 腎(腎臓でCaを再吸収)
③ 活性型ビタミンD(腸管でCa吸収促進)
と覚えましょう。カルシトニンは「Caトニン(止める)」で、Caを下げる方向に働くとイメージします。
国試頻出ポイント: この3ホルモンの作用は毎年のように出題されます。特にPTHとカルシトニンの作用を混同しないように注意しましょう。「PTHは上げる、カルシトニンは下げる」という方向性と、それぞれの臓器への作用をセットで暗記しておくと確実です。
出題パターン注意!: 単純な作用の組み合わせ問題から、事例問題(「副甲状腺機能亢進症の患者にみられる所候は?」「骨粗鬆症治療薬としてカルシトニンが投与される根拠は?」)へと発展します。病態と治療薬を結びつけて学習しましょう。