核心解説
この問題は、血糖値の調節に関わる主要なホルモンの作用を正しく理解しているかを問うています。特に、
インスリン (Insulin) の役割は看護師国家試験でも頻出であり、その作用機序を正確に把握することが鍵となります。
血糖値が上昇すると、
膵臓ランゲルハンス島のβ細胞 (Pancreatic Beta Cells) からインスリンが分泌されます。インスリンの主な作用は以下の3つです。
1.
末梢組織(骨格筋・脂肪組織)でのグルコース取り込み促進: 細胞膜上の
GLUT4 (Glucose Transporter 4) を細胞表面に移動させ、血液中のグルコースを細胞内へ取り込ませることで血糖値を下げます。
2.
肝臓でのグリコーゲン合成促進: 肝細胞でグルコースからグリコーゲンを合成する経路を活性化し、血糖を貯蔵します。
3.
肝臓での糖新生抑制: アミノ酸や乳酸などから新たにグルコースを作り出す経路を抑えます。
したがって、インスリンが「末梢組織での糖取り込みを促進する」という選択肢①が正解です。また、②アドレナリン、③コルチゾール、④グルカゴンはいずれも血糖値を上昇させるホルモン(インスリン拮抗ホルモン)であることも併せて覚えましょう。
正解の根拠 (Answer Rationale)インスリンは血糖降下ホルモンであり、
骨格筋や脂肪組織でのグルコース取り込み促進 がその中心的な機序です。
最重要! この作用が障害されることが
糖尿病 (Diabetes Mellitus) の病態の本質です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)②
混同注意! アドレナリン (Adrenaline) は交感神経刺激により
グリコーゲン分解 (Glycogenolysis) を促進し血糖を上昇させるため、インスリン分泌抑制は副次的な作用であり、正しい機序の説明ではありません。
③ コルチゾール (Cortisol) は
糖新生促進 (Gluconeogenesis) により血糖を上昇させるため、選択肢の「糖新生抑制」は逆の作用です。
④ グルカゴン (Glucagon) は
グリコーゲン分解促進 により血糖を上昇させるホルモンであり、末梢組織での糖取り込み促進作用はありません。
⑤ インスリンの作用は
肝臓でのグリコーゲン合成促進 であり、分解促進は逆の作用です。
概念整理: 血糖調節ホルモンは、
インスリン(唯一の降血糖)と、
グルカゴン・アドレナリン・コルチゾール・成長ホルモン(昇血糖・インスリン拮抗ホルモン)に大別されます。それぞれの作用点(肝臓・末梢組織)を整理しましょう。
一目で比較!:
| ホルモン | 分泌臓器 | 血糖への作用 | 主な機序 |
|---|
| インスリン | 膵臓β細胞 | 低下 | 末梢糖取り込み促進・グリコーゲン合成促進・糖新生抑制 |
| グルカゴン | 膵臓α細胞 | 上昇 | グリコーゲン分解促進・糖新生促進 |
| アドレナリン | 副腎髄質 | 上昇 | グリコーゲン分解促進・グルカゴン分泌促進 |
| コルチゾール | 副腎皮質 | 上昇 | 糖新生促進・末梢糖利用抑制 |
看護過程ポイント:
アセスメントでは、糖尿病患者の血糖値変動の原因を考える際、単に食事量だけでなく、ストレスや感染症(アドレナリン・コルチゾール分泌亢進)や薬剤(ステロイド投与など)の影響も考慮します。
計画・実施では、インスリン投与後の低血糖症状の観察(冷汗・振戦・意識障害)が重要です。
暗記のコツ: 「インスリンは
イ い
ン い
ス ポット
リ ン」→「入れる(糖を細胞内に)・貯める(グリコーゲンとして)・止める(糖新生を)」と覚えましょう。一方、拮抗ホルモンは「出してくる(グリコーゲン分解)・作る(糖新生)」で血糖を上げます。
国試頻出ポイント: ①インスリンの作用と分泌部位、②糖尿病治療薬(経口薬・注射薬)の作用機序と関連づけた出題、③低血糖症状とその対処法(ブドウ糖の経口投与・グルカゴン注射)、④インスリン拮抗ホルモンの種類とストレス時の血糖上昇機序、が頻出です。
出題パターン注意!: 単純な「血糖を下げるホルモンはどれか」から、「術後患者で血糖値が上昇した理由として考えられるホルモンはどれか」「低血糖時に分泌され、血糖を回復させるホルモンはどれか」といった状況設定問題に発展します。