核心解説
この問題は、成人の持続点滴静脈内注射(Continuous Intravenous Infusion)における基本的な手技の適切さを問うています。看護技術の基本は、
患者の安全確保と
確実な薬液投与、そして
患者の苦痛軽減です。特に、穿刺部位の選択と固定は、点滴ルートのトラブル(血管外漏出、静脈炎、ルートの閉塞・抜去)を予防する上で極めて重要です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ③番の「刺入部は関節などの活動を妨げる部位を避ける」が適切です。関節部に穿刺すると、患者の動きによってカテーテルが血管壁を刺激したり、ルートが屈曲して輸液が停止したり、最悪の場合はカテーテルが抜けてしまうリスクがあります。また、患者は痛みや違和感から無意識に動きを制限し、安静が強制されることで筋萎縮や拘縮のリスクも高まります。したがって、
手背、前腕などの平坦で関節を跨がない部位を選択するのが基本です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
点滴筒には1/5の薬液を満たす。
混同注意! 点滴筒(ドリップチャンバー)内の液量は、エアーが混入しないようにするため、通常
1/2〜1/3程度満たすのが適切です。1/5では少なすぎて、輸液バッグ交換時に空気が患者側に流れ込むリスクが高まります。
②
刺入部が見えないように固定する。
これは誤りです。穿刺部位は常に観察できるように、
透明なドレッシング材(テガダームなど)で固定します。これは、穿刺部の発赤(静脈炎のサイン)、腫脹(血管外漏出のサイン)、カテーテルのズレを早期発見するために必須の感染対策・安全管理です。
④
液面が刺入部から30cmの高さになるように輸液バッグをかける。
これは誤りです。輸液バッグの高さは、十分な落差を確保し、確実な自然滴下を得るために、通常
刺入部から約100cm(1m)の高さに吊り下げます。30cmでは落差が不足し、静脈圧に負けて薬液が滴下しない、あるいは逆流を起こす危険があります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
持続点滴の管理では、
滴下速度の計算(成人で1mL=20滴、小児で1mL=60滴)と、患者の状態に応じた速度調整も重要です。また、穿刺部位の選択肢として、成人では
肘窩も用いられますが、関節であるため屈曲に注意し、必ず
アームボード(固定板)を使用して固定することが原則です。高齢者や皮膚の脆弱な患者では、テープ固定による皮膚剥離(テープ障害)の予防も忘れてはなりません。
概念整理: 持続点滴静脈内注射は、血管内に持続的に薬液・輸液を投与する方法。基本は「穿刺部位の選択(関節を避ける)」「点滴筒の液量(1/2〜1/3)」「固定(透明ドレッシングで観察可能に)」「高さ(約100cm)」の4要素を確実に守ること。
一目で比較!:
| 項目 | 適切な方法 | 誤った方法 |
|---|
| 点滴筒液量 | 1/2〜1/3 | 1/5 |
| 固定方法 | 透明ドレッシングで観察可能 | 見えないように隠す |
| バッグ高さ | 約100cm | 30cm |
| 穿刺部位 | 関節を避ける(手背・前腕) | 関節部(肘・手首) |
看護過程ポイント: 【アセスメント】穿刺部位の皮膚状態(発赤・腫脹・疼痛・熱感)とカテーテルの固定状態を経時的に評価。【看護診断】「非効果的な末梢組織灌流(リスク状態)」や「感染リスク状態」が関連。【計画・実施】ルートの屈曲・閉塞・血管外漏出を予防するための観察計画と、患者への自己抜去予防のための説明(例:「点滴が痛くなったり、漏れたりしたらすぐにナースコールを押してください」)。【評価】滴下速度の適正、穿刺部の異常の有無。
暗記のコツ: 「点滴の高さは『100(センチ)』」と「点滴筒は『2/3〜1/2』」はセットで覚える。「100cm = 1m = 大きな落差」のイメージ。点滴筒は「半分より少し多いくらい(2/3)」と「半分くらい(1/2)」の2パターンを、やや多めの方がエアー混入リスクが低いと理解。
国試頻出ポイント: 持続点滴の基本手技は、基礎看護技術の分野で毎年頻出。特に「穿刺部位の選択理由」「点滴筒の液量」「滴下速度の計算」「ルート内のエアー混入防止」の4点はセットで出題される。事例問題では「患者が点滴ルートを引っ張ってしまった場合の対応」や「血管外漏出時の観察項目」もよく問われる。
出題パターン注意!: 「適切なのはどれか」と単純な知識を問う問題の他に、「手術後の患者への持続点滴で、看護師が最初に確認すべき項目はどれか」のような状況設定問題に発展する。単なる暗記ではなく、各手技の根拠(なぜその高さ・液量が必要か)を論理的に理解しておくことが、応用問題対応の鍵となる。