核心解説
この問題は、
自閉症スペクトラム障害 (Autism Spectrum Disorder, ASD) の中核症状を正しく理解しているかを問うています。
ASDは「社会的コミュニケーションと相互関係の障害」と「限定された反復的な行動・興味・活動」の2つの中核症状で定義される神経発達症群です。選択肢の中から、この中核症状に合致するものを2つ選ぶ必要があります。
1.
核心概念の分析 (Key Concept):
自閉症スペクトラム障害 (ASD) の診断基準 (DSM-5) では、①社会的コミュニケーションと社会的相互関係の持続的な障害、②限定された反復的な行動様式、興味、活動の2領域が必須です。この問題は、特に①の「非言語的コミュニケーションの障害」と、②の「習慣や儀式へのこだわり」を正しく識別できるかが鍵となります。
混同注意! 学習障害 (Learning Disorder) や注意欠如・多動症 (ADHD) の症状と混同しないようにしましょう。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 正解は④「習慣へのかたくななこだわりがある」と⑤「非言語的コミュニケーションの障害がある」の2つです。④は中核症状の「限定された反復的な行動」に該当し、例えば毎日同じ順序で服を着る、同じルートで通学するなどの行動パターンへの固執を指します。⑤は「社会的コミュニケーションの障害」に該当し、アイコンタクトが取れない、表情やジェスチャーを適切に使えない、相手の表情を読み取れないなどの特徴を示します。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①「運動性チックが出現する」は、チック症群やトゥレット障害の中核症状であり、ASDの診断基準には含まれません。ただし、ASDにチック症が併存することはあります。
混同注意! ②「計算の習得が困難である」は、限局性学習症 (SLD) の「算数障害 (Dyscalculia)」の特徴です。ASDでは、計算能力自体は正常であることも多く、むしろ記憶力に優れている場合もあります。
混同注意! ③「不注意による間違いが多い」は、注意欠如・多動症 (ADHD) の「不注意」の症状です。ASDでも不注意傾向が見られることがありますが、それは中核症状ではなく、注意の切り替えの困難さやこだわりから生じることが多いです。ADHDの中核症状として捉えるべきです。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): ASDとADHD、限局性学習症 (SLD) は併存することが多く、鑑別が難しい場合があります。ASDの社会的コミュニケーション障害は「相互的」な関係の障害であるのに対し、ADHDは「衝動性」や「多動性」による対人トラブルが目立ちます。また、ASDの「こだわり」は「限局的で反復的な興味」であるのに対し、強迫症 (OCD) の「強迫行為」は本人が苦痛を感じることが多い点が異なります。
概念整理:
自閉症スペクトラム障害 (ASD) の中核症状は以下の2軸です。
| 領域 | 具体例 | 選択肢対応 |
| ①社会的コミュニケーションと相互関係の障害 | アイコンタクトの回避、表情が乏しい、共感の困難、一方的な会話、比喩や冗談の理解困難 | ⑤非言語的コミュニケーションの障害 |
| ②限定された反復的な行動・興味・活動 | 特定の物事への強いこだわり、儀式的な習慣、反復的な運動、感覚過敏・鈍麻 | ④習慣へのかたくななこだわり |
一目で比較!: 混同しやすい発達障害の鑑別ポイント
| 障害 | 中核症状 |
| 自閉症スペクトラム障害 (ASD) | 対人相互反応の障害 + こだわり・反復行動 |
| 注意欠如・多動症 (ADHD) | 不注意・多動性・衝動性 |
| 限局性学習症 (SLD) | 特定の学習領域(読み、書き、計算)の習得困難 |
| トゥレット障害 | 複数の運動性チックと音声チック |
看護過程ポイント: ASDの患者への看護では、まず患者のこだわりや習慣を否定せずに受け入れ、安心できる環境を提供することが重要です。非言語的コミュニケーションが苦手な患者には、言葉での明確な指示や、絵カード (PECS) などの視覚的支援を用いたコミュニケーションを図ります。安全な環境整備と、予測可能なルーティン(日課表の掲示など)を提供することで、不安やパニックを予防します。
暗記のコツ: ASDの「S」は「Social(社会性)」と「Stereotyped(反復・常同)」と覚えましょう!「Social」は「社会的コミュニケーションの障害」→「非言語的コミュニケーションの障害」を含む。「Stereotyped」は「限定された反復行動」→「習慣へのかたくななこだわり」と結びつきます。
国試頻出ポイント: ASDの診断基準(DSM-5)、中核症状、ADHDやSLDとの鑑別、早期発見と療育の重要性が頻出です。特に「非言語的コミュニケーション」と「こだわり」は、事例問題で「患者の具体的な行動」として提示されることが多いので、症状と診断名を結びつけて覚えましょう。
出題パターン注意!: 「ASDの小児患者でみられる行動として適切なのはどれか」のような単純な知識問題に加え、「小児科外来で、3歳児の患者が言葉の遅れと一人遊びが多いことで相談に来た。看護師の対応として適切なのはどれか」のような発達支援の状況設定問題に発展します。発達段階に応じた看護介入も併せて学習しておきましょう。