核心解説
この問題は、末梢神経麻痺における特徴的な手指変形と、その原因となる神経を問うています。
下垂手 (Wrist Drop) は、手関節や手指を背屈(伸展)させる筋群の麻痺により、手首が重力に逆らえず垂れ下がった状態です。この運動を支配する神経は
橈骨神経 (Radial Nerve) です。
橈骨神経は上腕の後方を通り、前腕の伸筋群を支配します。したがって、この神経が麻痺すると、手関節と手指の伸展ができなくなり、下垂手を生じます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 選択肢③の
橈骨神経麻痺 (Radial Nerve Palsy) が正解です。橈骨神経は、上腕骨骨幹部骨折や「Saturday night palsy」(長時間の圧迫による麻痺)などで損傷を受けると、支配筋である手関節・手指伸筋群(総指伸筋、長母指伸筋など)の麻痺を生じ、特徴的な
下垂手 (Wrist Drop) の姿勢を呈します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 各末梢神経麻痺の特徴的な手指変形をセットで覚えましょう。
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①番 尺骨神経麻痺 (Ulnar Nerve Palsy) →
鷲手 (Claw Hand)。環指・小指のMP関節過伸展、PIP・DIP関節屈曲が特徴です。
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②番 正中神経麻痺 (Median Nerve Palsy) →
猿手 (Ape Hand / Simian Hand)。母指の対立運動障害と母指球筋萎縮により、手掌が平坦になります。
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④番 腓骨神経麻痺 (Peroneal Nerve Palsy) →
下垂足 (Foot Drop)。足関節の背屈ができず、つま先が下がった状態です。上肢と下肢で同様の「下垂」現象が起きますが、部位と神経が異なります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
末梢神経麻痺は、損傷部位によって症状が異なります。橈骨神経は上腕の「橈骨神経溝」で損傷を受けやすいことを覚えておきましょう。また、整形外科の骨折(特に上腕骨骨幹部骨折)との関連や、手術時の神経圧迫予防としての体位管理(ドレープや固定による圧迫防止)も重要な看護ポイントです。
概念整理
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下垂手 (Wrist Drop): 手関節背屈不能。原因神経 →
橈骨神経 (Radial Nerve)。
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鷲手 (Claw Hand): 環指・小指の変形。原因神経 →
尺骨神経 (Ulnar Nerve)。
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猿手 (Ape Hand): 母指対立不能。原因神経 →
正中神経 (Median Nerve)。
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下垂足 (Foot Drop): 足関節背屈不能。原因神経 →
総腓骨神経 (Common Peroneal Nerve)。
一目で比較!
| 神経名 | 主な症状 | 特徴的変形 |
| 橈骨神経 | 手関節・手指伸展障害 | 下垂手 |
| 正中神経 | 母指対立障害・手掌感覚障害 | 猿手 |
| 尺骨神経 | 小指側感覚障害・手指内転外転障害 | 鷲手 |
| 総腓骨神経 | 足関節背屈・外反障害 | 下垂足 |
看護過程ポイント
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アセスメント: 筋力評価(徒手筋力テスト: MMT)と感覚評価(触覚・痛覚)を実施し、麻痺の範囲と程度を正確に把握する。
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看護診断: 「末梢神経損傷に関連した身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)」、「知覚・運動障害に関連した転倒リスク状態 (Risk for Falls)」。
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計画・介入: 下垂手に対する
シーネ固定や装具療法 の管理。関節拘縮予防のための
関節可動域訓練 (ROM訓練)。知覚鈍麻部位の保護(やけど・外傷予防)。
暗記のコツ
「橈骨(とうこつ)」という名前を覚えましょう。「橈」という字には「手こずる」という意味はありませんが、
「橈骨神経が麻痺すると手(手首)を持ち上げるのに手こずる」 とイメージすると覚えやすいです。別の覚え方として、
「橈(わ)」の字が「手」に似ている → 手の運動(伸展)と関連付ける方法もあります。
国試頻出ポイント
国試では、各末梢神経麻痺の「神経名」と「症状」の組み合わせが頻出です。特に、
下垂手 (橈骨神経) と
下垂足 (総腓骨神経) の混同、
鷲手 (尺骨神経) と
猿手 (正中神経) の混同が狙われやすいです。四肢の各神経の走行と支配領域を概略図で確認しておくと良いでしょう。
出題パターン注意!
単純な「原因はどれか」という知識問題だけでなく、事例問題として「骨折後の患者に生じた症状から、損傷した神経を問う」形や、「術後、下垂手を予防するための看護ケア」を問う問題に発展する可能性があります。例えば、上腕骨骨折後のギプス固定中に生じた場合は、橈骨神経の圧迫による麻痺を疑うことが重要です。