核心解説
この問題は、
肘関節 (Elbow Joint) の運動に関わる筋の作用を問う、基礎的な解剖学の問題です。肘関節の伸展(伸ばす運動)と屈曲(曲げる運動)を司る筋を正確に把握することが求められます。運動器系の看護では、関節可動域訓練 (Range of Motion, ROM訓練) や筋力評価、拘縮予防の計画を立てる上で、このような基本的な筋の起始・停止・作用の理解が不可欠です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
肘関節の伸展(伸ばす)作用を持つのは
上腕三頭筋 (Triceps Brachii Muscle) です。
最重要! 上腕三頭筋は上腕後面に位置し、その収縮により肘関節が伸展します。日常動作では、物を押したり、手をついて立ち上がる動作に貢献します。看護場面では、寝返りや車椅子への移乗動作を評価する際に、この筋力が重要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ③番の上腕三頭筋が正解です。①番の
三角筋 (Deltoid Muscle) は肩関節の外転作用が主で、肘関節の運動には関与しません。②番の
大胸筋 (Pectoralis Major Muscle) は肩関節の内転・内旋作用が主です。④番の
上腕二頭筋 (Biceps Brachii Muscle) は肘関節の屈曲(曲げる)作用が主であり、拮抗筋の関係を理解することがポイントです。上腕二頭筋と上腕三頭筋は互いに拮抗して肘関節の円滑な運動を可能にしています。
関連概念の整理 (Related Concepts)
肘関節の運動には、屈曲と伸展以外にも回内・回外(前腕のひねり)があります。回内・回外には、
円回内筋 (Pronator Teres) や
回外筋 (Supinator) などが関与します。また、上腕二頭筋は肘関節の屈筋であると同時に、強力な回外筋でもある点も合わせて覚えておくと、国試の応用問題に対応できます。
概念整理
肘関節の運動と主な筋:
| 運動 | 主な筋 | 看護上の関連動作 |
|---|
| 伸展(伸ばす) | 上腕三頭筋 | 手をつく、物を押す |
| 屈曲(曲げる) | 上腕二頭筋、腕橈骨筋 | 物を引く、食事動作 |
一目で比較!
上腕二頭筋(屈筋) vs 上腕三頭筋(伸筋):
| 特徴 | 上腕二頭筋 | 上腕三頭筋 |
|---|
| 位置 | 上腕前面 | 上腕後面 |
| 主な作用 | 肘関節の屈曲・前腕の回外 | 肘関節の伸展 |
| 拮抗関係 | 三頭筋に対して拮抗筋 | 二頭筋に対して拮抗筋 |
看護過程ポイント
アセスメント:肘関節の可動域制限や筋力低下は、ADL (Activities of Daily Living) の自立度に大きく影響します。特に上腕三頭筋の筋力低下は、ベッドからの起き上がりや車椅子への移乗動作の困難に直結するため、注意深く評価します。
計画・介入:関節拘縮予防のためのROM訓練や、筋力強化訓練(例:セラバンドを使用した伸展運動)を計画します。
暗記のコツ
「肘を伸ばすのは『三頭筋』、肘を曲げるのは『二頭筋』」とゴロで覚えましょう。「曲げる(Flexion)=二(Bi)、伸ばす(Extension)=三(Tri)」と、名前の数字と作用を結びつけると記憶に定着しやすいです。
国試頻出ポイント
解剖学の基本問題として頻出です。単に筋名と作用を問うだけでなく、「歩行時の上肢の振り」「松葉杖使用時の筋活動」「脳血管障害後の麻痺」などの状況設定問題に発展することもあります。拮抗筋のペア(二頭筋 vs 三頭筋、大腿四頭筋 vs ハムストリングスなど)でセットで覚えましょう。
出題パターン注意!
単純な知識問題:「肘関節を伸展させる筋はどれか」から、応用問題へ発展します。例えば、「左片麻痺患者の歩行訓練において、肘関節の伸展筋力強化を目的とする運動はどれか」という形で出題されることがあります。基礎知識を確実にし、臨床場面と結びつけて考えられるようにしましょう。