核心解説
この問題は、
食中毒 (Food Poisoning)の原因菌とその汚染源に関する知識を問うています。特に、「食品を扱う人の化膿した創」が直接的な汚染源となる細菌を特定することが鍵です。ヒトの皮膚や鼻腔に常在し、手指の化膿創から食品に付着して毒素を産生する菌は、
黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus)です。本菌は食品中で増殖する際に
エンテロトキシン (Enterotoxin)という耐熱性の毒素を産生し、これが食中毒の原因となります。この毒素は加熱しても分解されにくいため、食品の再加熱では予防が難しい点が特徴です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は③
黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus)です。
最重要!黄色ブドウ球菌はヒトの
皮膚、鼻腔、咽頭に高率で常在しており、特に手指の
化膿創 (Purulent Wound)や
おでき (Furuncle)に大量に存在します。食品従事者がこの化膿創から手指を介して食品を汚染し、食品中で増殖・毒素産生が起こります。食後1~6時間(平均3時間)の短い潜伏期で、吐き気、激しい嘔吐、腹痛が主症状です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
腸炎ビブリオ (Vibrio parahaemolyticus):
混同注意!海水中に生息する好塩菌で、汚染源は
魚介類(特に生の魚介類の刺身や寿司)です。ヒトの創傷とは無関係です。
②
ボツリヌス菌 (Clostridium botulinum):
混同注意!嫌気性菌で、汚染源は
真空パック食品、缶詰、瓶詰などの密封・低酸素環境の食品です。化膿創からの汚染はほとんどなく、神経毒素による麻痺症状(複視、構音障害、呼吸筋麻痺)が特徴です。
④
サルモネラ属菌 (Salmonella spp.):
混同注意!汚染源は
鶏卵、鶏肉、爬虫類などで、主に動物の腸管内が保菌源です。ヒトの創傷からの汚染は一般的ではありません。潜伏期は12~48時間で、下痢・発熱・腹痛が主症状です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
黄色ブドウ球菌食中毒と類似する
ウエルシュ菌 (Clostridium perfringens)食中毒も、加熱調理後の食品の保温不十分が原因で起こりますが、ウエルシュ菌は土壌やヒトの腸管に常在し、創傷感染とは関連が薄いです。また、黄色ブドウ球菌の
毒素型食中毒に対して、サルモネラは
感染型食中毒です。この「毒素型 vs 感染型」の分類も国試では頻出です。
概念整理: 黄色ブドウ球菌食中毒は「毒素型食中毒」の代表例。ヒトの皮膚・鼻腔に常在し、化膿創からの手指を介した食品汚染が主な感染経路。耐熱性エンテロトキシンを産生するため、加熱調理後でも毒素は残存する。潜伏期が短く(1~6時間)、嘔吐が顕著。
一目で比較!:
| 原因菌 | 主な汚染源 | 型 | 潜伏期 | 主症状 |
|---|
| 黄色ブドウ球菌 | ヒトの化膿創・手指 | 毒素型 | 1~6時間(短い) | 嘔吐・腹痛 |
| 腸炎ビブリオ | 魚介類 | 感染型 | 8~24時間 | 下痢・腹痛・発熱 |
| サルモネラ属菌 | 鶏卵・鶏肉 | 感染型 | 12~48時間 | 下痢・発熱・腹痛 |
| ボツリヌス菌 | 真空パック・缶詰 | 毒素型 | 12~36時間 | 神経麻痺症状 |
看護過程ポイント:
アセスメント:食中毒患者の問診では「発症前12~72時間の食事内容」「集団発生の有無」「食品取扱者の健康状態(特に創傷の有無)」を確認。黄色ブドウ球菌が疑われる場合、食品従事者の手指や創部の培養検査が疫学調査で重要。
看護介入:嘔吐が激しい場合、誤嚥予防のための体位管理(側臥位)、脱水予防のための輸液療法 (Fluid Therapy)の準備。検体(吐物、残存食品)の採取と保健所への届け出も看護師の役割の一部。
暗記のコツ: 「黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)」は「肌(スキン)に黄色いブドウ」と覚えましょう。「肌(皮膚)に常在 → 化膿創から手指を介して食品へ」。潜伏期が短いことから「食べてすぐ吐くのが黄色ブドウ球菌」とイメージすると良いです。
国試頻出ポイント: 原因菌と汚染源の組み合わせは毎年必出です。特に「化膿創=黄色ブドウ球菌」「魚介類=腸炎ビブリオ」「鶏卵=サルモネラ」「缶詰=ボツリヌス菌」は確実に押さえておきましょう。
出題パターン注意!: 単純な知識問題として「化膿創と関連する菌はどれか」だけでなく、事例問題で「調理従事者が手指に化膿創があった」「集団嘔吐が発生」という状況から原因菌を特定させる問題や、さらに発展して「この菌の毒素は加熱に強いため、どのような予防策が有効か」を問う問題も頻出です。