核心解説
この問題は、
一次救命処置 (Basic Life Support, BLS) の中でも最も基本的かつ重要な技術である
胸骨圧迫 (Chest Compression)の適切な圧迫速度を問うています。胸骨圧迫の質は、患者の
心拍出量 (Cardiac Output)と冠動脈灌流圧 (Coronary Perfusion Pressure) に直結するため、国際的なガイドライン(AHA, JRC)で推奨される範囲を正確に理解することが必須です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 成人に対する胸骨圧迫の速さは、
1分間に100〜120回 と定められています。このテンポは、圧迫と解除(胸壁の完全なリコイル)のバランスを最適化し、十分な心拍出量と冠動脈灌流を維持するために科学的に導き出された数値です。100回/分未満では心拍出量が不十分となり、120回/分を超えると圧迫深度が浅くなりやすく、心拍出量の低下につながります。ガイドラインでは、テンポ(速度)と同時に、圧迫深度(約5cm以上6cm未満)と胸壁の完全なリコイルの確保も強調されています。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①番の
40〜60回/分 は、かつて用いられていた人工呼吸の回数に近く、胸骨圧迫としては明らかに遅すぎます。心肺蘇生中の血流を維持できません。
②番の
70〜90回/分 は、成人の安静時心拍数に近い値ですが、胸骨圧迫中の心拍出量は自発心拍よりも低いため、これでは十分な灌流を得られません。
④番の
130〜150回/分 は、速すぎるテンポです。この速度では圧迫深度が保てず、また胸壁のリコイルが不完全になりやすく、かえって心拍出量が低下します。初心者が慌てて圧迫すると陥りやすいミスです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
胸骨圧迫の「質」を決める3要素は「テンポ (Rate)」「深度 (Depth)」「リコイル (Recoil)」です。成人では「テンポ100〜120回/分、深度5〜6cm、リコイル完全」が基準です。また、BLSにおける胸骨圧迫と人工呼吸の比は、医療従事者・非医療従事者ともに
30:2 です。気管挿管後は、連続圧迫(約100〜120回/分)と1分間に約10回の人工呼吸(6秒に1回)に変更される点も併せて覚えておきましょう。
概念整理: BLSにおける胸骨圧迫の「質」は、心拍出量と冠動脈灌流圧に直結する。適切なテンポ(100〜120回/分)と深度(5〜6cm)、そして完全な胸壁リコイルが生命予後を改善する。
一目で比較!:
| 項目 | 成人 (BLS) | 小児 (1歳〜思春期) | 乳児 (1歳未満) |
|---|
| 胸骨圧迫速度 | 100〜120回/分 | 100〜120回/分 | 100〜120回/分 |
| 胸骨圧迫深度 | 約5〜6cm | 胸の厚さの約1/3 (約5cm) | 胸の厚さの約1/3 (約4cm) |
| 圧迫:人工呼吸比 | 30:2 (1人または2人) | 30:2 (1人) / 15:2 (2人) | 30:2 (1人) / 15:2 (2人) |
看護過程ポイント: アセスメントでは「患者に脈拍がない(無脈拍)」という所見がBLS開始のトリガーとなる。介入は「C-A-B(循環→気道→呼吸)」の順で、まず質の高い胸骨圧迫を開始する。評価は「2分ごと(5サイクルごと)の脈拍確認」と「圧迫のテンポ・深度・リコイルの継続的なセルフチェック」が重要。
暗記のコツ: 「100〜120は、ビートのテンポ!『行け行けゴーゴー』や『スターウォーズの帝国のマーチ』のテンポが約120回/分と言われています。実際に心の中で歌いながら圧迫してみると、適切なテンポを体感しやすいですよ。」
国試頻出ポイント: BLSの胸骨圧迫速度は毎年頻出の基礎知識です。単純な数値の暗記だけでなく、「なぜ100〜120回/分なのか(遅すぎると血流不足、速すぎると深度不足)」という根拠を問う問題や、小児との比較、AEDの使用手順と組み合わせた出題がよく見られます。
出題パターン注意!: 単純な知識問題(「速さはどれか」)から、事例問題へ発展します。「心停止患者を発見した。胸骨圧迫を開始する。このときの速さとして適切なのはどれか。」という形で出題されるため、数値を確実に覚えておきましょう。