核心解説
この問題は、成人の気道異物除去(Airway Foreign Body Removal)に特化した処置の知識を問うています。気道が異物により完全閉塞した場合、速やかに異物を除去しなければ窒息(Asphyxia)に至ります。ここでは、
腹部圧迫法(Heimlich法 / Abdominal Thrusts)が成人の意識がある場合の第一選択処置であることを理解する必要があります。
最重要! 気道異物除去と、心停止時の心肺蘇生法(CPR)の各手技を明確に区別することが、国試で非常に頻出のポイントです。
正解の根拠(Answer Rationale)
正解は
④:腹部圧迫法〈Heimlich〈ハイムリック〉法〉 です。
腹部圧迫法(Abdominal Thrusts)は、患者の背後から腹部(みぞおち)を上方に突き上げることで、横隔膜を押し上げ、肺から強制的に空気を排出させ、その圧力で気道内の異物を押し出す手技です。日本赤十字社やAHA(American Heart Association)のガイドラインでは、成人の意識がある気道異物閉塞時の第一選択として推奨されています。
誤答の分析(Distractor Analysis)
混同注意!
①
胸骨圧迫(Chest Compressions):これは心停止(Cardiac Arrest)時に心拍出量(Cardiac Output)を維持するための手技であり、気道異物除去が目的ではありません。気道異物で意識を失った傷病者には胸骨圧迫に類似した動作が用いられる場合もありますが、これは「胸部突き上げ法(Chest Thrusts)」であり、通常のCPRにおける胸骨圧迫とは目的が異なります。本選択肢は単に「胸骨圧迫」とされているため誤答です。
②
人工呼吸(Rescue Breathing):これは呼吸がない(無呼吸)傷病者に対して肺に酸素を送り込む手技です。気道が異物で完全閉塞している状態では空気が肺に入らず無効であり、まず異物除去が優先されます。
③
頭部後屈顎先挙上法(Head Tilt-Chin Lift Maneuver):これは意識がない傷病者の気道確保(Airway Management)を行う手技です。舌根沈下による閉塞を解除するものであり、異物そのものを除去する方法ではありません。
関連概念の整理(Related Concepts)
- 気道異物除去の基本手技:成人・小児(1歳以上)には
腹部圧迫法(Heimlich法) を実施します。
-
禁忌の理解! 妊婦 や
乳児(1歳未満)、
肥満者 には腹部圧迫法は禁忌であり、代わりに
胸部突き上げ法(Chest Thrusts) または
背部叩打法(Back Blows) を実施します。
- 意識を失った場合の対応:傷病者が意識を失ったら、直ちに119番通報とAEDの手配を行い、心肺蘇生法(CPR)に移行します。この際、胸骨圧迫の前に口腔内の異物確認(指でのかき出しは推奨されない場合があるため要注意)を行います。
概念整理:気道閉塞の原因は、異物、舌根沈下、喉頭浮腫、気道分泌物など多岐にわたります。異物除去の手技は原因によって異なり、意識レベルによっても対応が変わります。成人・意識あり → 腹部圧迫法(Heimlich法)、成人・意識なし → CPR(胸部突き上げ法を含む)、乳児 → 背部叩打法と胸部突き上げ法の組み合わせ。
一目で比較!
| 手技 | 目的 | 対象 |
| 腹部圧迫法(Heimlich法) | 気道異物除去 | 成人・1歳以上の小児(意識あり) |
| 胸骨圧迫(CPR) | 心拍出量維持 | 心停止患者(全年代) |
| 頭部後屈顎先挙上法 | 気道確保(舌根沈下解除) | 意識喪失患者 |
| 人工呼吸 | 酸素供給 | 呼吸停止・不全患者 |
看護過程ポイント:アセスメントでは「会話ができるか」「咳嗽(Cough)は有効か」「チアノーゼ(Cyanosis)の有無」「意識レベル(JCS/GCS)」を迅速に評価。看護診断例:「気道浄化障害(Ineffective Airway Clearance)」または「窒息リスク状態(Risk for Suffocation)」。看護介入はABCアプローチの「A(Airway)」の最優先対応。
暗記のコツ:Heimlich法は「お腹をハイムリック(背後から抱えて突き上げる)」と覚えましょう。妊婦・乳児は「お腹は危険、胸を圧迫(Chest Thrusts)」と対比して記憶。
国試頻出ポイント:このテーマは必修問題および一般問題で頻出です。特に「腹部圧迫法の適応対象」と「禁忌対象(妊婦・乳児・肥満者)」をセットで問われます。また、意識がある場合と意識がない場合の手技の違いも高頻度で出題されます。
出題パターン注意!:単純な知識問題に加え、「レストランで食事中に高齢者が突然呼吸困難になり、声が出せず、チアノーゼが出現した。あなたは何をするか?」のような状況設定問題で出題されます。この場合、まず「異物による気道閉塞」を疑い、「腹部圧迫法」を選択する判断力が求められます。