核心解説
この問題は、医療用麻薬である
モルヒネ (Morphine)の代表的な副作用(有害事象)に関する知識を問うています。
オピオイド鎮痛薬 (Opioid Analgesics)の薬理作用を理解することが鍵となります。モルヒネは痛みの伝達を抑制する強力な鎮痛薬ですが、全身に広く分布するオピオイド受容体に作用するため、多岐にわたる副作用が出現します。特に、消化管の蠕動運動を抑制することで生じる便秘は、耐性が生じにくいため、投与開始時から予防的対応が必要です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! モルヒネの副作用として
便秘 (Constipation)は最も頻度が高く、耐性が生じにくいため、投与開始時から下剤(酸化マグネシウムやセンノシドなど)を併用することが標準的な看護ケアです。モルヒネが腸管のオピオイド受容体に結合し、蠕動運動を抑制することで、便の通過時間が延長され、水分が過剰に吸収されて硬くなることが原因です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①出血:モルヒネの直接的な副作用ではありません。抗凝固薬(ワルファリンなど)や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)で頻度が高い副作用です。
②難聴:モルヒネの副作用ではありません。アミノグリコシド系抗生物質(ゲンタマイシンなど)やループ利尿薬(フロセミドなど)で生じることが知られています。
④骨髄抑制:モルヒネの副作用ではありません。抗がん薬(シスプラチンなど)や免疫抑制薬の代表的な副作用です。モルヒネは骨髄機能に直接影響を与えません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
モルヒネのその他の主な副作用として、悪心・嘔吐(Nausea/Vomiting)、眠気(Somnolence)、呼吸抑制(Respiratory Depression)、排尿困難(Urinary Retention)、掻痒感(Pruritus)などがあります。特に
呼吸抑制は致死的となりうる重篤な副作用であり、投与中は呼吸数(Respiratory Rate)とSpO₂のモニタリングが必須です。また、眠気やふらつきは転倒リスクとなるため、離床時の安全確保が重要です。
概念整理
| 副作用 | 原因/機序 | 看護介入 |
| 便秘 | 腸管蠕動運動抑制(耐性なし) | 下剤の予防的併用、水分摂取促進、腹部マッサージ |
| 呼吸抑制 | 延髄の呼吸中枢抑制 | 呼吸数・SpO₂モニタリング、拮抗薬(ナロキソン)の準備 |
| 悪心・嘔吐 | 延髄の嘔吐中枢刺激 | 制吐薬の予防投与、食事内容の調整 |
| 眠気 | 中枢神経抑制 | 転倒転落予防、安全な環境整備 |
一目で比較!
混同注意! モルヒネの「便秘」 vs 「呼吸抑制」:便秘は耐性が生じにくく、投与継続中は常に存在する副作用であるのに対し、呼吸抑制は投与初期や増量時に出現しやすく、耐性が生じる副作用です。
看護過程ポイント
アセスメント:モルヒネ投与前後の排便状況(最終排便日、便の性状、排便困難感)、呼吸状態(呼吸数、SpO₂、呼吸パターン)、意識レベル(JCS/GCS)を評価します。
看護診断:便秘(Constipation)リスク状態、非効果的気道浄化(呼吸抑制時)、転倒リスク状態などが考えられます。
計画・実施:便秘予防として、医師の指示に基づき下剤を定期投与。患者への説明:『モルヒネは痛みを和らげるお薬ですが、便秘になりやすいため、予防的にお薬を併用します。排便状況をこまめに確認しましょうね。』
評価:排便コントロールが適切に行われているか、呼吸状態に変化はないか、患者の疼痛コントロール状態と副作用のバランスを評価します。
暗記のコツ
モルヒネの副作用は『
吐く(悪心・嘔吐)、眠い(眠気)、止まる(便秘)、浅い(呼吸抑制)、出ない(排尿困難)』と覚えましょう。特に『止まる(便秘)』は耐性ができないため、常に注意が必要です。
国試頻出ポイント
モルヒネの副作用は看護師国家試験で頻出テーマです。特に『便秘』と『呼吸抑制』は毎年出題される可能性が高い核心項目です。また、緩和ケア領域ではモルヒネとNSAIDsの違い、オピオイドローテーションの概念も問われます。事例問題では、『疼痛コントロール中の患者に便秘が出現した場合の看護介入』という形で出題されることが多いです。
出題パターン注意!
単純な副作用の暗記問題から、『がん性疼痛でモルヒネを投与中の患者。3日間排便がなく、腹部膨満を訴えている。看護師の対応として適切なのはどれか。』のような状況設定問題に発展します。この場合、『下剤の追加投与を医師に相談する』が正解となります。