核心解説
この問題は、
フィンク (Fink, S. L.) の危機モデル (Crisis Model) の各段階を正しく順序立てて理解しているかを問うています。危機モデルは、患者が予期せぬ疾患や障害、喪失などの危機的状況に直面した際の心理的適応プロセスを示すもので、看護において患者の心理状態をアセスメントし、適切な支援を行うための重要な理論です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): フィンクの危機モデルは、危機的状況における個人の心理的反応を4つの段階に分けて説明します。順番は、
衝撃 (Shock) →
防御的退行 (Defensive Retreat) →
承認 (Acknowledgement) →
適応 (Adaptation) です。問題は第2段階を尋ねているため、「防御的退行」が正解となります。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 第2段階の
防御的退行 (Defensive Retreat) は、衝撃の後、患者が現実を受け入れられずに否認や退行などの防衛機制を用いる時期です。例えば、がんの診断を受けた患者が「自分だけは違う」と考えたり、子どものように甘える行動が見られることが該当します。この段階では、患者の心理的防衛を尊重しつつ、安全な環境を提供することが看護の役割です。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①番「衝撃」:
混同注意! 衝撃は第1段階であり、第2段階ではありません。現実感の喪失やパニック状態が特徴です。
- ②番「承認」:
混同注意! 承認は第3段階です。患者が徐々に現実を受け入れ、感情を表出し始める時期で、防御的退行の後に続きます。
- ③番「適応」:
混同注意! 適応は最終の第4段階です。患者が新しい現実に合わせて自己概念を再構築し、問題解決に取り組む時期です。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): フィンクの危機モデルは、他の心理適応モデル(例えば、キューブラー・ロス (Kübler-Ross) の死の受容プロセス(否認→怒り→取引→抑うつ→受容)や、モイーズ (Moos) の危機適応理論)と比較して学習すると理解が深まります。また、看護過程においては、患者がどの段階にいるかをアセスメントし、段階に応じた介入(例:防御的退行期では現実を直視させるよりも支持的に接する)を計画することが重要です。
概念整理: フィンクの危機モデル(4段階)
| 段階 | 名称 | 特徴 |
|---|
| 第1段階 | 衝撃 (Shock) | パニック、現実感喪失、思考停止 |
| 第2段階 | 防御的退行 (Defensive Retreat) | 否認、退行、防衛機制の使用 |
| 第3段階 | 承認 (Acknowledgement) | 現実の受容、感情表出 |
| 第4段階 | 適応 (Adaptation) | 自己再構築、問題解決 |
一目で比較!: フィンクの危機モデル vs キューブラー・ロスの死の受容プロセス
| 項目 | フィンクの危機モデル | キューブラー・ロスの死の受容プロセス |
|---|
| 対象 | 予期せぬ危機全般(疾患・障害・喪失) | 死にゆく患者(終末期) |
| 第1段階 | 衝撃 | 否認 |
| 第2段階 | 防御的退行 | 怒り |
| 第3段階 | 承認 | 取引 |
| 第4段階 | 適応 | 抑うつ |
| 最終段階 | - | 受容 |
看護過程ポイント:
- アセスメント: 患者が危機モデルのどの段階にいるかを、言動や感情の表出から評価する。
- 看護診断: 第2段階では「非効果的コーピング (Ineffective Coping)」や「不安 (Anxiety)」が該当しやすい。
- 介入: 防御的退行期では、患者の防衛機制を無理に壊さず、傾聴と受容を基本とし、安全で安心できる環境を提供する。
- 評価: 患者が徐々に現実に向き合い、次の承認段階に進む兆候(例:病気について質問する)が見られるか確認する。
暗記のコツ: 段階の頭文字を「衝・防・承・適」(しょう・ぼう・しょう・てき)と覚えましょう。「衝撃を受けて防衛的に退行し、やがて承認し適応する」というストーリーでイメージすると記憶に定着しやすいです。
国試頻出ポイント: このモデルは、精神看護学や成人看護学の事例問題で頻出です。「患者の心理的反応」を問う問題で、特に「否認や退行が見られる時期」を第2段階と正しく答えられるかが問われます。また、各段階の看護介入の違い(例:防御的退行期は受容、承認期は感情表出の促進)も合わせて学習しておくと良いでしょう。
出題パターン注意!: 単純な段階の名称を問う問題だけでなく、「ある患者が『自分だけは大丈夫』と言っているが、この患者はどの段階か」といった事例問題で出題されることが多いです。また、他の心理モデル(例:エリクソンの発達段階)と混同しないように注意しましょう。