核心解説
この問題は、代表的な異常呼吸パターンである
Cheyne-Stokes〈チェーン-ストークス〉呼吸 (Cheyne-Stokes Respiration) の特徴的な波形を識別する知識を問うています。看護師国家試験では、呼吸パターンの図示問題として頻出であり、各パターンの病態生理と関連づけて覚えることが重要です。
核心概念の分析 (Key Concept)
チェーン-ストークス呼吸は、
呼吸中枢の感受性低下 が原因で生じる周期的な異常呼吸です。無呼吸期から始まり、呼吸が徐々に浅く遅くなり(徐呼吸)、その後徐々に深く速くなり(多呼吸)、再び浅く遅くなり、最後に無呼吸に至るという「クレッシェンド・デクレッシェンド(漸増・漸減)」のパターンを繰り返します。これは主に、心不全(心拍出量低下)や脳血管障害(特に大脳半球の広範な障害)で見られ、二酸化炭素分圧 (PaCO₂) に対する呼吸中枢の応答が遅延することで発生します。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 図の②は、無呼吸の後に呼吸が徐々に増加し、ピークを迎えた後に再び減少し、再び無呼吸に戻るという周期的な波状パターンを示しています。この「漸増・漸減」パターンがチェーン-ストークス呼吸の決定的な特徴であり、正解は②です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
⚠️ 以下の誤答分析は、学習用の詳細な解説です。選択肢横のコメント領域とは異なります。
- **① (Kussmaul〈クスマウル〉呼吸)**:
混同注意! ①は、深くて速い(大呼吸)パターンが持続します。これは代謝性アシドーシス(特に糖尿病性ケトアシドーシス DKA)の代償反応として見られます。無呼吸期はありません。
- **③ (Biot〈ビオ〉呼吸 / Ataxic〈失調性〉呼吸)**: ③は、深さと速さが不規則で、突然の無呼吸が混在するパターンです。これは主に
延髄の呼吸中枢の障害(脳幹部障害、髄膜炎など)で見られ、チェーン-ストークス呼吸とは周期が不規則で予測不能な点が異なります。
- **④ (過換気症候群 / 心因性多呼吸)**: ④は、一見クスマウル呼吸に似た深く速い呼吸ですが、発作的に出現し、血液ガス上は呼吸性アルカローシスを呈します。周期的なパターンはなく、無呼吸期もありません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
チェーン-ストークス呼吸とビオ呼吸は共に中枢性の呼吸パターン異常ですが、障害部位が異なります。前者は大脳半球や間脳、後者は延髄(橋)の障害を示唆するため、神経学的アセスメントにおいて重要な鑑別ポイントとなります。また、心不全では夜間に出現しやすく、睡眠時無呼吸症候群 (Sleep Apnea Syndrome, SAS) との鑑別も必要です。
概念整理
| 呼吸パターン | 特徴 | 主な原因疾患 |
| チェーン-ストークス呼吸 | 無呼吸 → 漸増 → 漸減 → 無呼吸(周期的・波状) | 心不全、脳血管障害(大脳半球)、尿毒症 |
| クスマウル呼吸 | 深く速い呼吸が持続(大呼吸) | 糖尿病性ケトアシドーシス (DKA)、代謝性アシドーシス |
| ビオ呼吸 | 深さ・速さが不規則、突然の無呼吸 | 延髄障害、髄膜炎、頭蓋内圧亢進 (ICP) |
| 過換気(多呼吸) | 深く速い呼吸、発作的 | 不安障害、呼吸性アルカローシス |
一目で比較!
チェーン-ストークス vs ビオ呼吸:チェーン-ストークスは「規則的な波状」、ビオは「不規則で突然の無呼吸」。障害部位の推定(大脳 vs 延髄)に直結します。
看護過程ポイント
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アセスメント: 呼吸パターン(深さ、速さ、リズム)、無呼吸の時間、意識レベル(JCS/GCS)、SpO₂、血液ガス(PaCO₂、PaO₂、pH)を経時的に観察します。
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看護診断: 「非効果的呼吸パターン (Ineffective Breathing Pattern)」や「ガス交換障害 (Impaired Gas Exchange)」が優先されます。
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介入: 原因疾患(心不全や脳障害)への治療を優先し、酸素療法(指示に基づき)、体位変換(ファウラー位やセミファウラー位)、バイタルサインの頻回測定を実施します。
暗記のコツ
「チェーン=波(Wave)、クスマウル=大きい(Big)、ビオ=バラバラ(Irregular)」とイメージすると覚えやすいです。図を見たら、まず「無呼吸があるか?」「波のように上下するか?」を確認しましょう。
国試頻出ポイント
図やイラストを用いて、異常呼吸パターンの名称と波形を一致させる問題が頻出です。また、血液ガス分析値(pH、PaCO₂、HCO₃⁻)と組み合わせて出題されることも多いので、病態と一緒に覚えましょう。
出題パターン注意!
単純な図識別問題から、「心不全患者の夜間の呼吸パターンは?」という臨床状況設定問題へと発展します。その場合、患者の背景(心疾患の有無、意識レベル)をしっかり読み取ることが正答への鍵となります。