看護学のコア解説
この問題は、
シスプラチン (Cisplatin)化学療法後の患者の
副作用の優先度判断 (Prioritization of side effects)について問うています。看護師は、生命の危機に直結する合併症を最優先でアセスメントし、介入する必要があります。
重要概念の分析 (Key Concept)
シスプラチンは強力な抗がん剤ですが、
ここがポイント! 特に
腎毒性 (Nephrotoxicity)が強く、
急性腎障害 (Acute Kidney Injury, AKI)を引き起こすリスクが高いことで知られています。腎障害は不可逆的になる可能性があり、また、抗がん剤の排泄遅延によって他の全身性毒性が増強される危険性があります。したがって、腎機能のモニタリングはシスプラチン投与後の最重要ケアの一つです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢①「血清クレアチニン値 3.2 mg/dL、尿量減少」が正解です。
-
血清クレアチニン 3.2 mg/dLは、
正常範囲(約0.6-1.1 mg/dL)を明らかに超えており、腎機能の著しい低下を示しています。
- 「尿量減少」は、
乏尿 (Oliguria)の状態を示唆し、腎臓の濾過機能が障害されていることを直接的に示す所見です。
- この組み合わせは、進行性の
急性腎障害 (AKI)を強く示唆し、放置すれば
高カリウム血症 (Hyperkalemia)や体液過剰による
肺水腫 (Pulmonary edema)など、生命を脅かす状態に急速に進展する可能性があります。したがって、
最も緊急の看護介入(医師への速やかな報告、輸液管理の見直し、利尿薬投与の準備など)が必要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢もシスプラチンの重要な副作用ですが、緊急性という観点では①に劣ります。
- ② 軽度の悪心・嘔吐:抗悪心剤でコントロールされているため、現在の状態は安定しています。継続的な観察は必要ですが、緊急介入は不要です。
- ③ 耳鳴りと高音域の難聴:シスプラチンの
聴器毒性 (Ototoxicity)によるもので、不可逆的な場合もあります。しかし、生命に直接的な危険は及ぼさず、緊急度は高くありません。今後の投与計画への影響を考慮する必要はあります。
- ④ 手指・足趾のしびれと刺痛感:シスプラチンの
末梢神経障害 (Peripheral neuropathy)によるものです。生活の質(QOL)に大きく影響し、転倒リスクを高めますが、急性の生命危機にはつながりません。予防と症状管理がケアの中心です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
シスプラチン投与時には、腎毒性を予防するために積極的な
水和療法 (Hydration therapy)が行われます。投与前・中・後に大量の輸液を行い、尿量を確保することで、腎尿細管への薬剤濃度を下げるのが標準的なケアです。看護師は、尿量と水分出納バランスを厳密にモニタリングする役割を担います。
概念のまとめ
シスプラチンの主要副作用と優先度:
腎毒性(最優先・生命危機)> 骨髄抑制(感染・出血リスク)> 悪心・嘔吐 > 神経毒性・聴器毒性(QOL低下・不可逆的)。
一目で比較!
| 副作用 | 機序・特徴 | 看護上の優先度 | 主な看護介入 |
|---|
| 腎毒性 | 尿細管障害。急性腎障害(AKI)を引き起こす。 | 最優先 (緊急) | 尿量・血清Cr・BUNの厳密モニタリング、積極的水和療法 |
| 骨髄抑制 | 汎血球減少。好中球減少による感染、血小板減少による出血リスク。 | 高優先 | 発熱モニタリング、無菌操作、出血徴候の観察 |
| 悪心・嘔吐 | 急性期(投与後24時間以内)と遅延性(24時間後以降)がある。 | 中優先 | 抗悪心剤の予防的投与、食事・環境調整 |
| 末梢神経障害 | 感覚神経障害(しびれ、刺痛)。用量依存的で不可逆的の場合も。 | 中優先 | 転倒予防、温罨法の禁止、症状の経過観察 |
| 聴器毒性 | 高音域の難聴、耳鳴り。不可逆的。 | 低優先(緊急性は低い) | 聴力検査、患者への情報提供 |
解剖生理と薬理のポイント
シスプラチンは白金製剤に分類される抗がん剤です。その腎毒性は、薬剤が
腎尿細管 (Renal tubules)に蓄積し、細胞死を引き起こすことで生じます。血清クレアチニン(Cr)は筋肉の代謝産物で、腎糸球体で濾過され、ほとんど再吸収されないため、
糸球体濾過量(GFR)の指標として用いられます。Cr値の上昇はGFRの低下、つまり腎機能の低下を意味します。
暗記のコツとゴロ合わせ
シスプラチンの副作用は「
腎臓に耳を傾けると、神経が尖る」と覚えましょう。
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腎臓:腎毒性(最重要)
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耳:聴器毒性(Ototoxicity)
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神経が尖る:末梢神経障害(Neuropathy)
このゴロで主要3副作用を押さえ、その中で「腎臓」が最も危険と結びつけます。
国試頻出ポイント
抗がん剤の副作用の優先順位付けは超頻出テーマです。
ここがポイント! 「生命の危機に直結するか」「ABC(気道、呼吸、循環)を脅かすか」という視点で判断します。シスプラチンでは「腎障害→高カリウム血症による心停止リスク」「骨髄抑制→重篤な感染症・出血」が最も緊急性が高いと覚えておきましょう。
国試出題パターンの変化に注意!
同じシスプラチンの腎毒性でも、「血清クレアチニン値が上昇した患者への看護師の最初の行動は?」(医師への報告と水分摂取/輸液の確認)、「腎毒性予防のための看護ケアは?」(投与前後の積極的水分補給と尿量確保)など、
「アセスメント」「介入」「患者教育」と問う角度が変わります。本問は「アセスメントに基づく優先度判断」の典型問題です。