核心解説
この問題は、
妊娠悪阻 (Hyperemesis Gravidarum) の診断基準を問うています。妊娠悪阻は、妊婦の約0.3~3%に発生する重症のつわりで、単なる悪心・嘔吐(つわり)とは異なり、
脱水、栄養障害、電解質異常をきたし、母体の体重減少や臓器障害を引き起こす病態です。診断には、症状の重症度と身体所見を総合的に評価する必要があります。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 妊娠悪阻の診断基準の一つに、
妊娠前の体重と比較して5%以上の体重減少が含まれます。これは、持続する嘔吐による摂食不良と脱水が原因で、母体の栄養状態が著しく低下していることを示す客観的指標です。日本産科婦人科学会の診断基準においても、この体重減少は重要な項目として挙げられています。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①番の
尿中ケトン体陰性は誤りです。妊娠悪阻では、飢餓状態により脂肪代謝が亢進し、尿中ケトン体は
陽性となります。これはエネルギー不足の指標です。
②番の
甲状腺刺激ホルモン(TSH)の上昇は誤りです。妊娠悪阻では、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の増加がTSH受容体を刺激し、むしろTSHは
正常または低下します。これを妊娠一過性甲状腺機能亢進症(GTT)と呼びます。
④番の
白血球数の減少は誤りです。脱水やストレス反応により、白血球数は
増加することが多いです。
⑤番の
血清カリウム値の上昇は誤りです。持続する嘔吐により胃液(塩酸)が喪失され、代謝性アルカローシスをきたし、それに伴い血清カリウム値は
低下(低カリウム血症)します。
関連概念の整理 (Related Concepts):
妊娠悪阻の診断基準は、単なるつわり(妊娠悪阻未満)との鑑別に重要です。診断基準には、
体重減少5%以上、尿中ケトン体陽性、電解質異常(低K血症)、肝機能障害(AST/ALT上昇)、脱水症状などが含まれます。また、甲状腺機能亢進症や肝炎など他の疾患を除外することも診断プロセスに含まれます。治療の基本は、輸液療法による脱水補正と電解質補正、制吐薬(ヒドロキシジン、メトクロプラミドなど)の投与、栄養管理です。
概念整理: 妊娠悪阻は、重症の妊娠悪心・嘔吐により、体重減少、脱水、電解質異常、栄養障害をきたす病態。診断の鍵は、
体重減少率(5%以上)と
尿中ケトン体陽性。
一目で比較!:
| 項目 | つわり(妊娠悪阻未満) | 妊娠悪阻 |
|---|
| 体重減少 | 軽度~なし | 5%以上 |
| 尿中ケトン体 | 陰性 | 陽性 |
| 脱水 | なし | あり |
| 電解質異常 | なし | 低K血症など |
| 治療 | 生活指導 | 輸液・入院 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 体重測定(妊娠前からの変化)、摂取量と嘔吐回数、バイタルサイン(脱水評価)、尿中ケトン体・電解質検査値。
看護診断: 栄養バランスの変化:必要量以下(嘔吐による)、体液量不足リスク。
介入: 輸液管理、経口摂取の支援(少量頻回)、口腔ケア(嘔吐後のケア)、安静確保。
評価: 体重減少の停止、嘔吐回数の減少、尿中ケトン体陰性化。
暗記のコツ: 「体重が5%減ったら悪阻(おそ)い!」と覚えましょう。数字の「5%」がキーです。また、TSHが「下がる(hCGの影響)」ことも併せて暗記してください。
国試頻出ポイント: 妊娠悪阻の診断基準(特に体重減少率)、合併症(低K血症、肝障害)、鑑別疾患(急性肝炎、甲状腺機能亢進症)、看護介入(輸液、制吐薬)が頻出。状況設定問題で、「嘔吐が続く妊婦のアセスメント」として出題されやすい。
出題パターン注意!: 「妊娠初期の嘔吐が続く患者。体重が妊娠前より7%減少、尿中ケトン体陽性。優先する看護介入は?」→ 輸液療法の実施、入院の必要性の判断を問う問題に発展します。