1歳の男児が、3日前からの下痢と嘔吐のため小児科外来を受診した。体温37.5℃、心拍数120回/分、呼吸数28回/分、体… | MyMerci
さまざまな状況にある小児と家族への看護
問題

1歳の男児が、3日前からの下痢と嘔吐のため小児科外来を受診した。体温37.5℃、心拍数120回/分、呼吸数28回/分、体重9.0kg(3か月前は9.2kg)。皮膚のツルゴールは軽度低下しており、口唇は乾燥している。母親は「ミルクを飲んでも吐いてしまいます。おしっこの回数が減ってきました」と話す。看護師のアセスメントとして適切なのはどれか。

解説
体重減少(約2%)、皮膚ツルゴール低下、口唇乾燥、尿量減少、嘔吐のため経口摂取困難であることから、中等度以上の脱水が疑われる。嘔吐があり経口補水が困難なため、入院による輸液療法が必要と判断する。

詳細解説

核心解説 この問題は、乳幼児の急性胃腸炎に伴う脱水症の重症度評価と、適切な治療法の選択を問うものです。特に、経口摂取が困難な場合の対応が鍵となります。

1. 核心概念の分析 (Key Concept)
この問題の核心は、乳幼児の脱水症 (Dehydration in Infants) の重症度評価と、それに基づく治療法の選択です。乳幼児は体重あたりの水分量が多く、代謝回転が速いため、下痢や嘔吐による水分喪失が急速に進行し、重症化しやすい特徴があります。評価のポイントは、体重減少率、皮膚ツルゴール、口唇・口腔粘膜の乾燥、尿量、全身状態(元気のなさ、泣き方)です。特に、最重要! 経口摂取が可能かどうか(嘔吐の有無)は、治療方針を決定するうえで最も重要な要素です。

2. 正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は ⑤ 入院による輸液療法が必要である です。
本症例では、重要! ① 体重が3か月前の9.2kgから9.0kgへと約2.2%減少(急性脱水として評価する場合、短期間での減少率が重要)。② 皮膚ツルゴール低下、口唇乾燥あり(脱水の身体的徴候)。③ 尿量減少(腎灌流低下を示唆)。④ 「ミルクを飲んでも吐いてしまう」ため経口補水が困難。
これらの所見から、軽度脱水を超えた中等度脱水(体重減少率5~10%相当の可能性)が疑われ、かつ経口摂取が不可能であるため、静脈内輸液療法(Intravenous Fluid Therapy) による確実な水分・電解質補正が必要です。よって、入院管理が適切と判断されます。

3. 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 「経口補水療法(ORT)が適応である」:ORTは軽度~中等度脱水で、経口摂取が可能な場合の第一選択です。本症例では嘔吐があり経口摂取困難なため、ORTは適応外です。
② 「体重減少は脱水の程度を反映していない」:誤り。 急性脱水では、体重減少率(短期間の変化)は脱水の重症度を評価する最も客観的な指標の一つです。ただし、正確な体重減少率を計算するには脱水前の体重が必要ですが、本症例では3か月前の体重からも約2%減少しており、急性の体重減少として評価します。
③ 「軽度の脱水状態である」:誤り。 軽度脱水では、皮膚ツルゴールは正常~軽度低下、口唇乾燥はあっても、尿量減少は軽度です。本症例では尿量減少が明らかであり、軽度脱水の範囲を超えている可能性が高いです。
④ 「下痢止めの処方が優先される」:誤り。 感染性胃腸炎が疑われる場合、下痢止めは病原体の排泄を遅らせ、病態を悪化させる可能性があるため、原則として禁忌です。治療の優先順位は、脱水の補正と原因療法(必要に応じて抗菌薬など)です。

4. 関連概念の整理 (Related Concepts)
- 脱水の重症度分類:軽度(体重減少3~5%)、中等度(5~10%)、高度(10%以上)。
- 経口補水療法 (Oral Rehydration Therapy, ORT):経口補水液(ORS)を使用。軽度~中等度脱水で経口摂取可能な場合に適応。
- 静脈内輸液療法 (Intravenous Fluid Therapy):経口摂取困難な中等度以上の脱水、またはショック状態の場合に適応。
- 混同注意! 小児の脱水評価では、乳児と年長児では所見の現れ方が異なる(例:乳児では泉門陥没が追加所見となる)点を押さえましょう。

概念整理: 小児の脱水は急速に進行するため、早期発見・早期介入が肝心です。体重減少率、皮膚ツルゴール、尿量、そして最も重要な「経口摂取の可否」で治療法を判断します。経口補水が不可能な場合は、躊躇なく静脈路確保を考慮します。
一目で比較!:
重症度体重減少率皮膚ツルゴール口唇・口腔粘膜尿量経口摂取治療
軽度3~5%正常~軽度低下軽度乾燥軽度減少可能ORT
中等度5~10%低下乾燥減少困難な場合ありORTまたはIV
高度10%以上著明低下(テント状)著明乾燥乏尿~無尿不可能IV(緊急)

看護過程ポイント: 【アセスメント】体重測定、皮膚ツルゴール、口腔粘膜、泉門(乳児)、バイタルサイン、尿量、機嫌・活動性の観察。【看護診断】「体液量不足リスク状態(Risk for Deficient Fluid Volume)」 または 「体液量不足(Deficient Fluid Volume)」。【計画】医師の指示に基づく輸液管理、経口摂取開始時の観察計画。【実施】静脈路確保の介助、輸液ポンプの設定、バイタルサイン・尿量モニタリング。【評価】脱水徴候の改善、体重増加、尿量回復。
暗記のコツ: 脱水の重症度は「体重減少率」で覚えよう!「3-5-10(みーごーとお)」で軽度(3-5%)、中等度(5-10%)、高度(10%以上)。そして治療は「経口がダメなら点滴」とシンプルに。
国試頻出ポイント: 小児の脱水は頻出テーマです。特に「体重減少率」「経口摂取の可否」「輸液の適応」の3点は必ず押さえましょう。状況設定問題では、「嘔吐のため経口摂取困難」というワードを見たら、まず入院・点滴を疑うクセをつけましょう。
出題パターン注意!: 単純な「脱水の重症度」を問う問題から、本事例のように「経口摂取困難」という条件を加えた状況判断問題へ発展します。また、年齢(乳児・幼児・学童)による評価項目の違い(泉門、Kussmaul呼吸の有無など)も併せて学習しましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド
1. 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
「8か月の女児。2日前から水様性下痢が1日10回以上続き、哺乳後に毎回嘔吐。来院時、体重7.0kg(健診時7.5kg)、大泉門はわずかに陥没、皮膚ツルゴール低下あり。母親が『ぐったりしていて、おしっこがほとんど出ていない』と訴えています。看護師はまず何をすべきでしょうか?」

2. 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察: バイタルサイン(特に心拍数、呼吸状態、血圧)とSpO2を測定。同時に全身状態(意識レベル、泣き方、活気)を評価。
2. アセスメント: 短期間での体重減少率(約6.7%)、大泉門陥没、皮膚ツルゴール低下、乏尿から中等度脱水と判断。嘔吐のため経口補水は困難。
3. 報告: SBARを用いて医師に報告。
S (状況): 「8か月女児、急性胃腸炎による中等度脱水が疑われます。」
B (背景): 「2日前からの嘔吐・下痢、経口摂取困難。体重6.7%減少、大泉門陥没あり。」
A (アセスメント): 「経口補水は困難と判断し、静脈路確保による輸液が必要と考えます。」
R (提案): 「入院適応の判断と、輸液開始の指示をお願いします。」
4. 介入: 医師の指示に基づき、静脈路確保を介助。輸液は維持輸液に加え、欠乏量を考慮したものを準備。輸液ポンプで正確に流量管理。必要に応じて、検体(血液・便)採取を準備。
5. 評価: 輸液開始後、バイタルサイン安定、尿量回復、皮膚ツルゴール改善を経時的に評価。経口摂取再開時は、少量から慎重に開始。

3. 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 最重要! 小児の静脈路確保は成人より困難です。複数回の穿刺を避けるため、熟練したスタッフが行い、可能であれば超音波ガイド下穿刺を検討。
- 注意! 急速輸液による循環過負荷に注意。特に心機能が未熟な乳児では、輸液ポンプの流量設定を厳守。
- 感染対策: 下痢便・嘔吐物による二次感染防止のため、標準予防策(手袋、ガウン)を徹底。ノロウイルスなどが疑われる場合は、アルコール消毒ではなく次亜塩素酸ナトリウムで環境消毒。
- 家族支援: 母親の不安は大きいため、処置の説明を丁寧に行い、経過をこまめに伝える。「お母さん、おしっこが出るようになってきましたね。もう少し頑張りましょう」など、ポジティブな声かけを心がける。

看護プロトコル: 観察項目(バイタルサイン、尿量、体重、皮膚ツルゴール、大泉門、活気、嘔吐・下痢の性状と回数)。報告基準(尿量が0.5mL/kg/h未満、意識レベル低下、血圧低下)。記録のポイント(輸液開始時間・ルート・流量、尿量測定値、観察所見と看護介入の内容)。
先輩看護師の一言: 「小児の脱水は本当に急変しやすいんです。『まだ大丈夫だろう』が命取りになります。特に『ミルクを吐いちゃう』『おしっこが減った』はレッドサイン!体重減少率をパッと計算できるようになっておくと、アセスメントのスピードが格段に上がりますよ。国試でも、現場でも、この判断力が患者さんを救います!」

重要概念

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