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健康障害の病期別の小児と家族の看護
問題
1歳6か月の幼児が、母親の目を離した隙にプールに落ち、溺れて救急搬送された。来院時、体温35.2℃、心拍数60回/分、呼吸数10回/分、SpO2 85%(酸素10L/分マスク投与下)、意識レベルJCS 300である。この患児の看護で優先度が最も高いのはどれか。
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1
毛布と赤外線ランプによる体温復温
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2
血液ガス分析のための動脈血採血
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3
家族への病状説明のための医師への連絡
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4
気管挿管による人工呼吸管理の準備
✓ 正解
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5
輸液ポンプを用いた晶質液の急速輸液
解説
溺水後の低酸素状態で意識レベルが低下し、自発呼吸も不十分な状態では、気道確保と人工呼吸管理が最優先である。低体温も問題だが、酸素化が改善されなければ生命維持は困難である。蘇生の優先順位はA(気道)→B(呼吸)→C(循環)であり、気管挿管はBの確保にあたる。
同じテーマの次の問題生後3か月の乳児が、母親の腕の中でぐったりして呼吸が弱い状態で救急外来に搬送された。心拍数は60回/分、呼吸数は8回/分である。看護師の最初の対応として適切なのはどれか。
詳細解説
核心解説
この問題は、幼児の溺水 (Drowning in Infants and Toddlers) による 心肺停止状態 (Cardiopulmonary Arrest) に準じた救急看護の優先順位を問うています。特に 最重要! 蘇生の基本である A(気道 Airway)→B(呼吸 Breathing)→C(循環 Circulation) の優先順位を理解することが鍵です。
来院時の状態は、意識レベル JCS 300(痛み刺激に全く反応しない深昏睡)、心拍数 60回/分(徐脈)、呼吸数 10回/分(徐呼吸)、SpO2 85%(高度低酸素血症)であり、重度の低酸素性脳症 (Severe Hypoxic Encephalopathy) と 呼吸不全 (Respiratory Failure) が進行しています。この状態では、まず酸素化を確保しなければ生命維持は不可能です。低体温(35.2℃)や循環動態の改善は、呼吸管理が確立した後に行うべきです。
1. 核心概念の分析 (Key Concept): 問題の核心は「溺水後の蘇生 (Resuscitation after Drowning)」における「A(気道確保)→B(呼吸補助)→C(循環維持)」の優先順位です。特に幼児では解剖学的特徴(咽頭が狭い、喉頭が高い)から、気管挿管 (Endotracheal Intubation) による確実な気道確保が迅速に求められます。
2. 正解の根拠 (Answer Rationale): ④番の 最重要! 気管挿管による人工呼吸管理の準備 が最優先です。本患児は自発呼吸が不十分(10回/分)で、高濃度酸素投与下でもSpO2が85%と低酸素状態が続いています。意識レベルがJCS 300であることから、自発呼吸の維持は困難と判断し、確実な気道確保と人工呼吸 を開始する必要があります。溺水後の最も致命的な経過は低酸素による多臓器不全であり、まず酸素化を最優先します。
3. 誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ① 毛布と赤外線ランプによる体温復温: 混同注意! 低体温(35.2℃)も重症度を高める因子ですが、生命の優先順位では気道・呼吸・循環が先です。酸素化が改善されないまま復温しても、組織酸素需要が増えかえって低酸素を悪化させます。
- ② 血液ガス分析のための動脈血採血: 診断のための検査は重要ですが、気道確保と人工呼吸が確立した後に行うべき処置です。採血操作自体が蘇生の遅れにつながるため、このタイミングでは優先度が低いです。
- ③ 家族への病状説明のための医師への連絡: 家族支援も看護の重要な役割ですが、生命の危機的状態ではまず蘇生処置を優先します。医師は既に救急処置チームの一員であり、説明は蘇生処置の合間または終了後に行います。
- ⑤ 輸液ポンプを用いた晶質液の急速輸液: 循環維持も重要ですが、気道確保と呼吸補助が先です。溺水後の肺水腫や誤嚥を考慮すると、過剰な輸液はむしろ肺障害を悪化させる可能性があります。
4. 関連概念の整理 (Related Concepts): 溺水後の蘇生では、体温管理 (Temperature Management) が予後を左右する重要な要素です。特に低体温が高度な場合(
臨床シナリオ
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario): あなたは夜間の小児救急外来で勤務する看護師です。先ほど、1歳6か月の幼児が自宅プールで溺水し、母親が人工呼吸と胸骨圧迫を試みながら救急搬送されてきました。到着時、患児は顔面蒼白、呼吸は弱く時折あえぐような呼吸(下顎呼吸様)、末梢冷感が著明です。SpO2モニターは波形が不安定で、測定が難しい状況です。医師はまだ到着していません。
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
1. 観察・アセスメント: まずABCDを素早く評価。A: 気道(咽頭に水や嘔吐物がないか確認、頸部の過伸展に注意)、B: 呼吸数・リズム・胸郭挙上・SpO2、C: 心拍数・血圧(可能なら)・末梢循環(CRT: 毛細血管再充満時間)、D: 意識レベル(JCS/GCスケール)。本例ではJCS 300であり、呼吸も不十分。
2. 報告・指示受け: 医師到着時にSBARで報告。S: 状況「1歳6か月、溺水、意識JCS300」、B: 背景「自宅プール、母親が蘇生試行」、A: アセスメント「呼吸不十分、SpO2低下、徐脈あり」、R: 提案「気管挿管と人工呼吸管理が必要と考えます。準備を開始します。」。
3. 介入: 医師の指示がなくても、最重要! 看護師の判断で気管挿管セット、バッグバルブマスク、吸引器、蘇生薬剤(アドレナリンなど)の準備を開始します。また、モニター(心電図、SpO2、ETCO2)を装着し、静脈路確保を試みます。
4. 評価: 挿管後、人工呼吸を開始し、SpO2が95%以上に上昇、ETCO2波形が確認できれば、一次的な呼吸管理は成功。その後、体温管理(毛布、温湿度管理)と輸液管理(晶質液の維持輸液)へ移行します。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):
- 最重要! 小児の気道は解剖学的に狭く、粘膜が脆弱。挿管操作による喉頭浮腫や気道損傷に注意。チューブサイズは年齢に応じた適切なものを選択(本例では内径3.5~4.0mm程度)。
- 溺水後は誤嚥性肺炎や肺水腫のリスクが高い。過剰な輸液は避け、必要に応じて利尿剤(フロセミド)投与の準備も行う。
- 低体温は心筋抑制・不整脈・代謝性アシドーシスを悪化させる。復温は緩徐に行い(0.5~1.0℃/時間)、急激な復温による危険な不整脈(特に心室細動)を予防する。
- 家族への説明は、蘇生処置の合間やチーム内で役割分担して行う。ショック状態の家族への精神的ケア(簡単な情報提供、そばに付き添い、必要時は心理的支援の手配)も看護師の重要な役割。
看護プロトコル:
- 観察項目: バイタルサイン(5分毎)、SpO2(連続モニター)、ETCO2(挿管後)、意識レベル(JCS/GCスケール)、瞳孔径・対光反射、尿量(30分毎)、末梢循環(皮膚色、CRT)。
- 報告基準(SBAR): SpO2が90%未満持続、収縮期血圧が年齢基準値(1歳: 約70+2×年齢 = 約72mmHg)以下、心拍数が60未満または200以上、意識レベルの低下、けいれん発作。
- 記録のポイント: 現場での状況(誰がいつ発見、母親の蘇生内容)、来院時のABCD評価結果、医師への報告内容・時刻・指示、実施した処置とその効果。
先輩看護師の一言: 「この問題で一番大事なのは『蘇生のABCは絶対に順番を間違えない』ってこと。『低体温だからまず温めよう』とか『家族が心配だから説明を先に』と考えてしまうと、患者さんの命を落とす可能性があります。国試の現場でも、あなたが実際の病棟に立った時でも、『A→B→C』の順番を心に刻んで、迷った時はこの原則に戻ってください。それが患者さんを救う最短ルートです!」
重要概念
- 溺水 — 液体(水)への没入により気道が閉塞され、呼吸困難を引き起こす状態。低酸素性脳症、肺水腫、低体温を合併する。
- 気管挿管 (Endotracheal Intubation) — 気管内にチューブを留置し、確実な気道確保と人工呼吸を可能にする処置。意識障害や呼吸不全で用いる。
- 蘇生のABC — A: 気道確保 (Airway) → B: 呼吸補助 (Breathing) → C: 循環維持 (Circulation) の優先順位。救命処置の基本原則。
- 低酸素性脳症 (Hypoxic Encephalopathy) — 脳への酸素供給が不十分なために生じる脳障害。意識障害、けいれん、認知機能障害などをきたす。
- 小児の心肺蘇生 (Pediatric CPR) — 成人と異なり、呼吸原性心停止が多いため、換気(呼吸補助)の重要性が高い。適切な換気が循環維持に先行する。
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