核心解説
この問題は、
小児喘息発作 (Acute Asthma Exacerbation in Children) の急性期看護における優先的な対応を問うています。6歳児の呼吸数40回/分、SpO2 92%、両肺に呼気性喘鳴(Wheezing)が聴取される状態は、
中等度の喘息発作 (Moderate Asthma Exacerbation) に相当します。この段階では気道閉塞による低酸素血症が進行している可能性が高く、まずは気道確保と酸素化の改善、そして気管支拡張薬の吸入が最優先となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢4が適切です。
最重要! 小児喘息発作の初期対応の基本は、
酸素投与 (Oxygen Therapy) と
短時間作用性β2刺激薬 (Short-Acting Beta Agonist, SABA) の吸入です。SpO2 92%は明らかな低酸素状態であり、酸素投与で
SpO2 95%以上 を目標とします。同時に、気管支平滑筋を弛緩させる吸入β2刺激薬(例:サルブタモール)をネブライザーで投与することで、呼気性喘鳴の原因である気管支攣縮を改善します。この介入は、病態生理に基づく最も迅速かつ効果的な看護介入です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! 腹部の触診は、喘鳴の原因が喘息か異物誤嚥か鑑別がつかない場合に考慮されますが、本症例では聴診で明確な呼気性喘鳴を認めており、喘息発作が強く疑われるため優先度は低いです。緊急性の高い呼吸状態の改善を優先すべきです。
② アミノフィリン持続点滴は、かつては喘息治療に広く用いられましたが、現在の小児喘息ガイドラインでは、副作用(嘔気、頻脈、痙攣)が多く、効果発現が遅いことから、
第一選択薬ではありません。特に軽症~中等症発作では、吸入β2刺激薬と酸素投与が優先されます。
③ 胸骨圧迫は、心肺停止(心停止/無脈性電気活動/心室細動など)の際に行う一次救命処置(BLS)です。本症例は呼吸状態は悪化していますが、脈拍は触知可能と推測されるため、この時点での胸骨圧迫は不要です。
⑤
混同注意! 気管挿管は、酸素投与と薬物療法にもかかわらず呼吸状態が悪化し、意識レベル低下や呼吸筋疲労(例:奇異性呼吸、二段呼吸)が認められるような、
切迫呼吸不全 (Impending Respiratory Failure) の状態で考慮されます。本症例は中等度発作であり、まずは保存的治療を優先します。
関連概念の整理 (Related Concepts)
小児の喘息発作は、重症度に応じて対応が異なります。軽症(SpO2 96%以上、軽度の喘鳴)→ 吸入β2刺激薬のみ。中等症(SpO2 91-95%、呼気性喘鳴、頻呼吸)→ 酸素投与 + 吸入β2刺激薬。重症(SpO2 90%以下、著明な呼吸困難、チアノーゼ)→ 上記に加え、全身性ステロイド薬の投与、場合により気管挿管の準備。本症例のSpO2 92%は中等症に該当し、酸素投与と吸入β2刺激薬が優先されます。また、小児は解剖学的に気道が狭く、呼吸筋が未発達なため、成人よりも急激に呼吸不全に陥りやすい点を常に念頭に置く必要があります。
概念整理: 小児喘息発作の重症度は、SpO2値、喘鳴の程度、呼吸数、補助呼吸の有無(胸骨上窩陥没、鼻翼呼吸など)で評価します。中等度発作では気管支攣縮と気道浮腫による閉塞が主体であり、酸素投与と吸入β2刺激薬で速やかに改善を図ります。
一目で比較!: 喘息発作の重症度別対応
| 重症度 | SpO2 | 主な治療 | 看護の優先順位 |
| 軽症 | 96%以上 | 吸入β2刺激薬 | 観察、吸入補助 |
| 中等症 | 91-95% | 酸素投与 + 吸入β2刺激薬 | 酸素化改善、呼吸管理 |
| 重症 | 90%以下 | 酸素投与 + 吸入β2刺激薬 + 全身性ステロイド | 緊急対応、挿管準備 |
看護過程ポイント:
アセスメント: SpO2、呼吸数、呼吸パターン(努力呼吸の有無)、聴診所見(喘鳴の部位と程度)、意識レベル。
看護診断: 「非効果的気道浄化」または「ガス交換障害」に関連した「非効果的呼吸パターン」。
計画・実施: 酸素投与(マスク又は鼻カニューラ)、ネブライザー吸入の準備と実施、バイタルサインの頻回観察(5-15分毎)、保護者への説明と不安の軽減。
評価: SpO2の改善、喘鳴の減少、呼吸回数の正常化。
暗記のコツ: 「喘息発作=気道が狭くなっている=まずは酸素と気管支拡張薬」と覚えましょう。「喘鳴(Wheezing)=息を吐くときにゼーゼー」がキーワードです。小児は「酸素投与」と「吸入β2刺激薬」の2つをセットで覚えてください。
国試頻出ポイント: 小児喘息発作の初期対応は頻出です。特に「SpO2 92%」のような具体的数値と「呼気性喘鳴」という所見から、中等症発作を判断し、適切な看護介入(酸素+吸入β2刺激薬)を選択できるかが問われます。気管挿管やアミノフィリンが「第一選択ではない」という知識も重要です。
出題パターン注意!: 単純な知識問題として「喘息発作の第一選択薬は?」という出題から、事例問題で「この児のSpO2が88%に低下した場合、看護師はまず何をすべきか?」という急変対応に発展する問題も出題されます。常に重症度評価とそれに基づく優先順位を考えられるようにしておきましょう。