核心解説
この問題は、
エリクソンの発達段階 (Erikson’s Psychosocial Stages) を看護アセスメントに応用する力を問うています。特に、小児看護学において入院というストレス状況下で子どもの反応を発達課題から理解する視点が重要です。
核心概念の分析 (Key Concept): 問題の女児は5歳で、エリクソンの発達段階では
遊戯期 (Play Stage / 3~6歳) に該当します。この時期の心理社会的発達課題は「
積極性 (Initiative) 対 罪悪感 (Guilt)」です。子どもは積極的に周囲の世界に関わり、目標を設定し達成しようとします。同時に、見捨てられることや罰せられることへの強い不安や罪悪感を抱きやすい時期でもあります。母親が帰宅した後に「迎えに来ないかもしれない」と泣く反応は、この「見捨てられ不安」と「罪悪感(自分が悪いから置いていかれたのでは)」が混ざった典型的な現れです。
正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は
④ 積極性 (Initiative) です。5歳の女児は、入院という非日常的な環境で「自分の力で何とかしたい(積極性)」という気持ちと、「ママを困らせたから置いていかれた(罪悪感)」という気持ちの間で葛藤しています。泣くという行動は、この発達課題の不全や不安の表出としてアセスメントするのが適切です。母親が帰宅した後に発症している点が、「分離不安」の中でも、より発達課題と結びついた反応であることを示しています。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
① 自律性 (Autonomy):
混同注意! これは乳幼児期(1.5~3歳)の発達課題「自律性 対 恥・疑惑」です。「自分でやりたい」という欲求に関連しますが、5歳のメイン課題ではありません。
② 勤勉性 (Industry):学童期(6~12歳)の発達課題「勤勉性 対 劣等感」です。5歳はこの段階には未達です。
③ 同一性 (Identity):青年期(12~20歳)の発達課題「同一性 対 同一性拡散」です。自分は何者かという問いに関わるため、5歳の子どもには該当しません。
⑤ 基本的信頼感 (Basic Trust):乳児期(0~1.5歳)の発達課題「基本的信頼 対 不信」です。生後早期に養育者との愛着を通じて形成されるため、5歳の入院時の不安はこの段階の問題だけでは説明できません。
関連概念の整理 (Related Concepts): この問題では「分離不安 (Separation Anxiety)」も併せて理解しましょう。幼児期後期~遊戯期の子どもは、マジカルシンキング(自分が悪いからこうなったと考える思考)をしやすいため、入院を「自分が悪い子だから罰として入院させられた」と解釈することがあります。看護師は、プレパレーション(Preparation / 子どもへの事前説明)や、子どもがコントロール感を持てるようなケア(遊びの中での選択肢の提供など)を通じて、罪悪感を軽減し積極性を支える介入が求められます。
概念整理: エリクソンの発達段階における5歳(遊戯期)の核心課題は「積極性 対 罪悪感」です。入院時の見捨てられ不安は、この葛藤の現れとしてアセスメントします。
一目で比較!:
| 発達段階 | 課題 | 年齢目安 | 入院時の反応例 |
|---|
| 乳児期 | 基本的信頼 | 0~1.5歳 | 見知らぬ人への不安(人見知り) |
| 幼児期前期 | 自律性 | 1.5~3歳 | 「イヤ!」と拒否、排泄の後退 |
| 遊戯期 | 積極性 | 3~6歳 | 見捨てられ不安、罪悪感、マジカルシンキング |
| 学童期 | 勤勉性 | 6~12歳 | 学習や遊びの遅れへの不安 |
| 青年期 | 同一性 | 12~20歳 | 自己像の混乱、仲間からの孤立への不安 |
看護過程ポイント: アセスメントでは、子どもの年齢に応じた発達課題をまず明確にします。看護診断としては「
不安 (Anxiety)」や「
非効果的対処 (Ineffective Coping)」が挙がります。計画では、母親の面会時間の調整や、子どもが安心できる物品(タオルケットやぬいぐるみ)の持参を許可すること、遊戯療法の導入などを検討します。
暗記のコツ: エリクソンの8つの段階は、語呂合わせで「乳・幼・遊・学・青・若・成・老」と年齢順に覚え、各課題のキーワードを結びつけましょう。「遊戯期(3~6歳)=積極性」と、年齢と課題をセットで記憶します。
国試頻出ポイント: 小児看護学の「発達段階に応じた看護」の問題で、エリクソン理論は頻出です。特に、入院環境が子どもの発達課題に与える影響や、プレパレーションの必要性を問う問題がよく出題されます。
出題パターン注意!: 単純な「何歳の課題は何か」という知識問題だけでなく、「事例の中で子どもが見せた行動(夜泣き、退行、反抗など)を、どの発達段階の葛藤として解釈するか」という状況設定問題に発展します。事例文の子どもの年齢と行動をよく読み取り、発達課題に結びつけて考える訓練をしましょう。