核心解説
この問題は、
経尿道的前立腺切除術 (TURP: Transurethral Resection of the Prostate) 術後の急性期看護における、
観察の優先順位を問うています。TURPは内視鏡を尿道から挿入し、前立腺の肥大した組織を切除・焼灼する術式です。術後は切除面からの出血が避けられないため、
膀胱灌流 (Bladder Irrigation) が継続的に行われ、血液が膀胱内で固まってカテーテル閉塞を起こさないように管理します。最も生命と直結するリスクは術後出血であり、それを早期に発見するための観察が最優先となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ②番の「灌流液の色調と出血量の評価」が最も優先度の高い観察事項です。術後出血が持続・増大すると、灌流液の色調が淡赤色から濃赤色へ変化し、凝血塊の混入がみられます。これは活動性出血や止血不良のサインであり、循環動態の変動(血圧低下、頻脈)や膀胱内タンポナーデ(凝血塊によるカテーテル閉塞)を引き起こす可能性があります。看護師は灌流液の色調変化を即座に捉え、医師へ報告し、灌流速度の調整や止血処置を迅速に判断する必要があります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①番の「前立腺重量の評価」は術前に画像検査などで評価済みであり、術後急性期の観察項目として優先度は極めて低いです。
③番の「勃起機能の評価」はTURPの合併症として起こり得ますが(逆行性射精など)、これは術後長期的な経過観察や退院後のフォローアップで評価する項目であり、術後2日目の急性期において出血の評価より優先度は低くなります。
④番の「尿道カテーテルのバルーン容量確認」は、カテーテルの固定や位置確認のために重要ではありますが、
バルーンは通常術中に適切な容量(一般的には20~30mL)で固定されています。確認自体は必要ですが、出血の有無と比較すると緊急性・優先度は劣ります。
⑤番の「前立腺特異抗原 (PSA) の測定値」は前立腺癌のスクリーニングや治療効果判定に用いるもので、TURP術後の急性期観察項目ではありません。良性の前立腺肥大症に対するTURPでは、術直後のPSA測定は通常行いません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
TURP術後は、灌流液の血管内への吸収による
TURP症候群 (TUR Syndrome) にも注意が必要です。これは低ナトリウム血症による意識障害、痙攣、血圧上昇・変動、徐脈、悪心・嘔吐などを呈する重篤な合併症です。灌流液の出入り(流入量と排出量)を正確に記録し、バランスを評価することも重要な観察項目の一つです。出血とTURP症候群、この二つが術後急性期の二大観察ポイントです。
概念整理: TURP術後は、切除面からの出血と灌流液吸収によるTURP症候群が二大リスク。急性期の観察の優先順位は、
1. 出血の有無(灌流液色調・凝血塊)→ 2. TURP症候群の兆候(意識・バイタルサイン)→ 3. 感染兆候・排尿状態 の順となる。
一目で比較!:
| 項目 | TURP術後出血 | TURP症候群 |
|---|
| 原因 | 切除面からの止血不全 | 灌流液の血管内吸収(低Na血症) |
| 主な症状 | 灌流液赤色調増強、凝血塊、血圧低下、頻脈 | 意識障害、痙攣、血圧上昇/変動、徐脈、悪心 |
| 観察の優先度 | 最優先(常時観察) | 高優先(術後数時間~24時間) |
看護過程ポイント:
アセスメント: 灌流液の色調変化を確認し、出血量を定量評価する。バイタルサインと尿量も同時にモニタリング。
看護診断: 「出血リスク状態」「体液量不足リスク状態」「急性疼痛」。
計画・介入: 灌流液速度の調整(医師指示に基づく)、カテーテルの牽引(トラクション)による止血の確認、必要時医師への報告。
評価: 灌流液が淡赤色~透明に改善、出血の停止確認。
暗記のコツ: 「TURP後の観察は『赤い色(出血)』と『頭がボーッとする(TURP症候群)』を覚えよう!まずは出血、次に意識障害!」
国試頻出ポイント: 術後合併症とその観察項目の組み合わせは頻出。特に「TURP後の観察で最も優先すべきことは?」という選択問題や、事例問題で「灌流液の色が濃くなった」場合の看護師の対応を問う形式で出題される。
出題パターン注意!: 「灌流液の色調が濃赤色で凝血塊がみられる」→ 看護師の対応(医師報告、灌流速度増量の確認など)を問う問題に発展。単なる知識問題から、状況判断を含む応用問題への橋渡しを意識すること。