子宮頸癌に対して広汎子宮全摘除術を受けた45歳女性。術後3日目、膀胱留置カテーテルが挿入されている。この患者の看護で適切… | MyMerci
性・生殖機能障害のある患者の看護
問題

子宮頸癌に対して広汎子宮全摘除術を受けた45歳女性。術後3日目、膀胱留置カテーテルが挿入されている。この患者の看護で適切なのはどれか。

解説
広汎子宮全摘除術では骨盤内の自律神経損傷により膀胱知覚低下や排尿筋収縮力低下が生じ、排尿障害をきたす。膀胱訓練としてカテーテルを定期的にクランプすることで膀胱容量を維持し、排尿筋の収縮を促す。抜去時期は個人差があり、残尿測定と自己導尿指導が重要である。

詳細解説

核心解説 この問題は、広汎子宮全摘除術 (Radical Hysterectomy) 後の膀胱機能障害に対する看護を問うています。本術式では、子宮周囲の広範な組織を切除する際に 骨盤神経叢 (Pelvic Plexus) などの自律神経が損傷される可能性が高く、その結果、排尿筋収縮力低下 (Detrusor Hypocontractility)膀胱知覚低下 (Bladder Sensory Loss) をきたし、術後に排尿困難や尿閉が生じやすくなります。この病態を理解することが、適切な看護介入の選択につながります。 正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ③「膀胱訓練として定期的なカテーテルクランプを実施する」が適切です。膀胱訓練(Bladder Training)の目的は、持続的にドレナージされている膀胱に一定時間尿を貯留させることで、膀胱容量の維持・拡大排尿筋反射の再獲得 を促すことです。術後は自律神経損傷により膀胱が伸展しても尿意を感じにくいため、能動的に排尿筋を収縮させる訓練が必要です。定期的なクランプ(例:2~3時間ごとに開放)により、膀胱壁の伸展-収縮サイクルを繰り返し、自然排尿の再建を目指します。 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! カテーテル抜去後すぐに残尿測定を開始するのは適切ですが、「すぐに」という表現が不適切です。抜去直後は膀胱機能が不安定であり、まずは自然排尿の状態を観察し、排尿後すぐに残尿測定(Post-Void Residual, PVR)を行うのが標準的です。抜去直後から測定するのではなく、患者の状態を見極めてから開始します。
② カテーテル抜去後は残尿測定が「不要」であるというのは誤りです。残尿測定は膀胱機能回復の指標として極めて重要です。残尿が多い場合は自己導尿(Clean Intermittent Self-Catheterization, CISC)の指導が必要になります。
④ 「術後1週間で必ず抜去する」という決まりはありません。抜去時期は膀胱機能の回復状態や術式、患者の全身状態により個人差があります。残尿測定の結果や患者の尿意感の回復状況をアセスメントして判断します。
⑤ 自己導尿の指導は重要ですが、残尿が150mL未満になったら自己導尿を終了するのではなく、通常は残尿が 100mL未満 または 50mL未満 かつ安定している場合に自己導尿を中止する基準とすることが多いです。150mLはやや高い基準であり、一般的ではありません。 関連概念の整理 (Related Concepts)
広汎子宮全摘除術後の排尿障害は、神経因性膀胱(Neurogenic Bladder)の一種です。特に 排尿筋低活動 (Detrusor Underactivity) が主体となり、膀胱内圧が上がらず、尿を排出できなくなります。類似した病態として、直腸癌 (Rectal Cancer) 手術後の排尿障害も同様の機序(骨盤神経叢損傷)で生じるため、併せて覚えておくと良いでしょう。 概念整理 - 病態: 広汎子宮全摘術後 → 骨盤神経叢損傷 → 膀胱知覚低下 + 排尿筋収縮力低下 → 排尿困難・尿閉 - 看護のゴール: 膀胱容量の維持・拡大 + 排尿筋反射の再獲得 → 自然排尿の再建 - 介入手段: 膀胱訓練(定期的クランプ)→ 抜去後 → 残尿測定 → 必要時自己導尿指導 一目で比較!
項目広汎子宮全摘術後一般開腹術後
主な排尿障害原因自律神経(骨盤神経叢)損傷麻酔・手術侵襲による一過性膀胱機能低下
障害の程度長期間続く可能性が高い(神経再生が困難)通常は数日~1週間で改善
看護の焦点膀胱訓練 + 自己導尿指導が必須早期離床・自然排尿促すケア中心
看護過程ポイント - アセスメント: 術後早期からの尿意の有無、膀胱充満感の訴え、排尿パターンの変化を観察。カテーテル抜去後は残尿量と排尿困難感を定期的に評価。 - 看護診断: 「排尿障害 (Impaired Urinary Elimination)」または「尿閉 (Urinary Retention)」に関連した「非効果的健康維持 (Ineffective Health Maintenance)」。 - 計画: 膀胱訓練スケジュールの立案(例:2時間クランプ・開放)、抜去後の排尿日誌記録、自己導尿指導計画。 - 実施: カテーテルクランプの時間遵守、患者への尿意・腹部不快感の確認、感染予防のためのカテーテルケア。 - 評価: 抜去後の排尿量・残尿量・尿意の回復度、自己導尿の自立度、尿路感染の有無。 暗記のコツ 「広汎子宮全摘 = 広い範囲の神経を切る = 膀胱の神経もやられる = 排尿できなくなる = 膀胱訓練(クランプ)で膀胱に刺激を与える」とストーリーで覚えましょう。 国試頻出ポイント この問題は「婦人科悪性腫瘍術後看護」の定番です。特に「膀胱訓練の目的(容量維持・排尿筋収縮促進)」と「自己導尿の適応基準(残尿量)」は頻出。術式名(広汎子宮全摘術)と神経障害の関連を問う問題もよく出ます。 出題パターン注意! 今後は「術後5日目、カテーテル抜去後に患者が『尿が出にくい』と訴えた。看護師の対応として最も適切なのはどれか」のような状況設定問題で、残尿測定の実施、医師への報告、自己導尿の指導など具体的な行動を選ばせる形式が増えています。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
45歳女性、子宮頸癌(Cervical Cancer)に対して広汎子宮全摘除術(Radical Hysterectomy)を施行。術後3日目、膀胱留置カテーテル(Indwelling Urinary Catheter)が挿入中です。患者は「まだお腹に管が入っていて、いつ抜けるのか不安です」と看護師に話しました。今日から膀胱訓練(Bladder Training)としてカテーテルの定時クランプ(Clamping)を開始する予定です。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察: まず患者のバイタルサイン(Vital Signs)を確認し、発熱の有無(尿路感染のリスク)、腹部の膨満感や不快感の有無を観察します。カテーテルの挿入部位に発赤や排膿がないかも確認。 2. アセスメント: 膀胱訓練の開始に際して、患者の膀胱機能の状態をアセスメントします。術後の経過が良好で、膀胱の伸展刺激に対する反応を確認するのに適切な時期かどうかを判断。また、患者の不安に対しては、訓練の目的と方法を丁寧に説明することで軽減できるか評価します。 3. 報告(SBAR): もし発熱や腹部の強い張りがあれば、医師へSBARで報告。 - S(Situation): 「45歳女性、子宮頸癌術後3日目、膀胱訓練開始前です。患者に発熱と下腹部の強い張りがあります。」 - B(Background): 「広汎子宮全摘後、骨盤神経叢損傷のリスクがあり、排尿障害が予想されます。」 - A(Assessment): 「尿路感染または膀胱過伸展の可能性があります。訓練開始は延期した方が良いと考えます。」 - R(Recommendation): 「尿培養と血液検査、膀胱超音波検査の実施を提案します。」 4. 介入: 医師の指示に基づき、膀胱訓練を開始。指示例:「カテーテルを2時間クランプし、開放する。患者に腹部不快感がないか確認しながら実施。」患者には「2時間尿を溜めて、溜まったら管を開けて出す練習をします。最初は違和感があるかもしれませんが、膀胱の機能を戻すために大切な訓練です」と説明。必要に応じて、クランプ時間を患者の尿意に応じて調整(例:最初は1時間から開始)。 5. 評価: 訓練中の患者の反応(尿意の有無、腹部不快感の程度)、開放時の尿量を記録。訓練が進んだら、抜去後の計画を立てる。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
注意! 膀胱訓練中の過伸展(Overdistention)は膀胱壁の虚血や感染リスクを高めるため、クランプ時間が長すぎないか(通常2~3時間以内)、患者が強い腹部不快感を訴えたらすぐに開放することを徹底します。また、カテーテル関連尿路感染(Catheter-Associated Urinary Tract Infection, CAUTI)予防として、清潔な手技でのカテーテルケア、閉鎖式ドレナージシステムの維持が必須です。 看護プロトコル - 観察項目: 膀胱訓練中の尿意、腹部膨満、疼痛、発熱、尿の性状(混濁、血尿)、残尿量。 - 報告基準: 発熱(38℃以上)、強い腹部不快感、訓練中に尿が漏れる(溢流性尿失禁の兆候)、血尿、尿量が極端に少ない。 - 記録のポイント: クランプ開始時刻・開放時刻・尿量・患者の反応・腹部の状態を毎回記録。 - 家族への説明: 「術後は膀胱の神経が一時的に麻痺することがあり、排尿の練習が必要です。看護師が一緒に行いますので、ご家族も見守りをお願いします。」 先輩看護師の一言 「子宮頸癌の手術後って、患者さんは『癌が取れた』という安堵と同時に『これからの生活、特にトイレがうまくできるか』という不安を抱えています。膀胱訓練は地味ですが、患者さんのQOLを大きく左右する大切なケアです。『どうしてこんなことするの?』と聞かれたら、『膀胱さんに、また自分でおしっこをすることを思い出してもらう訓練だよ』と優しく説明してあげてください。患者さんのペースを尊重しながら、焦らず一緒に進めていくことが大切です!」

重要概念

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