核心解説
この問題は、
聴性脳幹反応 (Auditory Brainstem Response, ABR) 検査の原理と特徴を問うています。ABRは、音刺激に対する聴覚伝導路の機能を
他覚的(客観的)に評価できる検査であり、被験者の協力や自覚的反応が不要な点が最大の特徴です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ABRは、クリック音などの音刺激を与えた後、頭皮上に貼付した電極を通じて、脳幹の聴覚伝導路(蝸牛神経核、上オリーブ核、外側毛帯、下丘)で発生する
微弱な電気的活動(誘発電位)を記録・波形分析する検査です。この検査は、乳幼児や意識障害のある患者でも実施可能で、新生児聴覚スクリーニングとして広く用いられています。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番「検査時間は約1時間程度である」→
混同注意! 通常のABR検査時間は
約30分程度です。聴性定常反応(ASSR)など他の他覚的聴力検査では時間が長くなる場合があります。
③番「検査中は被験者に運動を促す」→ ABR検査では筋電図ノイズを避けるため、被験者は
安静・睡眠状態が必須です。運動はアーチファクトを生じ、正確な波形記録を妨げます。
④番「被験者の自覚的な反応が必要である」→ ABRは
他覚的聴力検査であり、自覚的反応は不要です。純音聴力検査などの自覚的検査とは対照的です。
⑤番「主に中耳炎の診断に用いられる」→
混同注意! 中耳炎の診断には
ティンパノメトリー(インピーダンスオージオメトリー)や耳鏡検査が用いられます。ABRは主に内耳以降の聴覚伝導路(蝸牛、聴神経、脳幹)の機能評価に用いられます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ABRは「他覚的聴力検査」の代表格です。これに対し、純音聴力検査や語音聴力検査は「自覚的聴力検査」であり、被験者の反応が必要です。新生児スクリーニングではABRと
OAE(耳音響放射,Otoacoustic Emissions)が併用されます。OAEは蝸牛外有毛細胞の機能を評価するのに対し、ABRは脳幹までの神経伝導路全体を評価できる点が異なります。
概念整理: ABRは
脳幹聴覚誘発電位 (Brainstem Auditory Evoked Potential, BAEP)とも呼ばれ、音刺激後10ms以内に出現するI〜V波(特にV波)を分析します。各波の出現潜時や振幅を評価し、聴神経腫瘍や多発性硬化症などの診断にも応用されます。
一目で比較!:
| 検査名 | 種類 | 主な評価対象 | 被験者負担 |
|---|
| ABR | 他覚的 | 脳幹までの聴覚伝導路 | 最小(睡眠中可) |
| 純音聴力検査 | 自覚的 | 各周波数の聴力閾値 | 中等度(協力必須) |
| ティンパノメトリー | 他覚的 | 中耳機能(鼓膜・耳小骨) | 最小 |
看護過程ポイント: アセスメントでは、検査前に被験者(特に乳幼児)を
自然睡眠に導くための環境調整(薄暗い部屋、授乳、抱っこなど)が重要です。検査中は筋電図ノイズを防ぐため、被験者の体動を最小限に抑える援助が必要です。
暗記のコツ: 「ABR = 脳幹の電気的反応をみる検査。患者さんは寝ていてOK(他覚的)。30分で終了。」と覚えましょう。「A = Auditory(聴覚の)、B = Brainstem(脳幹)、R = Response(反応)」の頭文字もそのままです。
国試頻出ポイント: ABRは「新生児聴覚スクリーニング」「他覚的聴力検査」「被験者の自覚的反応は不要」の3点が頻出です。また、中耳炎診断との混同を避けるために、ティンパノメトリーとの使い分けも併せて出題されます。
出題パターン注意!: 「聴性脳幹反応(ABR)検査はどれか」という単純知識問題に加え、「新生児の聴覚スクリーニングに用いられるのはどれか」「意識障害患者の聴覚評価に適しているのはどれか」といった応用問題にも対応できるようにしておきましょう。