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感覚機能障害のある患者の看護
網膜剥離の患者に対する術後の看護で正しいのはどれか。
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1
術後はすぐに日常生活動作を再開してよい
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2
頭部を高くして安静にする
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3
眼圧上昇を予防するため散瞳薬を点眼する
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4
手術した側を下にして臥床する
✓ 正解
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5
咳嗽やくしゃみを我慢するよう指導する
解説
網膜剥離術後は、網膜を復位させるためにガスやシリコーンオイルを眼内に注入することが多い。ガスが網膜を圧迫するよう、手術した側を下にして臥床する体位制限が必要である。頭部を高くするとガスが上方に移動するため避ける。咳嗽やくしゃみは眼圧変動を招くが我慢せず、医師に相談する。散瞳薬は眼圧上昇のリスクがある。
同じテーマの次の問題60歳の男性が、数か月前から徐々に進行する視力低下を訴えて来院した。眼科診察で、視野の中心部がゆがんで見える症状が確認された。この患者の症状として最も考えられるのはどれか。この問題が収録された問題集成人看護学KRW 12,900
核心解説
この問題は、網膜剥離 (Retinal Detachment) 術後の看護における正しい体位管理とケアを問うています。術後は、網膜を復位させるために眼内にガスやシリコーンオイルを注入することが多く、そのガスの浮力を利用して網膜を押さえつけるための 厳密な体位制限 (Positioning Restriction) が最優先となります。この原理を理解することが、正答を導く鍵です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 正解は「手術した側を下にして臥床する」です。網膜剥離術後は、眼内に注入されたガス(または空気)が網膜剥離部位を上から押さえつけるように浮く性質を利用します。そのため、剥離部位(手術した側)を重力方向の最下点に位置させることで、ガスが網膜を効果的にタンポナーデ(圧迫固定)し、網膜の復位を促進します。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①番「術後はすぐに日常生活動作を再開してよい」は誤り。網膜復位には時間がかかり、急な頭部運動や体動はガスの位置を変え、復位を阻害するため、安静が必要です。
②番「頭部を高くして安静にする」は誤り。ガスは空気より軽いため、頭部を高くするとガスが上方(水晶体や隅角)に移動し、網膜への圧迫効果が失われるだけでなく、続発性緑内障 (Secondary Glaucoma) や白内障を引き起こすリスクがあります。基本的に頭部は水平または患側を下にします。
③番「眼圧上昇を予防するため散瞳薬を点眼する」は誤り。混同注意! 散瞳薬(例:トロピカミド)は眼圧を上昇させる可能性があり、特に閉塞隅角緑内障のリスクを高めます。術後は眼圧上昇を予防するため、散瞳薬は禁忌とされることが多いです。眼圧コントロールには房水産生抑制薬や点眼の圧迫法が用いられます。
⑤番「咳嗽やくしゃみを我慢するよう指導する」は誤り。咳嗽やくしゃみは急激な眼圧上昇を招き、術後の眼内環境に悪影響を与えますが、無理に我慢すると胸腔内圧が急上昇し、かえって眼圧変動を大きくする危険があります。「我慢せずに、軽く口を開けて行う」「医師や看護師に伝える」ように指導します。
関連概念の整理 (Related Concepts):
網膜剥離の手術法(強膜バックリング、硝子体手術)と、術後のガス注入・シリコーンオイル注入の違いも押さえておきましょう。ガスは自然吸収されますが、シリコーンオイルは後日摘出手術が必要です。また、術後の安静期間中は深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis, DVT) 予防のためのフットポンプや弾性ストッキングの併用も重要です。
概念整理: 網膜剥離術後の体位制限の原理は「ガスの浮力を利用したタンポナーデ効果」。剥離部位(手術側)を最下点にすることで、ガスが網膜を押さえつける。ガスの移動を防ぐため、頭部の角度・方向の急変は禁忌。
一目で比較!:
| 状態 | 許容される体位 | 禁忌の体位 |
|---|
| 網膜剥離術後(ガス注入) | 患側を下にした腹臥位・側臥位(剥離部位による) | 頭部挙上(30度以上)、健側を下にした体位 |
| 白内障術後 | 基本的に自由。ただし術後1日目は安静 | うつ伏せ(眼圧上昇リスク) |
| 緑内障術後(濾過手術) | 仰臥位または軽度頭部挙上(30度未満) | 腹臥位(濾過胞圧迫リスク) |
看護過程ポイント: アセスメントでは「手術記録からガス注入の有無と剥離部位を確認」「体位制限中の安楽確保(クッション調整、体位変換の工夫)」「転倒リスク(体位制限によるバランス不良)」。看護診断例:「術後の体位制限に関連した非効果的健康維持パターン」「痛み(眼痛、背部痛)に関連した不安」。
暗記のコツ: 「網膜剥離は、網膜が剥がれた箇所をガスで押さえたい!→ ガスは空気より軽い → 押さえたい場所を下にする → 患側を下!」とイメージしましょう。コップの底に沈んだ紙を、軽い発泡スチロールの球で押さえるイメージです。
国試頻出ポイント: 網膜剥離術後の「体位制限(特にガス注入時)」は毎年と言っていいほど出題されます。具体的な体位(「患側を下」「頭部水平」)と、禁忌行為(「頭部挙上」「うつ伏せ禁止」)をセットで覚えましょう。
出題パターン注意!: 単純な知識問題に加え、「患者が夜中に無意識に寝返りを打ってしまった場合の対応」「ガス注入後に飛行機に乗ることはなぜ禁忌か(気圧変化によるガス膨張リスク)」のような応用問題にも注意。
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario):60代女性、左眼の網膜剥離に対し、硝子体手術 + ガス注入術を受け、病棟に帰室しました。医師から「左眼側を下にして、頭部は水平位で安静。2時間ごとに体位を微調整。咳嗽・くしゃみは我慢せずコールを。」と指示が出ています。夜勤帯、患者が「背中が痛くて眠れない」と訴え、自分で仰向けになろうとしています。看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):最重要! 観察 → アセスメント → 報告 → 介入 → 評価 の流れで行います。- 1観察患者の現在の体位、表情(疼痛スケール)、バイタルサイン、眼帯の状態、眼痛の有無を確認。
- 2アセスメント背部痛は長時間の同一体位による筋緊張と判断。仰向けになることは、ガスの位置が変わり網膜復位を妨げるため禁忌。まずは許容範囲内で体位を調整する必要がある。
- 3報告医師に背部痛の状況を報告し、体位調整の指示を仰ぐ(例:「左側臥位を保ったまま、上体を30度未満まで挙上しても良いか」)。
- 4介入医師の許可を得て、左側を下にしたまま、膝を軽く曲げる、背中にクッションを当てる、腰の下に薄いタオルを入れるなど、安楽な姿勢を工夫する。眼帯を触らないよう注意しながら、体位変換(左側臥位から右側臥位への変更は不可。左側臥位のまま上体の角度や手足の位置を調整)を行う。
- 5評価痛みが軽減したか、患者がリラックスできたか、眼痛や吐き気(眼圧上昇のサイン)の有無を確認。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):- 転倒リスク: 体位制限により視野が制限され、バランスを崩しやすい。ベッド柵を上げ、ナースコールを手の届く場所に置く。- 眼圧上昇サイン: 激しい眼痛、吐き気・嘔吐、視野狭窄(特に光が虹色に見えるハロー現象)。これらがあれば直ちに医師に報告。- 感染予防: 術後は眼内感染リスクが高い。手洗い励行、点眼時の無菌操作厳守。- 心理的ケア: 体位制限によるストレスと不安に寄り添い、「この姿勢は網膜を治すためにとても大切な姿勢ですよ」と説明し、協力を得る。 看護プロトコル: 観察項目(疼痛、視力、眼圧、眼脂の有無、体位遵守状況)、報告基準(疼痛増強、吐き気、視力低下、眼圧上昇疑い)、記録(体位の種類と時間、患者の反応、疼痛スケール、医師への報告内容と指示)、家族への説明(体位制限の理由と協力依頼、面会時の注意点)。
先輩看護師の一言: 「網膜剥離術後の体位制限は、患者さんにとっては『つらい』『なぜこんな姿勢を取らなきゃいけないの?』と思われることも多いんです。でも、この体位が網膜の生着率を大きく左右することを、優しく根拠と共に伝えてあげてください。『この姿勢は、目の奥の剥がれた網膜をガスで押さえてくっつけるための、とっても大事な治療なんですよ』と説明すると、患者さんも納得して協力してくれますよ!」
- 網膜剥離 (Retinal Detachment) — 網膜が色素上皮から剥がれ、視細胞が機能不全に陥る疾患。光が届かなくなり、視野欠損や視力低下を来す。
- 硝子体手術 — 眼内の硝子体を切除し、網膜を復位させる手術。しばしばガスやシリコーンオイルを眼内に注入する。
- ガス注入 (Gas Tamponade) — 網膜を物理的に押さえつけるため、眼内に空気や特殊ガス(SF6, C3F8など)を注入する術式。
- 体位制限 (Positioning Restriction) — ガスが網膜剥離部位を効果的に圧迫できるよう、特定の体位を一定期間維持すること。術後の復位成功率に直結する。
- 眼圧上昇 (Increased Intraocular Pressure) — 術後のガス膨張や炎症、散瞳薬などにより眼圧が上昇する状態。放置すると視神経障害(緑内障)を引き起こす。
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