80歳の男性が、転倒により大腿骨頸部骨折を受傷した。入院後、夜間に「壁に虫が這っている」と訴え、興奮状態となった。この患… | MyMerci
感覚機能障害のある患者の看護
問題

80歳の男性が、転倒により大腿骨頸部骨折を受傷した。入院後、夜間に「壁に虫が這っている」と訴え、興奮状態となった。この患者の症状として最も考えられるのはどれか。

解説
高齢者が入院や手術などの身体的・精神的ストレスを受けた後に、夜間に幻視(特に小動物や虫など)や興奮を生じるのは、せん妄の典型的な症状である。せん妄は急性発症で変動性があり、注意障害や意識レベルの低下を伴う。認知症は慢性進行性であり、うつ病や統合失調症とは症状経過が異なる。

詳細解説

核心解説 この問題は、高齢者の術後急性期に生じる せん妄 (Delirium) の特徴を問うています。せん妄は、身体疾患や手術、薬剤、環境変化などの要因で急性に発症する意識障害であり、特に 高齢者 では頻発します。病態生理学的には、神経伝達物質(特にアセチルコリン低下、ドーパミン過剰)のバランス異常や、炎症性サイトカイン の上昇が関与します。

症状は 急性発症日内変動(特に夜間に悪化)が特徴です。本例では、夜間に「壁に虫が這っている」という 幻視 (Visual Hallucination)興奮 (Agitation) がみられます。これはせん妄の典型像であり、高齢者の入院や手術という 誘因 (Precipitating Factor) が存在します。 正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 本例は、高齢 + 大腿骨頸部骨折による入院 + 手術後の身体的ストレス + 夜間の症状悪化 というプロフィールから、せん妄の診断基準(急性発症、変動性、注意障害、意識レベルの低下)に合致します。幻視や興奮はせん妄の頻出症状であり、原因疾患や環境調整(見当識障害へのケア)が看護介入の優先課題となります。 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①番 適応障害 (Adjustment Disorder): ストレス因に対する心理的反応ですが、幻視や意識障害を伴うことは稀で、せん妄のような急性で変動する意識障害は特徴ではありません。 ②番 認知症 (Dementia): 慢性進行性 の経過をたどり、急性発症ではない点が決定的な違いです。せん妄は認知症に併発することもありますが、本例のように入院を契機に急激に出現する症状はせん妄が第一に考えられます。 ④番 統合失調症 (Schizophrenia): 幻覚(特に幻聴)がみられますが、意識障害は通常伴わず、発症時期も若年~中年に多いです。高齢者の急性期症状としては非典型的です。 ⑤番 うつ病 (Major Depressive Disorder): 意欲低下や抑うつ気分が主体であり、幻視や興奮を急性に呈することはありません。 関連概念の整理 (Related Concepts)
せん妄と認知症の鑑別は国試頻出ポイントです。
項目せん妄認知症
発症急性(数時間~数日)慢性進行性(数ヶ月~数年)
経過変動性(特に夜間悪化)比較的安定
意識障害あり(注意障害・意識レベルの変動)末期まで保たれることが多い
原因治療可逆性あり(原因除去で改善)根治困難(進行性)

概念整理: せん妄 は、身体的ストレス(手術、感染症、電解質異常、薬剤など)を背景に急性発症する意識障害。高齢者、認知症の既往、多剤併用がリスク因子。
一目で比較!: せん妄 vs 認知症 vs 統合失調症。特に発症様式(急性 vs 慢性)と意識障害の有無が鑑別の鍵。
看護過程ポイント: アセスメント:バイタルサイン、意識レベル(JCS/GCS)、原因検索(感染症、低酸素、低血糖、電解質異常、薬剤)。看護診断:急性混乱 (Acute Confusion)、転倒リスク (Risk for Falls)。介入:環境調整(見当識を促す物品配置、夜間の照明調整)、家族付き添い、非薬物的介入(声かけ、見当識訓練)。評価:症状の変動パターン、原因除去の効果。
暗記のコツ: 「急性で変動、夜間に悪化、高齢者の入院で起こる」=せん妄。「慢性進行、比較的安定」=認知症。
国試頻出ポイント: 高齢者の術後・入院後の意識障害はせん妄を第一に考える。誘因(手術、感染症、薬剤、脱水)と症状(幻視、興奮、注意障害)の組み合わせ問題が頻出。
出題パターン注意!: 単純な症状の名称を問う問題から、事例問題で「この患者の夜間の興奮の原因は何か」「まず行うべきアセスメントは何か」のように発展します。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
80歳男性、大腿骨頸部骨折で手術後3日目。夜間帯にナースコールが鳴り、訪室すると患者がベッド上で体を起こし「壁に虫がたくさんいる! 取ってくれ!」と興奮して訴えています。バイタルサイン:血圧 148/92 mmHg、脈拍 98回/分、SpO2 96%、体温 37.1℃。心電図モニターは洞調律。持続点滴が自己抜去しかけています。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
最重要! まずは 患者とスタッフの安全確保 を最優先。興奮による転倒・転落や、点滴ルートの自己抜去による出血・感染リスクをアセスメントします。
1. 観察:意識レベル(JCS)、バイタルサイン、SpO2、血中酸素化、体温(感染の有無)、尿量(脱水の有無)、薬剤歴(特に抗コリン薬、ベンゾジアゼピン系、オピオイドの影響)。 2. アセスメント:術後高齢者の せん妄 と判断。原因として麻酔の影響、術後疼痛、不眠、環境変化(見当識障害)、電解質異常、低酸素血症などを考慮。 3. 報告:SBAR形式で医師に報告。「S(状況):夜間帯にせん妄が出現。B(背景):大腿骨頸部骨折術後3日目。A(アセスメント):せん妄と判断。R(推奨):原因検索のための検査(血液ガス、電解質、感染症マーカー)と非薬物的介入の指示を依頼。」 4. 介入:安全確保のため 抑制帯 ではなく、見当識を促す声かけ(「今は病院です。夜の9時です。大丈夫ですよ。」)、家族への協力依頼、点滴ラインの固定強化、ベッド柵の設置。薬物療法が必要な場合は低用量ハロペリドールなどを検討(医師指示に基づく)。 5. 評価:30分~1時間ごとに症状の変動を確認。原因の除去(例:疼痛管理、酸素投与、輸液)により症状が軽減するかを評価。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 転倒・転落予防:ベッド柵を上げ、マットレスを低く設定。離床センサーやナースコールの利用。 - 抑制帯は最終手段:身体拘束は患者の尊厳を損ない、興奮を増強させるため、非薬物的介入を優先。医師の指示と院内プロトコルに従う。 - 感染対策:点滴自己抜去による感染リスクに注意。ルートの固定状態と刺入部の観察を徹底。
看護プロトコル: せん妄スケール(例:NEECHAM混乱スケール、CAM-ICU)を用いて評価。夜間帯は照明を薄暗くしすぎず、見当識を保つ工夫(時計、カレンダー、家族の写真)。
先輩看護師の一言: 「高齢者のせん妄は『ただの興奮』じゃないんです。患者さんの『いつもと違う』サインを見逃さないで! 例えば、夜中に急に落ち着かなくなったり、点滴を触ったりしたら、まずはせん妄を疑って。原因を取り除くことが最優先。そして何より、患者さんの不安を和らげるために、優しく『ここは病院ですよ』と声をかけてあげてください。抑制は本当に最終手段です。」

重要概念

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