核心解説
この問題は、
平衡感覚障害 (Equilibrium Disorder / Balance Disorder) のアセスメントにおける歩行観察の優先ポイントを問うています。平衡機能を評価する際、視覚、前庭感覚、固有感覚の統合が重要であり、特に
視覚入力が遮断された状態(閉眼)で平衡がどのように変化するか を観察することが、障害の原因部位(脊髄後索、前庭系、小脳)を鑑別する鍵となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 平衡感覚障害のアセスメントでは、
開眼時と閉眼時での歩行や立位保持の違い を観察することが最も重要です。特に
ロンベルグ試験 (Romberg Test) では、閉眼によって動揺が著明に増強する場合、
脊髄性運動失調 (Spinal Ataxia) や
前庭性障害 (Vestibular Disorder) が疑われます。一方、小脳性運動失調 (Cerebellar Ataxia) では開眼・閉眼に関わらず動揺が認められます。このように、視覚代償の有無を評価することが病態鑑別に直結します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! 歩行のリズムの規則性は、パーキンソン病 (Parkinson's Disease) などの
錐体外路障害 (Extrapyramidal Disorder) の評価には有用ですが、平衡感覚障害のアセスメントとして最優先ではありません。
②
正解。平衡機能評価の基本です。
③ 靴の種類と摩耗状態は、歩行パターンの習慣的な偏り(内反尖足など)を知る手がかりにはなりますが、平衡感覚障害の直接的なアセスメントにはなりません。
④ 歩行時の腕の振りの大きさは、
混同注意! パーキンソン病でみられる「腕振り減少 (Decreased Arm Swing)」の評価には使えますが、平衡感覚障害の優先観察項目ではありません。
⑤ 歩行速度の速さは、筋力低下や易疲労性、呼吸器疾患の影響を受けやすく、平衡感覚障害の特異的な指標とはなりません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
平衡感覚障害のアセスメントでは、以下の3つの病態を鑑別します。
| 病態 | 特徴 | ロンベルグ試験 |
|---|
| 脊髄性運動失調 (Spinal Ataxia) | 固有感覚障害 (深部感覚障害) | 閉眼で動揺増強(陽性) |
| 前庭性障害 (Vestibular Disorder) | めまい、眼振 | 閉眼で動揺増強(陽性) |
| 小脳性運動失調 (Cerebellar Ataxia) | 協調運動障害、測定障害 | 開眼でも閉眼でも動揺(陰性) |
概念整理: 平衡感覚は
視覚 (Vision)、
前庭感覚 (Vestibular Sense)、
固有感覚 (Proprioception) の3つの入力が統合されて成り立つ。視覚遮断(閉眼)により代償が働かなくなるため、障害の有無が顕在化する。
一目で比較!: ロンベルグ試験陽性(閉眼で動揺増強) vs 陰性(開眼でも閉眼でも動揺)。陽性なら脊髄性・前庭性、陰性なら小脳性を疑う。
看護過程ポイント:
アセスメント:ロンベルグ試験、歩行観察(開眼・閉眼での変化)、めまい・眼振の有無。
看護診断:転倒リスク状態、身体可動性障害。
介入:転倒予防(歩行補助具、環境整備)、安全な移動介助。
暗記のコツ: 「
ロンベルグは
閉眼で
陽性」→「ロン・閉・陽」と覚えましょう!
国試頻出ポイント: 事例問題で「患者が閉眼でふらつく」という所見から、どの神経系の障害かを問う問題が頻出。平衡機能の評価方法(ロンベルグ試験、マン試験、片足立ち)と異常所見の解釈は確実に押さえること。
出題パターン注意!: 「高齢の患者が歩行時にふらつく」という状況で、「看護師が行うべきアセスメントとして適切なのはどれか」と発展。単なる知識問題から、臨床判断を問う事例問題への応用が可能。