68歳男性、パーキンソン病で薬物療法を受けている。すくみ足と転倒が問題となっている。転倒予防のための看護指導として最も適… | MyMerci
身体防御機能の障害のある患者の看護
問題

68歳男性、パーキンソン病で薬物療法を受けている。すくみ足と転倒が問題となっている。転倒予防のための看護指導として最も適切なのはどれか。

解説
パーキンソン病のすくみ足には、視覚的・聴覚的刺激が有効である。リズムに合わせて歩くことで歩行が促される。足元を見ると前傾姿勢が強まり転倒リスクが高まる。敷物はつまずきの原因となる。腕振りはパーキンソン病では減少するため、無理に大きくすることは難しい。すくみ足時は無理せず立ち止まり、リズムを再開するのが安全である。

詳細解説

核心解説 この問題は、パーキンソン病 (Parkinson’s Disease) 患者の転倒予防における看護指導の優先順位を問うています。パーキンソン病の中核症状である無動 (Akinesia) / 寡動 (Bradykinesia)固縮 (Rigidity)振戦 (Tremor)、そして特に本問の主題であるすくみ足 (Freezing of Gait: FOG)の病態を理解することが鍵です。すくみ足は、歩行開始時や方向転換時、狭い場所で突然足が地面に張り付いたように動かせなくなる現象で、転倒の最大のリスク因子です。この病態に対する非薬物的介入として、最重要! 視覚的・聴覚的な外部刺激(キュー)を用いて歩行を促進する方法が確立されています。 正解の根拠 (Answer Rationale) ①の「歩行開始時に『1、2、1、2』とリズムを取るよう指導する」が最も適切です。これは聴覚的キュー (Auditory Cueing)と呼ばれる手法で、メトロノームや掛け声のリズムに合わせて足を踏み出すことで、大脳基底核の機能不全により失われた歩行の自動性を補完します。リズム刺激は、運動の開始と維持を助け、すくみ足の発生頻度を減らし、転倒予防に効果的です。 誤答の分析 (Distractor Analysis) ②番の「歩行時の腕振りを大きくするよう指導する」: 混同注意! パーキンソン病患者では、固縮の影響で腕振り(連合運動)が減少します(腕振り減少 (Decreased Arm Swing))。しかし、「意識的に大きく振る」よう指導しても、患者にとっては難しく、むしろバランスを崩す原因になります。腕振りは歩行改善の結果として自然に改善されるものであり、直接的な指導目標にはなりません。 ③番の「床に敷物を多く敷くよう指導する」: 禁忌! 敷物の端はつまずきの原因となり、転倒リスクを著しく高めます。パーキンソン病患者の環境整備では、床の段差をなくし、滑りにくい素材にすることが基本です。 ④番の「すくみ足が出現したら無理に歩き続けるよう指導する」: 危険! すくみ足時に無理に歩こうとすると、前傾姿勢が強まり、加速歩行(小刻み歩行、Festination)に移行して転倒します。正しくは、「すくみ足が出現したら立ち止まり、リズムを再開する」よう指導します。 ⑤番の「歩行時は足元を見るよう指導する」: 足元を見ると、さらに前傾姿勢(前傾姿勢 (Forward Flexed Posture))が強まり、重心が前方に移動して転倒しやすくなります。歩行時は前方を見るよう指導します。 概念整理: パーキンソン病の歩行障害と転倒予防
・すくみ足 (FOG): 歩行開始・方向転換時などに足が動かなくなる。転倒の直接原因。
・加速歩行 (Festination): 小刻みで前のめりになり、止まれなくなる状態。
・治療の基本: 薬物療法(L-DOPAなど)とリハビリテーション(運動療法、キュー療法)。
・非薬物的介入: 聴覚的キュー (Auditory Cue)(リズム、音楽)、視覚的キュー (Visual Cue)(床のテープ、レーザーポインター)。 一目で比較!: 歩行障害への介入比較
症状適切な指導不適切な指導
すくみ足 (FOG)リズムを取る・床の目印を見る無理に歩き続ける・足元を見る
加速歩行 (Festination)立ち止まる・大きく足を上げるよう意識速度を上げる・前方に重心を移動させる
姿勢保持障害重心を後方に保つ練習前傾姿勢を助長する指導
看護過程ポイント
アセスメント: すくみ足の出現状況(時間帯、場所、日内変動)、転倒歴、歩行補助具の使用状況、服用薬剤(L-DOPAのオン/オフ現象の有無)。
看護診断: 「転倒リスク状態 (Risk for Falls)」、「歩行障害 (Impaired Walking)」
計画・実施: 環境調整(段差除去、手すり設置)、キュー療法の指導、服薬アドヒアランスの支援。
評価: 転倒発生件数の減少、歩行能力の維持・改善、患者・家族の指導内容の理解度。 暗記のコツ
「パーキンソン病の歩行指導は『目と耳でリズム』」と覚えましょう!
- 目(視覚):床のテープや目標物を見て歩く。
- 耳(聴覚):「1,2,1,2」の掛け声やメトロノームでリズムを刻む。
- やってはいけない:「足元を見る」「無理に歩く」「敷物を増やす」。 国試頻出ポイント
パーキンソン病の歩行障害(すくみ足、加速歩行)と転倒予防指導は、最重要頻出テーマです。特に「すくみ足には外部刺激(キュー)が有効」という知識は、状況設定問題でも問われます。誤って「足元を見る」「腕を大きく振る」といった指導を選ばないよう、混同注意! 出題パターン注意!
本問のような単純な指導内容の選択に加え、以下のような状況設定問題に発展します。
「パーキンソン病でL-DOPA内服中の患者が、朝方にすくみ足が出現し、トイレに行く途中で転倒しそうになった。看護師の適切な対応は?」
→ 答えの一つとして、「歩行開始前にその場で足踏みのリズムを取らせる」「患者の肘を支え、前方を向くよう促す」などが挙げられます。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 68歳男性、パーキンソン病歴10年。L-DOPA内服中。自宅での転倒が2回あり、訪問看護師が介入することになりました。患者は「朝起きた後や、トイレの前で足が動かなくなって困る」と話します。訪問看護師として初回訪問時に行うべき転倒予防指導を考えます。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 最重要! まず、すくみ足が発生する具体的な状況(時間帯、場所、前後の動作)を詳しく聴取します。
1. 観察 (Observation): 歩行状態(歩隔、歩幅、姿勢、腕振り)、すくみ足の誘発因子、転倒リスクアセスメントツール(例:STRATIFY)の評価。
2. アセスメント (Assessment): すくみ足はL-DOPAの効果が切れるオフ時期に多い。服薬アドヒアランスと症状の日内変動(オン/オフ現象)を評価。
3. 報告・介入 (Report & Intervention): 医師に状況を報告(SBAR)。転倒予防のための具体的な環境調整と歩行指導を実施。
- 聴覚的キュー: 「歩き始める前に『1、2、1、2』と声に出して、それに合わせて歩く練習をしてみましょう」
- 視覚的キュー: トイレまでの通路にカラーテープを貼り、その線をまたぐように歩く練習。
- 環境調整: 敷物の撤去、手すりの設置、照明の明るさ調整。
4. 評価 (Evaluation): 1週間後、転倒の有無、歩行指導の実施状況、すくみ足の頻度変化を再評価します。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 重要! パーキンソン病患者は、薬効のオン/オフにより状態が大きく変動します。訪問時は必ず服薬時間と現時点の症状を確認してから指導を行ってください。また、視覚的キュー(テープ)はつまずきの原因にならないよう、床にしっかりと貼付し、端が浮かないように注意します。 看護プロトコル
- 観察項目: 服薬状況(L-DOPAの内服時間・用量)、歩行状態(特にすくみ足の有無・頻度・持続時間)、転倒リスク(環境・身体的・薬剤性)、姿勢・バランス。
- 報告基準(SBAR): 「状況(S): 患者が朝方にすくみ足で転倒しそうになりました。背景(B): パーキンソン病でL-DOPA内服中、オン/オフ現象あり。評価(A): すくみ足に対する歩行指導が必要です。提案(R): 歩行リズム指導と環境調整の指示をいただけますか?」
- 記録のポイント: 指導内容(聴覚的キュー、視覚的キュー)、患者・家族の反応、転倒予防のための具体的な環境調整内容。 先輩看護師の一言
「パーキンソン病の患者さんにとって、転倒は一瞬の出来事ですが、その後の生活の質(QOL)を大きく低下させます。国試では『すくみ足にはリズム刺激』と暗記しがちですが、現場では『その患者さんに合ったキューは何か』を一緒に考え、試行錯誤することが大切です。患者さんが『できた!』と笑顔になる瞬間が、この仕事のやりがいです!」

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