70歳男性、慢性閉塞性肺疾患(COPD)で在宅酸素療法(HOT)を導入中。看護師が訪問時に患者から「最近、息切れが強くな… | MyMerci
身体防御機能の障害のある患者の看護
問題

70歳男性、慢性閉塞性肺疾患(COPD)で在宅酸素療法(HOT)を導入中。看護師が訪問時に患者から「最近、息切れが強くなり、階段を上るのがつらい」と訴えがあった。SpO2は安静時95%、歩行後88%であった。看護師の対応として最も適切なのはどれか。

解説
COPD患者の息切れ増悪は、感染症や病状進行の可能性がある。看護師は医師に連絡し、治療方針の再検討を依頼する必要がある。酸素流量の変更は医師の指示が必要であり、看護師の判断のみで行うことはできない。また、状態悪化時に訪問頻度を減らすことは不適切である。

詳細解説

核心解説 この問題は、慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者在宅酸素療法 (HOT) 導入中の増悪時対応を問うています。重要なのは、息切れの増強と労作時SpO2低下という新たな症状の出現が、感染症や病状の急性増悪を示唆している点です。看護師は指示範囲内での対応が求められ、状態変化に気づいたら第一に医師へ報告し、治療方針の再検討を依頼する責任があります。

正解の根拠 (Answer Rationale): ①が適切です。患者の自覚症状(息切れ増強)と客観的データ(歩行後SpO2 88%)は、COPD急性増悪 (Acute Exacerbation of COPD) の可能性を示しています。原因として呼吸器感染症が最も多く、早期の診断と治療介入が必要です。看護師は観察結果を基に、SBAR(状況・背景・アセスメント・提案)を活用してかかりつけ医へ報告し、医師の指示を仰ぐことが適切な行動です。

誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ②番の「酸素流量の変更」は看護師の判断では実施できません。酸素流量は医師の指示に基づく必要があり、指示なしでの変更は禁忌行為 (Contraindicated Action)です。また、安易な酸素流量増加はCOPD患者においては高二酸化炭素血症(CO2ナルコーシス)を誘発する危険性があります。
③番は誤りです。歩行後SpO2 88%は異常値 (Abnormal Value)であり、安静時95%からの低下を問題視しないことは不適切です。
④番は過剰反応です。現時点では呼吸困難は安静時ではなく労作時であり、バイタルサインに急激な変動がなければ、直ちに救急搬送するよりまずはかかりつけ医への相談が優先されます。
⑤番は明らかに不適切です。症状増悪時に訪問頻度を減らすことは、患者の安全を損なう危険な行為です。

関連概念の整理 (Related Concepts): COPD在宅酸素療法 (HOT) の適応基準は、安静時PaO2 55Torr以下、または60Torr以下で肺高血症や心不全を合併する場合です。在宅酸素療法中の患者のSpO2目標は90%以上 (Target SpO2)とされています。また、COPD増悪の原因となる感染症予防として、インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されています。

概念整理: COPD急性増悪は、息切れ・咳・痰量の増加が主症状。感染や環境因子が誘因。看護師の役割は、早期発見と医師への報告、指示に基づく酸素療法・薬物療法(気管支拡張薬・ステロイド・抗菌薬)の実施、患者教育と心理的支援。

一目で比較!: 在宅酸素療法 (HOT) 患者の急変対応
状態SpO2値看護師の対応
安定時90%以上(目標)継続観察、自己管理支援
軽度低下安静時85-89%安静、体位変換(ファウラー位)、医師報告
高度低下88%以下持続医師報告、酸素流量調整の指示待ち、救急準備
急変(意識低下)測定不能直ちに救急要請(119番)、BLS開始


看護過程ポイント: アセスメントでは、単なるSpO2値だけでなく、呼吸数・呼吸パターン(口すぼめ呼吸、補助筋使用の有無)、痰の性状・量、意識レベル、発熱の有無を総合的に評価。看護診断としては「ガス交換障害 (Impaired Gas Exchange)」「非効果的気道クリアランス (Ineffective Airway Clearance)」「活動耐性低下 (Activity Intolerance)」が優先される。計画では、指示に基づく酸素流量調整、吸入薬の確実な実施、呼吸リハビリテーション(呼吸法指導、ADL訓練)を含める。

暗記のコツ: 「COPDの増悪サインは『3つの増加』」→「息切れの増加、痰の量の増加、痰の色が黄色・緑色へ変化」と覚えましょう。この3つが揃ったら、すぐに医師報告です!

国試頻出ポイント: COPD増悪時の看護師の判断(医師報告 vs 指示の範囲内での対応)、酸素療法の指示系統(医師の指示が必要)、SpO2正常値・目標値、在宅酸素療法の適応基準が頻出。状況設定問題で、バイタルサインやSpO2値から増悪を察知し、適切な行動を選択させる形式が多い。

出題パターン注意!: 本問のような単純知識問題に加え、「COPD患者が『昨夜から息苦しい』と訪問看護師に訴えた。SpO2 92%、呼吸数28回/分、体温37.8℃。痰は黄色で量増加。最初に行うべき対応は?」といった具体的な数値と症状が与えられる状況設定問題への対応も準備しておきましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド この事例は、在宅看護の現場で頻繁に遭遇するシナリオです。COPD患者は冬季に特に増悪リスクが高まります。

臨床シナリオ (Clinical Scenario): 70歳男性、COPD(GOLD分類:ステージIII)で在宅酸素療法(HOT)を導入して1年。訪問看護師が定期訪問したところ、「3日前から風邪気味で、昨日から階段を上るのがきつくなった」と話す。観察項目として、SpO2(安静時95%、歩行後88%)、呼吸数(安静時20回/分、歩行後30回/分)、体温37.6℃、痰はやや黄色で中等量。意識清明。バイタルサインに急変はない。

看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
1. 観察: バイタルサイン(特に呼吸数、SpO2、体温)、呼吸音(ラ音、ウィーズの有無)、意識レベル、痰の性状・量・色を詳細に評価。
2. アセスメント: 最重要! 発熱(37.6℃)、痰の黄色化、労作時呼吸困難の増強から、呼吸器感染症によるCOPD急性増悪が強く疑われる。安静時SpO2が目標値(90%以上)を維持しているため、現時点での緊急度は高いが、すぐに救急搬送が必要なレベルではないと判断。
3. 報告(SBAR): 医師へ「状況(S):COPDの患者さんで、3日前から風邪症状があり、今日は労作時呼吸困難が増強しています。背景(B):HOT導入中、基礎疾患はCOPD。アセスメント(A):感染による急性増悪の可能性が高いと考えます。安静時SpO2は95%ですが、歩行後88%まで低下。体温37.6℃。提案(R):至急の診察と治療方針の再検討をお願いします。」
4. 介入: 医師の指示に基づき、酸素流量の調整、抗菌薬・気管支拡張薬の吸入・内服の開始、必要に応じてネブライザー吸入の実施。また、安静の確保と体位管理(セミファウラー位)、水分摂取の促進(痰の排出促進)。
5. 評価: 指示後のSpO2変化、呼吸困難感の軽減の有無、痰の排出状態、感染徴候の改善を継続評価。

患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):
- 酸素流量の自己判断増量は絶対禁止! 看護師が指示なしで行ってはいけない行為の典型例。COPD患者では、酸素過剰投与によるCO2ナルコーシス(意識障害、頭痛、傾眠)に注意。
- 感染予防のため、手洗い・マスク着用、痰の処理方法を指導。可能であればインフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種状況を確認し、未接種であれば医師に相談するよう促す。
- 転倒予防:低酸素血症や全身倦怠感により、転倒リスクが高まる。歩行時は酸素チューブの取り扱いにも注意。

看護プロトコル: 観察項目は「呼吸の4つのサイン」:①呼吸数(12-20回/分が目標)、②呼吸パターン(口すぼめ呼吸の有無)、③SpO2(90%以上目標)、④随意的な症状(息切れの程度、Borgスケール)。報告は必ずSBARを活用し、緊急性を明確に伝える。記録には、SpO2値、呼吸数、呼吸音、痰の状態、患者の訴え、行った看護ケアと医師への報告内容・指示内容を漏れなく記載する。家族への説明は、「風邪がきっかけでCOPDの状態が悪くなることがあります。いつもと違う症状があればすぐに連絡してください」と具体的に伝える。

先輩看護師の一言: 「在宅酸素療法中の患者さんは、『酸素があれば安心』と思いがちですが、酸素はあくまで症状を和らげる治療の一部。息切れの増強や痰の変化は、感染など別の病気のサインです。『SpO2が下がったから酸素を増やせばいい』ではなく、『なぜ下がったのか』を考えることが、看護師の腕の見せどころ!国試でも、『酸素を増やす』という選択肢は大概が引っかけですよ。必ず医師報告が先かどうか、確認してくださいね。」

重要概念

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