核心解説
この問題は、
低栄養状態 (Malnutrition) にある患者のアセスメントにおいて、身体計測値として何が最も適切かを問うています。高齢者では、体重減少や
サルコペニア (Sarcopenia) の評価が重要であり、単なるBMIだけでは筋肉量の低下を捉えきれないことが理解の鍵です。特に、低栄養による筋肉消耗や
フレイル (Frailty) の早期発見には、部位別の周囲長測定が不可欠です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 本問題の核心は「低栄養状態のアセスメント指標」です。低栄養は、エネルギーやたんぱく質の不足により、体重減少、筋力低下、免疫能低下を引き起こします。評価には、
身体計測 (Anthropometric Measurement) として、上腕周囲長 (Mid-Upper Arm Circumference, MUAC) や下腿周囲長 (Calf Circumference, CC) が用いられます。これらは全身の筋肉量と皮下脂肪の指標となり、特に高齢者の低栄養・サルコペニア診断に有用です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! ②番の「上腕周囲長と下腿周囲長を測定する」が最も適切です。上腕周囲長 (MUAC) は、上腕三頭筋部の皮下脂肪と筋肉量を反映し、簡便に栄養状態を評価できます。下腿周囲長 (CC) は、特に高齢者のサルコペニア評価に重要で、
男性で34cm未満、女性で33cm未満がサルコペニアのカットオフ値とされています。これらの測定値をBMIやAlb値と組み合わせることで、より正確な低栄養評価が可能です。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意!
- ①番「指輪のサイズを確認する」は、浮腫の評価には有用ですが、低栄養の直接的な指標とはなりません。術後や妊娠高血圧症候群などでの浮腫管理に用いられます。
- ③番「腹囲のみを測定する」は、メタボリックシンドロームの評価に用いられ、低栄養評価には適しません。むしろ、内臓脂肪蓄積の指標です。
- ④番「身長と体重のみで評価する」は、BMIの算出には必要ですが、低栄養による筋肉量減少を評価するには不十分です。BMIが正常範囲でも、サルコペニアが隠れている場合があります。
- ⑤番「頭囲と胸囲を測定する」は、主に乳幼児の発育評価に用いられる指標で、成人の低栄養評価には適しません。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 低栄養のスクリーニングツールとして、
MNA (Mini Nutritional Assessment) や
SGA (Subjective Global Assessment) があります。これらには身体計測値が含まれます。また、サルコペニアの診断基準(AWGS 2019)では、
握力 (Grip Strength) や
歩行速度 (Gait Speed) も評価項目として重要です。低栄養とサルコペニアは密接に関連しており、
混同注意!「低栄養=体重減少のみ」と捉えず、筋量減少にも着目することが国試でも頻出です。
概念整理: 低栄養評価のための身体計測は、全身の栄養状態(筋肉量・脂肪量)を反映する。高齢者では特に上腕周囲長 (MUAC) と下腿周囲長 (CC) が重要であり、これらはサルコペニアの評価にも直結する。一方、腹囲はメタボリック症候群の指標であり、低栄養とは目的が異なる。
一目で比較!:
| 測定部位 | 主な評価内容 | 低栄養評価 |
|---|
| 上腕周囲長 (MUAC) | 筋肉量・皮下脂肪 | 適切(特に高齢者) |
| 下腿周囲長 (CC) | 下腿筋肉量(サルコペニア指標) | 適切(カットオフ:男
臨床シナリオ臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario): あなたは一般病棟で働く看護師です。70歳男性、身長165cm、体重50kg(3ヶ月で5kg減少)、BMI 18.4。大腸がん術後で経過は良好ですが、食事摂取量が低下しています。回診時、主治医から「栄養状態の評価をしてほしい」と指示がありました。患者は「最近、脚の力が弱くなった気がする」と訴えています。
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): まず、最重要!バイタルサイン(血圧、脈拍、体温、SpO2)を確認し、全身状態が安定していることを確認します。次に、身体計測として、上腕周囲長 (MUAC) と下腿周囲長 (CC) を測定します。MUACは利き腕側で測定し、メジャーが皮膚に食い込まないように注意。CCは下腿最大周囲部を測定します。同時に、握力計を用いて筋力評価も行いましょう。血液検査データ(Alb、プレアルブミン、総リンパ球数)も確認し、総合的にアセスメントします。患者の「脚の力が弱くなった」という訴えは、サルコペニアの可能性を示唆する重要な情報です。結果をSBAR(Situation, Background, Assessment, Recommendation)形式で医師に報告します。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 転倒・転落リスクが高い状態です。歩行時は必ず介助し、ベッド周囲の環境整備(ナースコールの位置確認、足元の整理)を徹底。食事は少量頻回とし、嗜好を聞いて摂取量を増やす工夫を。また、低栄養による免疫低下から感染症リスクが高いため、手指衛生とバイタルサインの頻回測定が重要です。
看護プロトコル: 観察項目(体重変化、食事摂取量、MUAC・CC、握力、Alb値)。報告基準(SBAR:S「体重が3ヶ月で5kg減少、BMI 18.4」、B「大腸がん術後、経口摂取不良」、A「低栄養・サルコペニアが疑われる」、R「栄養サポートチームへの相談とリハビリ処方を検討してほしい」)。記録のポイント(測定値、患者の訴え、介入内容とその反応)。
先輩看護師の一言: 「低栄養の評価は、単なる『痩せ』のチェックじゃないんだよ。特に高齢者は、体重が減らなくても筋肉が落ちてサルコペニアになっていることがある。上腕周囲長と下腿周囲長は、ベッドサイドで簡単に測れるから、『いつもと違う』に気づくための大事な武器になる。国試でも『何を測る?』って聞かれたら、迷わずMUACとCC!現場でも使える知識だから、しっかり覚えてね!」
重要概念
- 上腕周囲長 — 上腕中央部の周囲長。皮下脂肪と筋肉量を反映し、低栄養評価に用いる。
- 下腿周囲長 — 下腿最大周囲部の長さ。高齢者のサルコペニア評価に重要。カットオフ値:男性34cm未満、女性33cm未満。
- サルコペニア — 加齢や疾患による筋肉量・筋力・身体機能の低下。低栄養と密接に関連する。
- BMI (Body Mass Index) — 体重(kg) ÷ 身長(m)²。低栄養のスクリーニングに用いられるが、単独では筋肉量減少を評価できない。
- 低栄養 — エネルギーやたんぱく質などの栄養素が不足した状態。体重減少、筋力低下、免疫能低下を引き起こす。
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