核心解説
この問題は、
インスリン注射 (Insulin Injection) の基本的な手技と注意点を問うています。インスリンは
糖尿病患者の血糖コントロールに不可欠なホルモン製剤 であり、注射技術の誤りは低血糖や高血糖、注射部位のトラブルを引き起こす可能性があるため、確実な知識が求められます。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 正解は③「穿刺後は数秒間針を留置してから抜去する」です。インスリン注射では、針を抜く際に薬液が穿刺孔から漏れ出る(逆流)のを防ぐため、薬液注入後も針を皮膚内に約5~10秒間留置します。これにより、確実に薬液を皮下組織内に投与できます。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
① 注射後は穿刺部位を強く揉んで吸収を促進する →
混同注意! 強く揉むとインスリンの吸収が速まり、低血糖を誘発するリスクがあります。原則として、注射部位は揉まずに軽く押さえるだけにします。
② 注射部位は毎回同じ場所を選択する → 同じ場所に繰り返し注射すると、
脂肪萎縮 (Lipoatrophy) や
脂肪肥厚 (Lipohypertrophy) が生じ、インスリンの吸収にムラが生じます。部位は計画的にローテーション(例えば、腹部・大腿・上腕などを順番に)する必要があります。
④ 冷蔵庫から取り出した直後のインスリンを使用する → 冷たいインスリンは注入時の痛みが強く、吸収も不安定になります。使用前に室温に戻してから(約30分前に冷蔵庫から出す)注射します。
⑤ 使用前によく振ってから注射する → インスリンは静かに転倒混和(瓶を転がすように混ぜる)するのが正しい方法です。
混同注意! 強く振ると泡立ちが生じ、正確な用量を吸入できなくなるため禁忌です。
関連概念の整理 (Related Concepts): インスリン注射には
皮下注射 (Subcutaneous Injection) の手技が用いられます。特に、血糖降下作用のピーク時間や持続時間を考慮した投与計画、注射部位による吸収速度の違い(腹部 > 上腕 > 大腿)、食事とのタイミング、低血糖症状(冷汗、動悸、意識障害)とその対処法(糖分摂取、グルカゴン投与)も併せて重要です。
概念整理:
| 項目 | 正しい手技 | 誤った手技(リスク) |
| 薬液準備 | 室温に戻す / 静かに転倒混和 | 冷蔵庫直後(痛み・吸収不安定) / 強く振る(泡立ちで用量誤差) |
| 穿刺部位 | 計画的ローテーション / 清潔な皮膚 | 同一部位連打(脂肪萎縮・肥厚) / 感染部位(蜂窩織炎リスク) |
| 注入・抜去 | 針を留置(5~10秒) / 軽く押さえる | すぐ抜去(薬液漏出) / 強く揉む(吸収促進・低血糖) |
一目で比較!:
混同注意! インスリン注射(皮下注射)と
ヘパリン (Heparin) の皮下注射では、注射後の対応が異なります。ヘパリンは血腫形成を防ぐため、注射部位を揉まずに強く圧迫(約5~10分)しますが、インスリンは圧迫は軽くで構いません。どちらも「揉まない」は共通です。
看護過程ポイント:
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アセスメント: 患者の自己注射技術、注射部位の状態(硬結・発赤・萎縮の有無)、低血糖リスク(食事摂取量、活動量、腎機能)。
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看護診断 (Nursing Diagnosis): 「自己管理の非効果的傾向(注射技術の誤り)」や「危険性状態:低血糖」などが該当。
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計画・実施: 注射手技の定期的な評価と指導、部位ローテーション表の活用、低血糖時の対応マニュアルの共有。
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評価: 血糖コントロール状態(HbA1c、血糖値の変動)、注射部位のトラブルの有無。
暗記のコツ: 「
インスリンはデリケート」と覚えましょう。
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冷→ 冷蔵庫から出して室温に(冷たいの禁止)
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振→ 静かに混ぜる(激しく振るの禁止)
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揉→ 揉まずに軽く押さえる(強く揉むの禁止)
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同→ 部位はローテーション(同じ場所禁止)
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漏→ 針を留置して漏れ防止
国試頻出ポイント: インスリン注射の基本手技(留置、部位ローテーション)は毎年必ずと言ってよいほど出題されます。また、
GLP-1受容体作動薬 (GLP-1 Receptor Agonist) などの新しい注射薬との違いや、注射器具(インスリンペン型注入器、針の長さ)の選択に関する問題も増えています。
出題パターン注意!: 「糖尿病患者が自己注射中に低血糖を起こした。看護師が行うべき対応は?」といった状況設定問題への発展が典型です。単純な手技の知識だけでなく、副作用(低血糖)の発見と対応を統合して問われます。