核心解説
この問題は、
腎臓 (Kidney) における
尿濃縮機構 (Urine Concentration Mechanism)の中心的な構造を問うています。尿を濃縮するためには、腎臓の髄質部に強い浸透圧勾配(osmotic gradient)が必要であり、この勾配を作り出すのが
ヘンレループ (Loop of Henle)の
対向流増幅系 (Countercurrent Multiplier System)です。このメカニズムを理解することが、この問題の鍵となります。
1. **核心概念の分析**: 尿濃縮は、体内の水分を保持するための重要な生理的メカニズムです。腎臓の髄質間質が高浸透圧になることで、
集合管 (Collecting Duct)での水の再吸収が促進され、濃縮された尿が生成されます。この高浸透圧の源を作り出すのが、ヘンレループの機能です。
2. **正解の根拠**:
最重要! 正解は
② ヘンレループです。ヘンレループは、下行脚が水透過性でNaCl非透過性、上行脚が水非透過性でNaCl能動輸送を行うという構造的特徴を持ちます。この性質により、下行脚で水が受動的に流出し、上行脚でNaClが間質へ能動輸送されることで、腎髄質に大きな浸透圧勾配が形成されます(対向流増幅系)。この勾配が、最終的な尿の濃縮に必須です。
3. **誤答の分析**:
混同注意!
① 近位尿細管: ここでは
等張性の再吸収が行われます。ブドウ糖やアミノ酸、Na⁺、水などがほぼ等張で再吸収されるため、間質の浸透圧勾配形成には直接寄与しません。
③ 糸球体: これは
濾過 (Filtration)を行う構造であり、原尿の生成が役割です。濃縮には関与しません。
④ 輸入細動脈: 糸球体への血液流入を調節する血管で、尿濃縮には直接関与しません。
⑤ 遠位尿細管: ホルモン(アルドステロンや副甲状腺ホルモン)による微調整を行いますが、間質の浸透圧勾配自体は形成しません。
4. **関連概念の整理**: ヘンレループで形成された浸透圧勾配を利用して、最終的に
集合管で
抗利尿ホルモン (ADH / Vasopressin)の作用により水の透過性が高まり、尿が濃縮されます。つまり、ヘンレループが「勾配を作る役割」、集合管が「その勾配を利用して水を再吸収する役割」と整理できます。
概念整理:
| 構造 | 尿濃縮における役割 | 主な機能 |
|---|
| ヘンレループ | 対向流増幅系で髄質浸透圧勾配を形成 | NaCl能動輸送と水の受動的拡散 |
| 集合管 | ADH依存性の水再吸収(濃縮の最終段階) | 水チャネル(アクアポリン)の挿入 |
| 近位尿細管 | 等張性再吸収(勾配形成には非関与) | 大部分の溶質と水の再吸収 |
一目で比較!:
混同注意! 「対向流増幅系(ヘンレループ)」と「対向流交換系(直血管 vasa recta)」を混同しないでください。前者は
浸透圧勾配を作る能動的なプロセス、後者はその勾配を
維持・保存する受動的なプロセスです。
暗記のコツ: 「ヘンレのループがループして上下で違う動きをする(下行脚は水を通す、上行脚はNaClを能動輸送)→ ループの周りに塩がたまる → 濃い場所ができる → そこで水を吸う(集合管)」。これを「ループ(ヘンレ)で濃い場所を作って、集める(集合管)で水を吸う」と覚えましょう。
国試頻出ポイント: 尿濃縮機構は、
脱水時の身体反応や、
尿崩症 (Diabetes Insipidus)、
ADH分泌異常症候群 (SIADH)などの病態理解の基礎となります。ヘンレループの機能を抑えれば、これらの疾患でなぜ尿が薄い/濃いのかを論理的に説明できます。