核心解説
この問題は、
腎臓 (Kidney) における
尿の濃縮と希釈 (Urine Concentration and Dilution) のメカニズムを問うています。腎臓は体内の水分バランスを調節するため、尿を濃縮(水分を節約)したり、希釈(余分な水分を排出)したりする能力を持っています。このプロセスの中核を担うのが、
ヘンレ係蹄 (Loop of Henle) です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ヘンレ係蹄は
対向流増幅系 (Countercurrent Multiplier System) として機能し、腎髄質に強力な
浸透圧勾配 (Osmotic Gradient) を形成します。この勾配により、最終的に
集合管 (Collecting Duct) での水の再吸収(抗利尿ホルモン (ADH) の作用で促進)が可能となり、濃縮尿が作られます。逆に、ヘンレ係蹄の機能が低下すると、この勾配が消失し、尿の濃縮ができなくなります(例:腎性尿崩症や髄質の障害)。
ヘンレ係蹄の太い上行脚(Thick Ascending Limb)は、
Na⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体 を介して積極的にNaClを再吸収しますが、この部分は水を通さないため、間質液が高浸透圧になります。これが対向流増幅の原動力です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①
遠位尿細管 (Distal Tubule): 主に
電解質(Na⁺, K⁺, Ca²⁺)の微調整 や
酸塩基平衡 (Acid-Base Balance) に関与します。尿濃縮の主役ではありません。
③
近位尿細管 (Proximal Tubule): 原尿中の
約60~70%の水分とNa⁺ を等張性で再吸収する場所で、尿の濃縮・希釈には直接関与しません。
④
糸球体 (Glomerulus): 血液をろ過して原尿を作る構造です。尿の濃縮には関与しません。
⑤
ボーマン嚢 (Bowman's Capsule): 糸球体でろ過された原尿を受け取る二重壁の構造です。ろ過の第一段階に関わるのみです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
尿の濃縮と希釈は、
ADH(抗利尿ホルモン) (Antidiuretic Hormone) の作用と密接に関連します。ADHは集合管の水チャネル(アクアポリン2)を増加させ、浸透圧勾配に沿って水を再吸収させます。ヘンレ係蹄が形成する勾配がなければ、ADHが分泌されても濃縮尿は作れません。また、
ループ利尿薬 (Loop Diuretics)(例:フロセミド)は、ヘンレ係蹄のNa⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体を阻害し、この浸透圧勾配を消失させることで強力な利尿作用を示します。
概念整理: 尿濃縮のキーは「ヘンレ係蹄による髄質の浸透圧勾配形成」と「ADHによる集合管での水透過性亢進」の2段階です。
一目で比較!:
| 部位 | 主な機能 | 尿濃縮への関与 |
|---|
| 糸球体 | 血液のろ過(原尿生成) | なし |
| 近位尿細管 | 等張性再吸収(水・Na⁺・グルコースなど) | なし |
| ヘンレ係蹄 | 対向流増幅系による浸透圧勾配形成 | 最重要 |
| 遠位尿細管 | 電解質・酸塩基平衡の微調整 | 間接的(Na⁺再吸収調節) |
| 集合管 | ADH依存性の水再吸収(最終的な濃縮・希釈) | 直接的(最終調節) |
看護過程ポイント: 腎機能障害患者の
尿量減少 (Oliguria) や多尿 (Polyuria) をアセスメントする際、尿の濃縮能(尿比重、尿浸透圧)を確認することは重要です。例えば、尿崩症では多尿・低比重尿が特徴で、腎性尿崩症ではADHに反応しないためヘンレ係蹄以降の機能障害が疑われます。
暗記のコツ: 「ヘンレのUターン(ループ)で、塩分(NaCl)をせっせと運び、間質を濃くする。ADHが水の通り道(アクアポリン)を作り、水が引っ越す。これで濃縮尿の完成!」とストーリーで覚えましょう。
国試頻出ポイント: この問題は「尿の濃縮・希釈のしくみ」の基本を問うもので、毎年必出といってよい重要項目です。応用問題では、
ループ利尿薬 の作用機序や、
腎性尿崩症 との関連、
高Na血症/低Na血症 の病態理解につながります。
出題パターン注意!: 「高齢者の脱水時の尿所見」「バソプレシン分泌異常症候群 (SIADH) での尿濃縮」「慢性腎不全での等張尿(濃縮能低下)」など、状況設定問題で出題されることが多いテーマです。