核心解説
この問題は、
腎機能 (Renal Function) を評価するための検査指標である
糸球体濾過量 (GFR: Glomerular Filtration Rate) の推定方法を問うています。GFRは、腎臓が血液をろ過する能力を数値化したもので、腎機能の最も重要な指標の一つです。直接測定するのは困難なため、日常診療では血清クレアチニン値などを用いた推定式が用いられます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は③番の
Cockcroft-Gault式 です。
最重要! Cockcroft-Gault式は、
血清クレアチニン値、年齢、体重、性別の4つの変数から
クレアチニンクリアランス (Creatinine Clearance: Ccr) を推定する計算式です。クレアチニンクリアランスはGFRを反映するため、腎機能の評価に広く用いられてきました。現在は
eGFR (estimated GFR) がより簡便に用いられることも多いですが、Cockcroft-Gault式は薬剤投与設計など臨床現場で今なお重要な役割を果たしています。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①
Glasgow Coma Scale (GCS): 意識レベルの評価指標です。開眼(Eye opening)、言語(Verbal response)、運動(Motor response)の3項目で評価します。腎機能とは無関係です。
②
修正Borg scale: 呼吸困難感や自覚的運動強度を評価する主観的スケールです。慢性閉塞性肺疾患(COPD)や心不全患者の息切れ評価に用いられます。
④
Brocaの式: 標準体重(理想体重)を計算する式です。「身長(cm) - 100」という簡略式で知られ、栄養評価の参考値として用いられます。
⑤
Harris-Benedict式: 基礎代謝量 (Basal Metabolic Rate: BMR) を推定する式です。性別、年齢、身長、体重を用いて計算し、栄養管理の指標として用いられます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
GFRの推定には、現在日本では
日本人用eGFR推算式(日本腎臓学会推奨)が広く用いられています。
eGFR(ml/min/1.73m²) = 194 ×
血清Cr⁻¹.⁰⁹⁴ ×
年齢⁻⁰.²⁸⁷(女性は×0.739)
Cockcroft-Gault式との違いは、体格補正(体表面積補正)がなされている点です。Cockcroft-Gault式は絶対的なクレアチニンクリアランス値を推定し、eGFRは体表面積で標準化した値を算出します。薬剤投与設計(特に腎排泄型薬剤の用量調節)にはCockcroft-Gault式が依然として推奨されるケースが多いため、両者の違いを理解しておくことが重要です。
概念整理: GFR推定の主要計算式はCockcroft-Gault式(Ccr推定)と日本人eGFR推算式(eGFR推定)の2つ。いずれも血清クレアチニン値、年齢、性別を必須因子とする。体重はCockcroft-Gault式のみ使用。
一目で比較!:
| 計算式 | 主な用途 | 使用する変数 |
| Cockcroft-Gault式 | Ccr推定 (腎機能評価、薬剤用量調節) | 血清Cr、年齢、体重、性別 |
| 日本人eGFR式 | eGFR推定 (慢性腎臓病(CKD)重症度分類) | 血清Cr、年齢、性別 (体表面積補正) |
| Harris-Benedict式 | 基礎代謝量推定 (栄養管理) | 性別、年齢、身長、体重 |
| Brocaの式 | 標準体重計算 (栄養評価) | 身長 |
| 修正Borg scale | 呼吸困難/運動強度評価 (症状評価) | 患者の主観的報告 (0-10) |
| Glasgow Coma Scale (GCS) | 意識レベル評価 (神経学的評価) | 開眼、言語、運動反応 (3-15点) |
看護過程ポイント: 腎機能低下患者の看護では、
最重要! GFR/Ccrの値から
慢性腎臓病(CKD)の重症度分類(ステージ1〜5)をアセスメントし、食事療法(蛋白制限、塩分制限、カリウム制限)、水分管理、薬剤投与(腎排泄型薬剤の減量・禁忌の確認)の計画を立案する。評価指標としての血清クレアチニン値とeGFRの経時的推移を観察する。
暗記のコツ: 「腎臓はクレアチニン(Cr)と年齢と体重が重要!」「Cockcroft-Gaultは『Ccr』(Cから始まる)を推定。Harris-Benedictは『H』で『代謝』(ハリス・ベネディクト=代謝)。Brocaは『B』で『体重』(ブローカ=標準体重)。GCSは『G』で『意識』(グラスゴー=意識スケール)。Borgは『B』で『呼吸』(ボルグ=息切れ)」と頭文字で連想。
国試頻出ポイント: Cockcroft-Gault式の名称とその目的(腎機能評価、Ccr推定)を直接問う問題に加え、慢性腎臓病(CKD)のステージ分類(eGFRの値に基づく)と看護介入(特に薬剤投与量調節、食事療法、透析導入時期の判断)と組み合わせた状況設定問題(事例問題)が頻出。
出題パターン注意!: 単純な「計算式の目的」の知識問題から、「70歳男性、体重50kg、血清クレアチニン1.5mg/dL。Cockcroft-Gault式でCcrを計算し、この患者に腎排泄型の抗生剤を投与する際の注意点を述べよ」といった実践的な計算・判断問題へ発展します。計算式そのものを暗記する必要はありませんが、何の目的でどの変数を使うかは確実に押さえましょう。