核心解説
この問題は、分子生物学の根幹である
セントラルドグマ (Central Dogma)における情報伝達の流れを問うています。遺伝情報は「
DNA → RNA → タンパク質」の順に一方向に流れるという原則が基本です。このうち、
DNAの塩基配列をもとに
メッセンジャーRNA (mRNA)を合成する過程を
転写 (Transcription)と呼びます。看護師国家試験では、細胞の働きや薬理作用(抗がん剤の作用機序など)の理解に必要な基礎知識です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 正解は②番の
転写 (Transcription)です。細胞核内で、DNAの特定の遺伝子領域を鋳型として、
RNAポリメラーゼ (RNA Polymerase)という酵素が相補的なRNA鎖を合成します。この過程で生成されたmRNAは、核外へ運ばれ、次の
翻訳 (Translation)の段階でリボソーム上でタンパク質に翻訳されます。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①
混同注意! 逆転写 (Reverse Transcription)は、RNAからDNAへ情報が逆向きに流れる特殊な過程です。レトロウイルス(HIVなど)が持つ逆転写酵素が行う反応で、セントラルドグマの例外として知られています。
③
修復 (Repair)は、損傷を受けたDNAの塩基配列を元に戻す細胞の防御機構です。情報の流れそのものではなく、ゲノムの安定性維持に関わります。
④
複製 (Replication)は、DNAから新しいDNAを合成する過程です。細胞分裂の際に遺伝情報を正確にコピーするために行われます。
⑤
翻訳 (Translation)は、mRNAの塩基配列(コドン)を読み取り、
リボソーム (Ribosome)上でアミノ酸を連結してタンパク質を合成する過程です。
関連概念の整理 (Related Concepts):
セントラルドグマの3つの主要過程を必ず区別しましょう。
| 過程 | 鋳型 | 生成物 | 主な酵素 |
|---|
| 複製 (Replication) | DNA | DNA | DNAポリメラーゼ |
| 転写 (Transcription) | DNA | mRNA / rRNA / tRNA | RNAポリメラーゼ |
| 翻訳 (Translation) | mRNA | タンパク質 (ポリペプチド) | リボソーム (酵素複合体) |
概念整理: セントラルドグマは「DNA→RNA→タンパク質」の情報の流れ。看護では、抗がん剤や抗ウイルス薬がこれらの過程(特に転写や複製)を阻害する作用機序を理解する基礎となる。
一目で比較!:
混同注意!「複製」はDNA→DNA、「転写」はDNA→RNA、「翻訳」はRNA→タンパク質、「逆転写」はRNA→DNA。情報の方向性と鋳型の違いを押さえる。
看護過程ポイント: 直接的な看護介入には結びつきにくいが、患者への病状説明や薬剤の副作用説明(例:抗がん剤は細胞分裂を阻害するため、骨髄抑制や脱毛が起こる)の根拠として活用できる。
暗記のコツ: 「転写 (Transcription)」の「T」は「DNAを『写す』→RNA」と覚える。「翻訳 (Translation)」の「L」は「言語 (Language)を変換する→アミノ酸配列に変換」とイメージする。
国試頻出ポイント: 各過程の名称とその定義を直接問う問題、または抗がん剤(例:アクチノマイシンDは転写阻害薬)の作用機序と絡めた問題として頻出。