看護学のコア解説
この問題は、
褥瘡 (Pressure injury / Pressure ulcer)のケアにおいて、
最も優先度の高い看護介入を問うています。患者は高齢で、股関節骨折術後2週間の
ベッド上安静 (Bed rest)状態であり、仙骨部に
深達度分類ステージ3 (Stage 3)の褥瘡が形成されています。この状況下での看護の目標は、「
さらなる組織損傷の防止と治癒の促進」です。
重要概念の分析 (Key Concept)
褥瘡発生の第一の原因は、「
持続的な圧迫 (Pressure)」です。特に骨突出部に体重が長時間かかることで、毛細血管が圧迫され、血流が途絶え、組織の虚血・壊死が起こります。したがって、褥瘡ケアの
絶対的な基本原則は、この原因である「圧迫」を取り除くことです。これを「
除圧 (Pressure relief / Pressure redistribution)」と呼びます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢④「2時間ごとの体位変換スケジュールを実施し、圧力分散マットレスを使用する」が正解です。
ここがポイント! この介入は、褥瘡の
根本原因である持続的圧迫に直接アプローチするものです。2時間ごとの体位変換は、同じ部位への圧迫時間を短縮し、再灌流を可能にします。圧力分散マットレス(エアマットレスなど)は、体重を広い面積に分散させ、局所的な圧力を軽減します。この「除圧」がなければ、どんなに優れた外用薬やドレッシング材を使用しても、褥瘡は進行してしまいます。よって、これは最優先の介入です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
① ハイドロコロイドドレッシングを適用し、3日ごとに交換する:
ハイドロコロイドドレッシングは、
湿潤療法 (Moist wound healing)のための優れた材料です。しかし、この患者の褥瘡は「中等度の浸出液」があるため、吸収性がより高いドレッシング材(アルギン酸塩やハイドロファイバーなど)が適している可能性があります。何よりも、
除圧がなされていない状態でドレッシングだけを変えても、治癒は進みません。 ドレッシングは「除圧」という土台の上で効果を発揮する二次的なケアです。
② 循環を促進するために、患部を短時間下にして体位をとらせる:
これは
絶対的な禁忌です。褥瘡が存在する部位に直接圧をかけることは、組織損傷を悪化させるだけです。褥瘡ケアでは、
褥瘡部への直接圧迫を避ける (Avoid direct pressure on the wound)ことが鉄則です。
③ 過酸化水素水で1日2回創部を洗浄する:
過酸化水素水は消毒力が強く、
新生肉芽組織や上皮細胞を傷害する可能性があります。現代の創傷管理では、
生理食塩水 (Normal saline)による穏やかな洗浄が標準です。この選択肢は、古いケアの知識に基づく有害な介入です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
・
褥瘡の深達度分類 (Pressure ulcer staging):
ステージ3は「皮下脂肪組織まで及ぶ全層皮膚損傷。骨、腱、筋肉は露出していない」と定義されます。創のサイズ(4cm×3cm)や浸出液の量も、ドレッシング材の選択や栄養状態のアセスメントに重要です。
・
Bradenスケール (Braden Scale):褥瘡発生リスクを評価するツール。知覚認知、湿潤、活動性、可動性、栄養、摩擦・ずれの6項目で評価します。
概念のまとめ
褥瘡ケアの優先順位:1. 除圧(体位変換、圧力分散マットレス) → 2. 創傷ケア(適切な洗浄とドレッシング) → 3. 全身状態の管理(栄養、水分補給、基礎疾患のコントロール)。
一目で比較!
| 介入 | 評価 | 理由 |
|---|
| 体位変換 & 除圧マットレス | 最優先 | 褥瘡の根本原因(持続的圧迫)に対処する |
| 適切なドレッシング | 二次的優先 | 湿潤環境を保ち治癒を促進するが、除圧が前提 |
| 患部への直接圧迫 | 禁忌 | 組織損傷を確実に悪化させる |
| 過酸化水素での洗浄 | 非推奨/有害 | 新生組織を傷害する。生理食塩水が標準 |
解剖生理と薬理のポイント
・仙骨部は、仰臥位で体重が集中する主要な骨突出部の一つです。
・持続的圧迫により毛細血管の圧が上昇(通常32mmHg以上)すると、血流が停止し、組織は虚血に陥ります。2時間以上の持続的圧迫は、不可逆的な組織損傷のリスクを大幅に高めます。
・湿潤療法の原理:適度な湿潤環境が、線維芽細胞の遊走と増殖、血管新生を促進し、治癒を早めます。
暗記のコツとゴロ合わせ
褥瘡ケアの優先順位は「
圧を抜いて、きれいに保ち、栄養を」。まず「圧抜き」がすべての基本です。体位変換の頻度「2時間」は、「
に(2)時間おきにコロン(転)」と覚えましょう。
国試頻出ポイント
褥瘡の問題では、「最も優先すべきケア」「禁忌となる行為」「各深達度ステージの特徴」「適切なドレッシング材の選択」が頻出です。特に「体位変換と除圧」が最優先であることは、ほぼ確実に問われる超重要項目です。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「褥瘡ケアで適切なのは?」と問うだけでなく、本問のように「
最優先 (highest priority)」を問う出題が増えています。すべて正しい(または部分的に正しい)ケアの中から、
看護過程の優先順位付け (Nursing prioritization) ができるかが試されます。根本原因へのアプローチが常に最優先です。