看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
あなたはICUの看護師です。68歳、糖尿病・高血圧歴のある男性が、腹部大動脈瘤手術後に収容されました。術中に一過性の低血圧エピソードがありました。現在バイタルは安定していますが、AKIの発症が懸念されています。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
アセスメント:
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バイタルサイン: 血圧(特に平均血圧が腎灌流を維持できるか)、脈拍、呼吸を頻回に測定。
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インス・アウトバランス (I/O balance): ここがポイント! 尿量を
時間毎(時間尿)で測定・記録。目標は0.5 mL/kg/hr以上。カテーテルを留置している場合は閉鎖式ドレナージシステムを維持。
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検査データのモニタリング: 血清クレアチニンとBUNの
経時的変化をチェック。電解質(特に危険な高カリウム血症)にも注意。
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身体所見: 皮膚のツルゴール(張り)、粘膜の乾燥(脱水の有無)、浮腫の有無を観察。
2.
計画と実施:
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循環血液量の維持: 医師の指示に基づき、適切な輸液を行います。腎前性AKIでは、適切な輸液が腎機能回復のカギです。
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腎毒性の回避: 与薬時は、患者が腎毒性のある薬剤(例:鎮痛剤のケタラック®などNSAIDs、ゲンタマイシンなどの抗菌薬)を投与されていないか確認します。造影剤を使用する検査前後は、指示通りに水分投与(輸液)を行います。
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血糖コントロール: 糖尿病歴があるため、血糖値の乱高下が腎臓に追加のストレスを与えないよう、血糖モニタリングとインスリン管理を適切に行います。
3.
評価と報告:
* 上記のアセスメントで、尿量の持続的減少や血清クレアチニンの上昇傾向が認められたら、
遅滞なく医師に報告します。
* 介入後の患者の反応(輸液後の尿量増加など)を評価し、看護計画を見直します。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
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高カリウム血症は緊急事態: AKIではカリウム排泄が障害され、致死的な不整脈を引き起こす
高カリウム血症 (Hyperkalemia)のリスクが高まります。心電図モニターでT波のテント状変化(尖鋭高峻T波)に注意し、血清カリウム値の上昇には迅速に対応できる準備を。
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輸液過剰に注意: 特に心機能が低下している患者では、腎前性AKIに対する輸液が過剰になると、
肺水腫 (Pulmonary edema)を引き起こすリスクがあります。呼吸音(湿性ラ音)と呼吸困難の有無を常にアセスメントします。
看護処置と与薬フロー
AKI患者における時間尿測定と与薬時のフロー
- アセスメント: 医師の指示と患者のAKIリスク因子(低血圧歴、腎毒性薬使用歴など)を確認。
- 計画: 時間尿測定用のフローチャートやシートを準備。与薬リストから腎機能調整が必要な薬剤を抽出。
- 実施:
- 尿量測定: 毎時、蓄尿バッグのメモリを正確に読み取り、記録。尿の色、混濁も観察。
- 与薬: 腎排泄型の薬剤(多くの抗菌薬、ジゴキシンなど)は、医師がクレアチニンクリアランスに基づいて用量を調整しているか必ず確認。疑わしい場合は薬剤師または医師にダブルチェックを依頼。
- 評価・報告: 尿量が0.5 mL/kg/hrを下回る、または血清クレアチニンが上昇傾向にある場合は直ちに報告。
先輩看護師からの一言
「AKIの看護で一番大切なのは『待たない』ことです。『少し尿が減ったかな?』『クレアチニンが昨日よりちょっと上がってる?』というわずかな変化を見逃さず、『これはAKIの始まりかもしれない』と警戒し、すぐにチームに知らせることが、患者さんを透析まで至らせないための最前線の看護です。国家試験でも、『早期の』『最も重要な』指標は、変動要因が少なく腎機能そのものを反映する『血清クレアチニンの急激な上昇』と覚えておきましょう。検査データの数字を、生きた患者さんの腎臓のSOSとして読み取る力を養ってくださいね!」