看護学のコア解説
この問題は、
急性腎障害 (Acute Kidney Injury, AKI)の
乏尿期 (Oliguric phase)における、
最優先の看護介入を問うています。AKIは腎機能が急激に低下する病態であり、乏尿期は尿量が著しく減少する時期です。この時期の病態生理学的な特徴は、
腎臓の濾過機能の低下により、体内の老廃物(尿素窒素、クレアチニン)や水分、電解質(特にカリウム)の排泄ができなくなることです。
重要概念の分析 (Key Concept)
ここがポイント! 乏尿期の患者管理で最も重要なのは、「
排泄できないものをさらに体内に入れない」という原則です。腎臓が機能していない状態で、水分やタンパク質(代謝されると老廃物となる)を過剰に摂取したり、カリウムを排出する薬(利尿薬)を無理に使用したりすると、状態を悪化させる危険があります。したがって、
モニタリングと制限がケアの基本となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解の②「
電解質レベルをモニタリングし、水分制限を実施する」は、この原則に完全に合致します。
1.
電解質モニタリング:特に
混同注意! 高カリウム血症 (Hyperkalemia)は、不整脈や心停止を引き起こす致命的な合併症です。血清カリウム値は頻回にチェックする必要があります。
2.
水分制限:尿として排泄できない水分が体内に貯留すると、
体液過剰 (Fluid overload)、
高血圧 (Hypertension)、そして最も危険な
肺水腫 (Pulmonary edema)を引き起こします。水分摂取量は、前日の尿量+不感蒸泄量(約500mL)を目安に厳密に管理します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
① 腎機能を促進するために水分摂取を増やすよう促す:
混同注意! これは腎機能が正常な場合や、腎結石予防などでは有効なケアですが、
乏尿期のAKIでは禁忌に近い介入です。排泄機能が低下している腎臓にさらに負荷をかけ、体液過剰を悪化させます。
③ 尿量を増やすために利尿薬を投与する:利尿薬は、腎臓にある程度の機能が残っている場合に効果があります。乏尿期のように腎臓自体が機能不全に陥っている状態では効果がなく、かえって腎血流量を減少させて腎障害を悪化させる可能性があります。
④ 筋肉の消耗を防ぐために高タンパク食を提供する:タンパク質は代謝されると尿素窒素などの老廃物(窒素代謝産物)を産生します。腎臓がこれを排泄できないため、
高窒素血症 (Azotemia)を悪化させ、尿毒症症状を強くします。AKIの急性期は、
低タンパク食が原則です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
AKIの経過は、
乏尿期 → 利尿期 → 回復期に分けられます。看護介入は各期で大きく異なります。
-
利尿期:尿量が急増するが、腎臓の濃縮機能は未回復。この時期は、多量の尿とともに電解質(ナトリウム、カリウム)が失われるため、
脱水と電解質異常(低ナトリウム血症、低カリウム血症)のモニタリングと補正が優先されます。
-
回復期:腎機能が徐々に回復。長期化した場合は腎臓リハビリテーションや栄養管理が重要になります。
概念のまとめ
AKI乏尿期の看護目標:
生命を脅かす合併症(高カリウム血症、肺水腫)の予防。
最優先介入:
厳密な水分出納管理と電解質(特にカリウム)のモニタリング。
禁忌ケア:過剰な水分摂取、ルーチンの利尿薬投与、高タンパク食。
一目で比較!
| 病期 | 特徴 | 優先看護介入 | 注意すべき合併症 |
|---|
| 乏尿期 | 尿量減少 (<400mL/日) | 水分制限、電解質(K⁺)モニタリング | 高カリウム血症、体液過剰/肺水腫 |
| 利尿期 | 尿量増加 | 脱水予防、電解質(Na⁺, K⁺)補正 | 脱水、低ナトリウム血症、低カリウム血症 |
解剖生理と薬理のポイント
糸球体濾過量 (GFR)が急激に低下することがAKIの本態です。カリウムは主に腎臓から排泄されるため、GFR低下により血清カリウム値が上昇します。利尿薬は、作用部位によって異なりますが(ループ利尿薬、サイアザイド系など)、いずれも
ある程度機能しているネフロンに作用して効果を発揮します。乏尿期のようにネフロン全体が機能不全の状態では無効です。
暗記のコツとゴロ合わせ
「乏尿期は、入れない、出さない、監視する」
- 入れない:余分な水分、タンパク質、カリウムを摂取させない。
- 出さない:無理に利尿薬で尿を出させようとしない。
- 監視する:電解質(K⁺)と体液バランスを厳重にモニタリングする。
国試頻出ポイント
AKIの看護では、「病期による看護介入の違い」が非常に頻出です。特に
乏尿期と利尿期の優先ケアは正反対になることが多いため、混同しないように整理して覚えることが必須です。また、
高カリウム血症の心電図変化(テント状T波、PQ間隔延長、QRS幅拡大)も合わせて出題されます。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「乏尿期のケアは?」と問うだけでなく、「患者の尿量が1日300mLで血清カリウム値6.0 mEq/Lの場合、看護師が最初に行うべきことは?」といった、
臨床データを元に優先順位を判断させる問題が増えています。常に「生命の危機に直結するのは何か?」を考えましょう。