看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
救急外来に「右目の端の方にカーテンがかかったように見える」と訴えて来院した患者さん。眼科医の診察で上部の裂孔原性網膜剥離と診断され、入院・手術の準備が始まりました。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
アセスメント:症状(視野欠損の範囲、光視症・飛蚊症の変化)、不安の程度、既往歴(近視、白内障手術歴、外傷歴)を確認します。
2.
緊急ケア(最優先):医師の指示に基づき、
絶対安静と体位制限を開始します。剥離部位が上側の場合、ベッドの背もたれを45〜90度上げた
ファウラー位 (Fowler's position)とし、必要に応じて砂嚢などで頭部を固定します。眼球運動を最小限にするよう、読書やテレビは禁止し、ゆっくり話しかけて安心させます。
3.
手術前ケア:手術(強膜バックリング、硝子体手術など)についての説明を行い、同意書を得ます。術前の全身状態の評価(バイタルサイン、血液検査)をサポートします。
4.
患者教育・心理的サポート:突然の視力障害による不安は大きいです。今行っている安静と体位の重要性を繰り返し説明し、協力を得ます。もう一方の眼の症状にも注意するよう指導します。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
体位は「剥離部位を最も低くする」が原則です。例えば、剥離が鼻側なら横向きに、下側なら仰臥位にします。医師の指示を必ず確認してください。急な体位変換、力み(排便時のいきみ)、せき・くしゃみも避けるよう指導します。
概念のまとめ
裂孔原性網膜剥離:網膜に穴が開き、液化硝子体が入り込んで剥がれる。前駆症状は光視症・飛蚊症。緊急疾患。
最優先看護介入:手術前の絶対安静と、
剥離部位を重力から守る体位管理(剥離部位を低くする)。
治療:主に手術(強膜バックリング、硝子体切除術)。
一目で比較!
| 疾患 | 特徴的症状 | 緊急度と看護のポイント |
|---|
| 裂孔原性網膜剥離 | 光視症、飛蚊症、視野欠損(カーテン状) | 高。体位管理(剥離部位を低く)が最優先。手術が必要。 |
| 網膜中心動脈閉塞症 | 突発的、無痛性の高度視力低下(手動弁~光覚のみ) | 極めて高。時間との勝負(90分以内が目安)。眼圧下降、血管拡張が試みられる。 |
| 急性緑内障発作 | 激しい眼痛・頭痛、嘔吐、虹輪視、視力低下 | 高。眼圧下降が最優先(薬物:浸透圧利尿剤、炭酸脱水酵素阻害薬等)。 |
解剖生理と薬理のポイント
・網膜は眼球の内壁を覆う神経膜で、光を感知する。
・硝子体はゼリー状の物質で、加齢と共に液化し、網膜から剥離(後部硝子体剥離)することがある。これが網膜裂孔の原因になる。
・治療薬として、術後の感染予防の抗菌点眼薬、炎症抑制のステロイド点眼薬が使われる。
暗記のコツとゴロ合わせ
体位の原則:「
剥がれたところを下に」。剥離部位が「上」なら「頭を上げる(座位)」、「下」なら「仰向け」、「鼻側」なら「鼻側を下にした横向き」。
前駆症状:「
ピカピカ、フワフワ、見えなくなる」→ 光視症(ピカピカ)、飛蚊症(フワフワ)、視野欠損(見えなくなる)。
国試頻出ポイント
網膜剥離では、「前駆症状」「緊急度」「手術前の体位管理」の3点セットで出題されます。体位は「剥離部位を最も低くする」が鉄則です。症状の具体例(「カーテンがかかる」「蜘蛛の巣がはる」)もよく問われます。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「正しい看護はどれか」を問うだけでなく、「医師から『安静と体位制限』の指示が出された。適切な体位はどれか(剥離部位の記載あり)」というように、具体的な応用力が試される問題が増えています。病態生理を理解していれば対応できます。