看護学のコア解説
この問題は、
肥厚性幽門狭窄症 (Hypertrophic Pyloric Stenosis, HPS)の新生児に対する、入院直後の
優先度の高い看護介入 (Priority nursing intervention)を問うています。
重要概念の分析 (Key Concept)肥厚性幽門狭窄症は、胃の出口(幽門)の筋肉が異常に厚くなることで、胃の内容物が十二指腸へ通過できなくなる疾患です。典型的な症状は、生後2〜8週頃から始まる
噴水様嘔吐 (Projectile vomiting)です。嘔吐物には胆汁が混じらない(胃内容物のみ)のが特徴です。嘔吐を繰り返すことで、
代謝性アルカローシス (Metabolic alkalosis)、低カリウム血症、低クロール血症、脱水が急速に進行します。
正解の根拠 (Answer Rationale)ここがポイント! 肥厚性幽門狭窄症の治療は手術(幽門筋切開術)ですが、
手術の前に体液と電解質の異常を是正することが絶対的な優先事項です。嘔吐による胃酸(塩酸)の喪失は、
低クロール性代謝性アルカローシス (Hypochloremic metabolic alkalosis)を引き起こします。この状態で麻酔をかけると、重度の合併症リスクが高まります。したがって、入院直後の最優先看護介入は、
静脈路の確保 (Establishing IV access)と
電解質バランスのモニタリング (Monitoring electrolyte balance)です。これにより、脱水の補正と電解質異常(特に低カリウム、低クロール)の是正が行われ、安全な手術準備が整います。
誤答の分析 (Distractor Analysis)混同注意! ①「少量頻回の経口補水を開始する」は、
禁忌です。幽門が閉塞している状態では、経口摂取はすべて嘔吐してしまい、脱水と電解質異常を悪化させるだけです。経口摂取は手術後、医師の指示に従って開始します。
②「誤嚥防止のため腹臥位にする」は、一般的な嘔吐時の体位管理として考えられますが、
最優先事項ではありません。また、乳児突然死症候群 (SIDS) のリスクを考慮すると、腹臥位は推奨されない体位です。誤嚥予防には、
右側臥位 (Right lateral position)や頭部挙上が適切です。
③「直ちに外科的介入の準備をする」は、治療の最終目標ですが、
術前管理が不十分な状態での緊急手術は危険です。上記のように、体液・電解質の是正が先決です。
関連概念の整理 (Related Concepts)この疾患では、
オリーブ様腫瘤 (Olive-shaped mass)の触知や、超音波検査による診断が行われます。看護師は、嘔吐の性状・量・頻度、体重減少、皮膚ツルゴールの低下、大泉門の陥没、尿量減少などの脱水徴候を注意深くアセスメントする必要があります。
概念のまとめ
肥厚性幽門狭窄症の管理は「
First Correct, Then Operate」(まず是正、その後手術)が原則。嘔吐→胃酸喪失→代謝性アルカローシス→術前補正が必須。
一目で比較!
| 項目 | 肥厚性幽門狭窄症 (HPS) | 胃食道逆流症 (GER) |
|---|
| 嘔吐の特徴 | 噴水様、非胆汁性 | 溢乳、少量 |
| 発症時期 | 生後2-8週 | 新生児期から |
| 電解質異常 | 代謝性アルカローシス | 通常はなし |
| 治療 | 手術(術前補液必須) | 体位、濃厚ミルク、薬物 |
解剖生理と薬理のポイント
幽門部の筋層肥厚により内腔が狭くなる。嘔吐でH+(水素イオン)とCl-(塩化物イオン)を失うため、血液はアルカリ性に傾く(HCO3-増加)。補液には、生理食塩水(NaCl)やカリウム補充液が使用される。
暗記のコツとゴロ合わせ
「
幽門が厚い→吐く→アルカリになる→まず点滴」という流れで覚える。国試では「噴水嘔吐」「非胆汁性」「オリーブ様腫瘤」「代謝性アルカローシス」がキーワード。
国試頻出ポイント
小児看護の頻出疾患。常に「術前管理としての体液・電解質補正」が最優先と問われる。経口摂取が禁忌である点も合わせて出題されやすい。
国試出題パターンの変化に注意!
単純な症状の選択から、「入院直後の看護師の最初の行動は?」「手術前の準備として適切なのは?」といった優先順位判断や看護過程に基づいた問題へ変化している。